今日午後、
日本選手権決勝が終了した。チーム青森が初戦でつまずき、さらにチーム常呂中に足元をすくわれたかと思えば、一方のチーム長野も終盤に連敗したうえ、タイブレークではこちらも常呂中に破れるなど、にわかファンには想像もつかないような展開で推移した今大会。だが、最終的に決勝に勝ち残ったのは、五輪代表と世界選手権代表というふたつのナショナルチームだった。
観る者を驚かす番狂わせが生じながらも、結局は力のあるチームが勝ち残ってくるというあたり、なかなかよく出来ていると思わず感心してしまう。試合数が増えるのにもかかわらず、総当り戦で予選を行った上、敗者復活のチャンスも設けたページシステムによる決勝トーナメントを実施するという大会システムのなせるわざなのだろうか。
とはいえ、長野チームが予選リーグ最終戦から二つのタイブレーク、そして準決勝と、一日に4試合をこなす結果となったことには驚きを禁じえない。たしかに、サッカーやバスケット等に比べるとカーリングは、決して運動量が多いとはいえないだろう。だが、10時間ちかくにわたり、投擲やスウィーピングといった動作をこなしつつ、1投ごとに変化する状況に則して戦略を練り続けるというのは、肉体的にも精神的にも損像を絶するハードなものだったと思われる。テレビ報道によると、手のマメがつぶれてしまった選手がいたというが、それももっともな話だろう。
肝心の勝敗だが、後半までもつれる展開となったものの、第9エンドに3点を挙げたチーム青森がライバルを突き放して一気に決着をつけ、日本王者の栄冠を掴む。昨年度の日本選手権でチーム長野に敗れた雪辱をはたすとともに、来年度、地元青森で開催される世界選手権出場権獲得に大きく近づいたわけだ。
五輪以降、十分に息をつく暇もない状態で臨んだ今大会で、メディアの注目を一身に浴びつつも、きっちりと結果を残したチーム青森には、最大限の賛辞を送りたい。一方のチーム長野も、予選最終日4連敗と調子を崩したにもかかわらず、決勝まで這い上がり、日本一決定戦にふさわしい見ごたえのあるゲームを演じて見せた点は、高く評価されよう。今回、極めて過酷な日程を乗り切った経験は、開幕がちかづく世界選手権でも必ず、生きてくるに違いあるまい。
さて、今週末、筆者が試合の様子を逐次追いかけることができたのは、2cHKによるライブカメラ中継のおかげであった。実際の選手やストーンを映すことなく、ボード上に赤や黄のマグネットを1投ずつ置きながら、それぞれの投擲の種類を解説したカードを映すという形式のものである。テレビの囲碁や将棋番組と非常に近いといってよい。
選手の動作が全く映らないため、カーリングの中の身体スポーツの部分は捨象されてしまうのだが、それでも、知的遊戯の部分で十二分に楽しむことができた。このような素晴らしい放送を実現して下さった現地スタッフの方々には心から御礼申し上げたい。
2005年の女子世界選手権では、専用プログラムによるリアルタイム中継が実施された模様だが、2006年の大会では、現時点で公式大会HPを見る限り、期待できそうにない。2007年の青森大会ては、何らかのかたちでの実況中継の実施を大会関係者の皆さまにぜひともお願い申し上げたい。
今大会は、チーム青森が国民的なアイドルとなったことから、全国ネットのテレビや大新聞も異例の扱いで大きく取上げた。だが、その一方で、全試合の結果を速報するなど非常に貴重なサービスを提供してくれたのが、地元紙の
東奥日報だ。最大公約数的な内容にならざるを得ず、日々の話題の表面を一通り撫でるだけで終わってしまうことの多い中央のメディアとは一線を画し、地域ニュースに重点を置くことを明確に打ち出したローカルメディアならではの役割の大きさを改めて認識させてくれるいい機会ともなったように思う。来年の世界大会でも、同紙には質量ともに充実した報道を期待せずにはいられない。
地方メディアといえば、チームカシオペアに焦点を当てた
岩手日報や
岩手放送、チーム岡山を大きく取上げた
山陽新聞、そしてチーム青森のみならず、地元の3チームにもスポットライトをあてた
北海道新聞。これら各メディアの報道姿勢も非常に頼もしい。
チーム青森がトリノで人気を博したからといって、五輪組のみを追いかけるのではなく、自らの地元チームを主役に据えた記事を配信するという態度。こういうメディアがあってはじめて、地域のスポーツや文化の活性化が可能になるのだと思う。Jリーグが掲げる地域密着型スポーツが日本に定着できるか否かも、このような真の意味でのローカルメディアの存在の有無が握っているのではあるまいか。
その点で、少々残念だったのが、長野のローカル紙。今大会にはチーム長野を筆頭に、長野県勢が3チームも参加しているのにもかかわらず、
信濃毎日新聞、
長野日報のいずれにも、地元チームの動静を伝える記事が掲載されていないようなのだ。今回、信州から青森へ遠征した選手らは、まぎれもなく長野五輪の申し子といえるはずである。多額の国費を費やして開催される五輪。それがいったい何であったのか。単なる無駄使いだったのか。
このような問いに対する分かりやすい答えのひとつが、今大会に出場した長野3チームの活躍ぶりであろう。地元メディアには、それを伝える使命があるのではないだろうか。両紙には、来る世界選手権でのチーム長野の戦いぶりを、たとえ数行であろうとも、地元の視点で報じてくれるよう願ってやまない。