トリノ五輪開催国イタリア。女子は世界選手権で獲得したポイントにより自力で出場、男子は開催国枠で出場したが、最終順位はそれぞれ10位、7位で予選敗退。強豪ひしめく欧州にあって必ずしもこの競技が盛んな国ではないようだ。だが、五輪開催に伴う施設整備などは今後の同国の競技力向上に大きなプラス要素となるに違いない。日本と五輪出場を激しく争うライバルになることも十分に予想される。そこで今回は、イタリアのカーリングに関する情報を、日本戦に限らず探ってみた。
まず見つけたのが、
高級紙La Stampaの記事。現地メディアの脚光を真正面から浴びた種目以外で、特に記憶に残った種目や選手に言及したものである。取上げられているのは、お騒がせ男Miller、ご存知荒川静香、15歳の選手を擁しメダル獲得を果たしたイタリア女子ショートトラックチーム、そして同国カーリングだ。
同紙のスポーツ報道といえば、中田(英)のペルージャ時代にサッカー欄をよく覗いていたのだが、文化欄と見まがうかのようなレベルの高さに当惑することも少なくなかった。今回の記事も、衒学的な比喩や翻訳不能な言葉遊びが随所に見られ、なかなか手ごわいが、なんとか食らいつく。
「新たな発見となったのがカーリングだ。2週間にわたってお茶の間に入り込み、そこを占拠してしまった。何にもなかったのに、思いもかけぬことが生じ、にわかファン、そしてカーリング通までがうじゃうじゃ登場してきたのである。このブームを引き起こした背景にあるのが、耳ざわりの滑らかな、それでいて専門的で謎めいた独特の用語。
掃いてるのである、じっさいカーリングでは。掃く、それで十分だ。かぎ括弧でくくるようなことはするな、何かにたとえたりするな。少なくとも、こう言っておきたい。掃除用語なのだ。」
日本でも今回、解説の小林氏が「ダブルテークアウト」や、「カムアラウンド」、あるいは「ヒットアンドロール」といったカーリング用語を連発。はじめは面食らったのだが、何回か見ているうちに「ヒットアンドロールっていうのはうんぬん」と、家人へ説明している自分に気づいた。こういう言わば「符牒」を覚えることで、この競技により深く取り込まれていったようにも思う。
だが、「伝道師」小林氏の発するありがたい「御言葉」の数々も、訳してみれば、なんてことはない。その筆頭がスウィーピングだ。そのものずばりじゃないか。この記事から判断するに、イタリアでも日本同様、英語の術語がそのまま用いられた模様だが、他の国ではどうされているのだろう。カナダの仏語ニュース映像では、スウィーパーが仏語に置き換えられていたことには気がついたのだが。
「『ローリング・ストーンズ』、すなわち転がりゆく石の北欧叙事詩が、サッカーの民の好奇心をそそったのである。つまるところ、ちょっと風変わりで、ちょっとおしゃれなボッチャといったところか。しーんとしていて威厳がある。漂ってくるのは、スコットランドのモルトの香りに越冬小屋の匂いだ。
イタリアの『スキップ』ジョエル・テリー・レトルナスは、好んで『ウォール・ストリート・ジャーナル』を読む。22歳の彼は、小さくてファンキーな眼鏡をかけ、父から引き継いだ調教場の馬の面倒を見ているのだ。バンクーバーでまたお目にかかろう。もっとも他のチームが、彼の縄張りを奪わなければの話だが。」
イタリアのスポーツといえば何と言ってもサッカー。特に、同国ではいまだカーリングの認知度が低く、一般の眼に触れるのは今回がはじめてだったことから、男子カーリング選手に対しては「なぜカーリングなんかを?」との疑問が寄せられるという。それに対してレトルナスは、
La Repubblica紙のインタビュー記事でこう答えている。
「自分が育ったところの文化だったんです。僕はスイス生まれで、スイスではカーリングがすごく人気があります」。
その後、5歳のとき、トレント近郊の
チェンブラへ移住したレトルナスだったが、父に連れられ、小さな湖でプレーをするようになったという。そして、他の男の子と同様、サッカーもやっていたが、やはりカーリングが面白く続けることになったと語っている。
レトルナスはまたイタリアでの競技環境の厳しさについても触れる。
「大変でした。チェンブラでは80年代まで、湖の上で試合を行ってました。でも安全面の問題があったのでそれができなくなりました。そのため、7年前までは、イタリア国内では主に、ホッケー用のリンクでプレーをしたのですが、これにも大きな問題がありました。というのも、ストーンを滑らせるためには非常に特別な氷が必要だからです」。
日本カーリング発祥の地ともいえる旧常呂町でも、夜中に屋外へ水を撒き、レーンを整備したという。どこの国でも並々ならぬ苦労だあったようだ。だがイタリアにも今回、ピネローロに立派な施設が誕生した。今後は、この施設が同国のカーリング強化の一大拠点になっていくのだろう。
最後に、イタリアに関することではないのだが、この記事の中の気になる発言に触れておこう。イタリアではカーリングでは生活できないのではないかとの問いに対する答えである。
「できません。僕たちにとっては趣味です。カナダやアメリカとは違います」。
ということは、カナダやアメリカにはプロ選手が存在するということなのだろうか。今月カナダで開催される女子世界選手権にも、冠スポンサーがついていることから、それなりの商業的な成功を収めてはいると想像していたのだが、プロとは初耳だ。北米のカーリング事情に関しては情報量が膨大なため、これまであまり手をつけてこなかっただけに、ますます興味が深まる。