17時19分発府中本町行きに駆け込む。南浦和の乗り換え、軽快に階段を蹴りあげる。これで東久留米で18時から始まるバイトに間に合うという訳だ。
秋津の乗り換え道は面白い。俺が酒呑みで焼き鳥が好きな労働者階級の凡人だったなら確実にはまっていただろう。安くてガヤガヤした立ち飲みが面白い人はぜひ秋津に行ってみな。俺はそれよりも通り向かいの八百屋の方が気になるが、それよりそれより近頃はスピードウォークピッチ歩法の研究に忙しい。
スピードをあげて歩こうとする時つい大股に歩いてしまいがちだ。俺は今までにそれで長い足を無駄に使ってきた。大股で歩いてスピードを出すためにはそれなりの筋力が必要だし、何より上半身の補助が必要となる。肩からデカいカバンを掛けてる俺にはこの歩法は合わない。そこで思いついたのが日本人に適したピッチ歩法というわけだ。足を前に出す意識よりも早く動かす事を考えるのである。そして気持ちの上だけだが、膝を上に持ち上げようとするのだ。
ヒントは九州出身のK君だった。彼は東京に来た当時都会人の歩くスピードの早さに驚いたらしい。負けず嫌いな彼は研究と鍛錬の末今では誰よりも早く歩けるようになったと自負している。彼の身のこなしは本当にスマートで無駄がない。
早く歩けるのはそれだけでかなりの得がある。早く歩いた分ゆっくり出来る。早く歩いた分時給がつく。早く歩いた分筋力がつく。早く歩いた分雑念が消える。早く歩いた分…あ、やっぱり18時には間に合わなかった。。。