「二千年の恋」のレビューをもう1本。
中山美穂への評価が前の1本とは反対です。
もっとも前のものも、女優としての中山美穂を否定するものではありませんでしたが。
君でなくちゃいけないんだ
このドラマのストーリーや論理に疑問を呈する人は少なくない。
だが、もっぱら愛を讃えるためのドラマにとって、そういったことは重要ではない。
特に特殊な状況下における悲劇的愛にあっては。
設定が十分悲惨であり、音楽が十分美しく、
主役が十分悲しくさえあれば、涙を誘う、それでいいのだ。
いつのまにかラスト近くになっていたとき、
最終回を見続けるのをぐずぐずとためらっていた。
悲しみに満ちた物語に浸ってしまい、自虐的な気持ちが高まって、
もう少しそこにとどまり味わっていたかったのかもしれない。
こういう物語は、およそ自分の生涯に起こるはずもないからだ。
現実の生活は平凡で、ドラマチックになりそうなことがあっても、
みな芽の内に摘み取られてしまうものだから。
それに、愛のために全てを投げ打つというドラマは、
どんどん少なくなっている、ないしは変質してきている。
現実生活では生きているという実感が得られなくても、
ドラマの中で命のリズムを感じとれれば、
現実生活に対する強い思いをもう一度生まれさせることができるのだ。
残念ながらドラマはいつかは必ず終わり、
平凡な生活は続いていかねばならない。
今の日本ドラマにこの種の物語は少なくなる一方だ。
友達は、今の日本人は悲劇を見たがらなくなった、
口当たりの良いものを好み、日常生活のこまごました話を好むのだと言う……
だとしたら、生きることの強い思いは、どこに求めたらいいのだ……。
なぜろうそくは命が尽きようとしているのを知りながら、
なお身を焦がして最高の輝きを放つのか?
もしかしたら、その最も美しい一瞬のためだけに生きているのかもしれない。
このような考え方も、今の人間の思考とはどんどん合わなくなってきている。
結果第一の今日、物事の過程がどうであるかは、関心を払われなくなってしまった。
ことの曲折がどうであるかは忘れられ、
最も美しいあの一瞬も、時の経過とともに他のものにとってかわられる。
理得とユーリが最後にめでたく一緒になってほしかったなと、本当はすごく思う。
2人が運命に追い立てられ、辛い異なる道を歩み続けてきて、
最後には一縷の希望さえついえてしまう様を最初からずっと見てくると、
たとえ傍観者であっても、心残りはあってほしくないのだ。
しかし、結末がどうであろうと、私は長いこと考え続けてきた。
記憶もあいまいになってしまっているかもしれない。
それでも、これだけは決して忘れないと堅く信じている――
世紀末の夜のエレベーターでの出会い、
2人で教会のろうそくを眺めていたときの、遠くを見るような目、
他の何を捨てても決して手放さなかった、あの温かな黒い手袋、
ほんのわずかなひとときではあったが手をつないで逃げた夜、
家族を失った苦しみのときのあの温かい抱擁、
そして最後の、望遠鏡の中のつらい対面。
孤独は恥ずかしいことだと言う人がいる。
だが、孤独な理得は美しく、孤独なユーリは神秘的だった。
もしこの孤独のゆえでなければ、
あの深い感銘を与える愛はどこから生まれたというのか。
最近、中山美穂のファンになった。
初めて彼女を知ったのは「ラブレター」で、
自然な演技と、おおらかな藤井樹にひかれ、
藤井樹は、もしかしたら彼女本人の性格そのものなのではないかと思った。
最近作の「サヨナラ、イツカ」の大胆でなまめかしい演技に、
彼女のまた別の一面を知った。
こんなに魅惑的にもなれるのだ。
もう不惑に達しているが、顔のしわをわざとらしく隠そうとは決してしていない。
とはいえ、実は一番好きなのは、
やはり「眠れる森」と「二千年の恋」のころの感じである。
青春から抜け出し成熟へと向かう境目にあって、
役は謎や乱世に翻弄される女性であっても、
強い意志と強い目を失わない。
中山美穂はこの頃の演技が一番熟練していたのではないか。
外見は何があっても取り乱さないが、いつも激しい思いと熱い心をひめ、
ゆっくりと蓄積されたものが、最後の一瞬に至って完璧な爆発を見る。
典型的東洋美人の顔をした中山美穂は、
疑いなく、日本で最もすぐれた女優の1人である。
初期の作品「ママはアイドル」と、
最近のフランスの生活に密着取材した番組をたまたま同時期に見たのだが、
歳月の流れに感嘆せざるを得なかった。
初めの清純と青さ、その後の成熟、
さらに現在の女らしさと透けて見えるセクシーさ。
テレビドラマであの純真な美穂にもう会えないのは悲しいことかもしれない。
しかしそれでも彼女の幸せなパリでの生活を黙って祝福しよう。
名誉や利益を争う場所から遠く離れた彼女が、
次の作品を世に問うてくれるのはいつのことだろうか。
だが、あの「世界中の誰よりきっと」を歌っていた愛に揺るぎない女性は
深く脳裏に刻みつけられているのだ。
(ブログ「青い龍」 2011.5.18)
「二千年の恋」のレビューを読むと、
リアルタイムでドラマを見ていたときの私(たち)自身を思い出してしまいます。
というのも、当時、ユーリと理得という架空の人物を、
本当にいた存在のようにみんな全身で共感したり悲しんだりしていたので。
それとすごく似た感じがするのです。

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