女子日本選手権の予選リーグが終了した。チーム青森、チーム長野、チーム常呂中が6勝2敗で並び、チームカシオペア、チーム御代田が5勝2敗でそれに続くという大混戦である。なかでも、チーム常呂中が日本代表のチーム青森を破るという大番狂わせは特筆に価しよう。以下、このようなジャイアント・キリングが生じた背景について、素人考えを少々述べたいと思う。
まず挙げられるのが、チーム青森のコンディションの悪さ。既に触れたように、イタリアからの帰国後、氷上練習は1回のみという状態で臨んだ今大会。トリノと同様のパフォーマンスを見せることが出来たとは想像しがたい。じっさい、チーム青森は前半、一時は0-6と一方的なリードを奪われたのだが、これはかなり異例のことだろう。今回五輪での大きなビハインドを見渡してみても、ノルウェー戦の第5エンドに0-5とされた例、スイスから第8エンドに4失点を喫し5-11とされた例しかないことを考えるならばなおのことだ。とはいえ、続く対チームカシオペア戦、そして最大のライバルであるチーム長野戦では2連勝。王者の貫禄を見せつけたところはさすが。
次に、大金星を挙げたチーム常呂中には、相当の力があるという点を指摘しておかねばなるまい。青森、長野の両チームと同じ勝ち星数で予選リーグを1位通過。しかも星を落としたのは、いずれも予選リーグで上位につけた長野、御代田のみ。単なるフロックとすることはできないだろう。
10日付け朝日新聞記事によると、同チームは小学校2年生のときに結成されたという。早期教育の成果の一例といえるのかもしれない。他の種目にくらべ、フィジカル面の重要性が比較的小さなカーリングだからこそ実現した快挙ともいえるが、後半、猛追を受けたにもかかわらず、崩れることなく逃げ切った精神面のタフネスには驚くばかりだ。
さらに、日本では競技種目としてのカーリングがまだ十分に成熟していないという点も忘れてはならない。歴史が浅く競技者数の限られた競技では、若年層の選手が大人を押しのけて活躍するような事例がときに見られる。例えばサッカーにおいても、女子では、15歳で日本代表デビューを果たし現在も活躍中の沢を筆頭に、
高校在学中にフル代表に選出された選手が少なくない。両種目とも発展途上にあるということなのだが、それはまた、今後の伸びしろがまだまだ大きいということでもある。楽しみだ。
最後に、カーリングという種目が、番狂わせのおきやすい競技であるともいえるのではないかとも思う。トリノでは競技人口30万人を誇るカーリング大国カナダに日本が勝ってしまったのもしかり。今大会では無敵と思われたチーム長野が予選敗退の決まったチーム北大に敗れたのもしかり。
さて、番狂わせの起きやすい他種目というとまずサッカー。大半の試合が1点差ゲームとなるこの種目では、アトランタ五輪で日本がブラジルに勝ったように、とてつもない波乱がときに生じ、それがまた観る者を惹きつける。その一方で、胸のすくようなシュートシーンが見せ場であるのにもかかわらず、スコアレスドローが多発するなど、1試合平均の得点数の低さは、サッカー界の悩みの種でもある。じっさい、1993年に日本で開催されたワールドユース大会でFIFAは、スローインのかわりにキックインを試験的に採用し、得点数アップの方策を探った過去がある。
それに対し得点数の多い種目の筆頭がバスケット。男子の試合では100点ゲームも珍しくなく、両チームあわせて100回以上の得点シーンが見られるのは観客の眼を常にコートに惹きつける大きな魅力となっている。だが、得点が入りやすいということまた、対戦するチーム間の力の差がストレートに得点に反映されてしまうということにもつながる。そのため、チーム間の戦力均衡を相当慎重に図らない限り、リーグ1巡目にして既に、多くの試合で勝敗が簡単に予想できてしまうという弱点ともなる。
翻って、カーリング日本選手権の予選結果を見ると、1試合あたりの2チーム合計得点数は10点台が大半で、2点以上のプレーがだいたい4回前後と、得点シーンが極端に少ないということはない。にもかかわらず、上述のような番狂わせも生じている。シュートによってもたらされるサッカーやバスケットでの得点と、カーリングでの得点を同列に論じていいものなのかどうかは分からない。だが、スコアボードが適度に動き、なおかつ波乱がしばしば見られるカーリングという種目は、現在こそ非常にマイナーな競技であるとはいえ、観るスポーツとしての潜在的可能性は決して低くないのではないか、というのが筆者の希望的観測である。
何はともあれ、トリノ後には現在のブームもすぐにしぼんでしまうのではないかと懸念された日本カーリング界にとり、常呂中の活躍ぶりによって新たな話題を提供できたのは、決して悪いことではなかったのではないか。今後の同チームの活躍を祈念するとともに、青森、長野がどのようなかたちでその意地とプライドをぶつけてくるのか、熱く見守っていきたい。