決勝戦で惜しくもスウェーデンに敗れ銀メダルに終わった国、そして日
本の準決勝進出の夢を打ち砕いた国。スイスである。今回は、このアルプスの山国のカーリングについて少々調べてみようと思う。
まず、決勝戦の記事を探したところ、同国の仏語紙Le Matinに掲載されていた
マリヤム・オットに関する記事を発見。「彼女たちにはかける言葉もない・・・。」と題されたものだ。
試合は延長第11エンド、スウェーデンのスキップの神がかり的なダブルテークアウトにより、スウェーデンが栄冠を掴んだのだが、この一投の瞬間、心へ浮かんだことについてオットは、悔しさに目を潤ませながらこう語ったという。
「彼女が最後のストーンを投げる前、失敗してくれないかなって思っちゃいました。これは、カーリングのフェア・プレー精神には反することなんですけど。でも、まぁ、アネッテ(スウェーデンのスキップ)に分からなかったはずだし。」
そりゃそうである。相手がしくじれば自分が金メダルとなるのだから、そう思うなという方が無理な話だろう。カーリング選手といえども人間なのだから。
この記事はさらに、オットがこの対決を「自らのキャリアで最高の試合だった」としながらも、浮かぬ表情をぬぐいきれない理由を伝える。そう、彼女はいわゆる銀メダルホルダーなのだという。しかも、2002年のソルトレーク五輪決勝でイギリスに敗れた後、2004、2005の欧州選手権決勝、そして今回のトリノ五輪決勝と、3回連続して破れた相手がスウェーデンだというから、悔しさもひとしおだろう。
とはいいながら記事は、「ソルトレークとピネローロで味わうことの出来た思いは、何ものにも変えがたいです。」との言葉をひきながら、オットが二つの銀メダルと引き換えに金メダルをひとつ受け取りたいとは思わないだろうと指摘。
そのあと、彼女を知る人物の話としてオットが普段、感情のコントロールが非常に巧みなことを伝えつつ、オットが試合で流した涙について、優しい眼差しに満ちた素敵な文が綴られる。そして結びの言葉。「カーリングには間違いなく人を虜にする力が潜んでいる。トリノ五輪がこのことを私たちに教えてくれたのだとすればそれは、オットのおかげだろう」。
本当にいい記事だ。これを書いた記者のR・J氏もおそらく、多くの日本人と同様、カーリングという競技、そしてそこに登場する選手たちが垣間見せる人間性に魅せられてしまった者の一人なんだろう。最後の一文はそのまま、日本代表チームにもそっくり当てはまるではないか。
さて、同紙HP内で日本戦についての記事がないか探してみたのだが、残念ながら見つからなかった。代わりに、上述の記事から興味深いコメントを引いておこう。長野五輪金メダリストのパトリック・レトシャー氏の指摘である。
「スウェーデンチームは非常に強いです。男子のスイス選手権に出場しても3位にきっと入ると思います。」
専門家をしてこう語らしめたスウェーデン。
カナダに勝利し、
スウェーデンとは延長戦までもつれこんだあの土曜日。日本女子カーリングは、これまで近寄り難かった高みにまで上り詰めたといえるのではないか。そこで見えたもの。今後の日本にとってこれ以上の宝はないはずだ。
つづいて覗いてみたのが
スイスカーリング協会のサイト。同国内の競技運営に関する情報が詳しく載っていた。スイスのカーリング活動の中心となるのが、SCL。すなわちスイス・カーリング・リーグらしい。男子はなんと5部リーグまである。
1部には16チームが所属し、11月から1月にかけて3日間の大会を3回行うことで、総当りのリーグ戦(各チーム15試合)をこなしたうえ、3月に8日間にわたって上位8チームで再び総当りの2次リーグ戦、さらに上位4チームで準決勝、決勝を戦うとある。かなりハードな日程だ。
いっぽうの女子は、チーム数がかなり少なく、12チームから構成される
1部リーグのみ。それ以外の日程や試合数等は男子と同様である。
さて、所属チーム名を眺めていて目にとまったチームがあった。チューリッヒ・グラスホッパーである。男女ともに1部リーグに所属、しかもいずれも2次リーグ進出を決めている強豪のようだ。だが、この名前、サッカーファンには聞き覚えがあるはずだ。そう、UEFAカップにも出場する
スイスの強豪チームである。
これはもしかしたら、Jリーグが理想として掲げるヨーロッパ型総合スポーツクラブなのかもしれないと思い、
独語版Wikipediaの該当項目を見るとやはりそうだ。1886年設立の同クラブには、サッカーのほか、ハンドボール、ボート、アイスホッケー、グランド・ホッケー、ユニホッケー(5-5で行う室内ホッケー)、テニス、スカッシュと並んでカーリング部門もあると説明されている。
費用の問題など、実際の運営の実態については不明だが、サッカーをはじめとする他種目のファンであっても、自分のひいきチームの名前を冠したカーリングチームがあれば自然と関心も向きやすいに違いない。そしてそれは、カーリング選手にとっても、物心ともに大きな支えとなっていることが想像される。
日本にも、このような体制が整う日が一日でも早くやってくるよう願わずにはいられない。実現した暁には、例えば、コンサドーレ札幌の名を冠したカーリングチームが、チューリッヒ・グラスホッパーと国際試合をやることだって夢ではない、と妄想は留まることなく膨らんでしまうのだが。