2012/12/13

6 不思議なオランダの涙  オランダの涙

世の中には、耳学問だけではわからないことがあるものです。

ネット上の情報だけにたよるのではなく、自分の頭で考え、実地に試してみることがだいじです。

クリックすると元のサイズで表示します

このオランダの涙の尻尾を、先っちょからすこしずつ折っていくと、


クリックすると元のサイズで表示します

まだ涙の本体部分はだいじょうぶですが、折る部分を本体に近づけていくと、


クリックすると元のサイズで表示します

とつぜん、「パシッ」と砕け散りました。


クリックすると元のサイズで表示します

こんどは、こちらのオランダの涙の尻尾を折ってみましょう。


クリックすると元のサイズで表示します

ペンチで折れるところまで尻尾を折っても、このオランダの涙は「爆発」しません。もちろん、ハンマーでたたいても割れません。

これはいったいなぜでしょう?


クリックすると元のサイズで表示します

これは、尻尾を折ると爆発的に砕け散る、典型的なオランダの涙の写真です。

全体として流線型で、尻尾の部分が細くなって1〜2ミリメートルになるあたりまで、本体部分と一体となって硬いガラスの殻のようになっています。

しかし、引張応力の弱い尻尾の部分を折られると、要石を取り除かれたアーチ橋や、たがをはずされた樽がくずれるように、強力な残留応力によって一挙に破壊が進行します。

尻尾を折っても砕けないオランダの涙は、球形に近い涙滴型をしていて、尻尾も急に1ミリメートル以下の、針のように細くなっています。つまり、涙滴型の部分が圧縮応力に包まれた強化ガラスになっていて、尻尾の部分は普通のガラスになっているものと考えられます。


クリックすると元のサイズで表示します

これは、水中でオランダの涙になる直前に、本体部分がばらばらに割れて、残った尻尾の部分です。尻尾の部分は、強化ガラスになっています(冷えるときにできた、真空の泡が見えます)。


クリックすると元のサイズで表示します

尻尾の部分が単独でも、折ると「爆発」します。


クリックすると元のサイズで表示します

「爆発」しないオランダの涙の尻尾は、折っても破壊が進行しません。細いので、強化ガラスにはならないのです。


クリックすると元のサイズで表示します

ところで、これは、オランダの涙とは作り方がちがう、普通のガラスの涙です。


クリックすると元のサイズで表示します

空気中(室温)で涙滴型にゆっくりと冷却したもので、歪がありません。


クリックすると元のサイズで表示します

強化ガラスではありませんが、ハンマーでたたいても割れません。


クリックすると元のサイズで表示します

もちろん、強力な残留応力もないので、尻尾を折っても「爆発」したりしません。


クリックすると元のサイズで表示します

ビー玉のような、完全な球体に近いものが、ほんとうはいちばん強いのかもしれません……。

0

2012/12/11

5 本当は恐ろしいオランダの涙  オランダの涙

【オランダの涙たちの会話】

「涙の数だけ強くなれるよ〜」

「なんやそれ、岡本真夜の歌かいな」

クリックすると元のサイズで表示します

「ところで、なんでオランダの涙は、どいつもこいつも尻尾がまがってるねん?」

「そんなことあれへん。みんながみんなそうやない。下の写真のオランダの涙のように、尻尾がまっすぐなやつもおる。作る人間の根性がひねくれてたら、わしらの尻尾もまがってくるんや」

クリックすると元のサイズで表示します

「そうやなぁ。どのみちわしらは、バーナーで火あぶりにされて、冷たい水に放りこまれたあげく、ペンチで尻尾折られて、ばらばらにされる運命やからなぁ」

クリックすると元のサイズで表示します

「火責め、水責めに、ハンマーで頭たたかれるわ…。実験して確かめたら、ハイ、それまでよ。なんでも使い捨ての時代や。心こめて物を作る人間なんて、おらへんわなぁ」

クリックすると元のサイズで表示します

「ちょっと、人間たちに思い知らせてやろうよ」

「そうやな。黒曜石がナイフとして使われていたように、わしらガラスは、割れたらよく切れる。切れるから、気ぃつけんとけがするぞ〜」

クリックすると元のサイズで表示します

「せやけど、わしらのような強化ガラスの仲間は、割れても粒々の破片になるから、安全なんとちがうん?」

「時と場合によるがな。昔の自動車のフロントガラスは強化ガラスを使うてたこともあったけど、事故のときに粉々になると、運転手が車外になげだされたり、粒々の破片が目にあたってけがしたり…。交通戦争ていうてた時代があったけど、事故現場では、道路のあちこちに粒々になったフロントガラスの破片が落ちてたもんや。せやから、今の自動車のフロントガラスは、プラスチックをサンドイッチした、合わせガラスになってるんや」

「それに、強化ガラスゆうても、破片が粒々にならへんガラスもある」

クリックすると元のサイズで表示します

「こいつも、強化ガラスの仲間やけど、普通のガラスと同じ割れ方しとるやろ?」

「なんで?」

「こいつは、熱して冷やす全面強化ガラスとちがって、ガラスの表面だけを化学的に処理して、ナトリウムよりも分子の大きいカリウムにイオン交換してあるんや。せやから、分子がおしくら饅頭して、圧縮応力がつくられるんや」

「強化耐熱ガラス食器なんか、割れにくくて丈夫やけど、それでも不注意で床に落としたときには、当たり所が悪いと、バーン! ものすごい音がして、するどい破片が四方八方に飛び散る」

「下の写真を見てみ。尻尾を折られて爆発させられた、わしらの残骸や」

クリックすると元のサイズで表示します

「あれっ! 鋭角になってる破片もある!」

「そうや、そこや。みんな人間たちはオランダの涙は強化ガラスの一種で、破片は鈍角の粒々になると思い込んでおる。そこが付け目や。思い知らせてやろう」

クリックすると元のサイズで表示します

「せやけど、いきなり人間あいてに実行するのは残酷やから、シリコンゴムで実演して、警告しておきましょう」

「そうやな。わしも血を見るのは、きもちが悪い」

「尻尾も、ガラスの針みたいで、刺さったら痛いでぇ〜」

会話終わり

そういうわけで、注意喚起です。何事も安全第一です。

オランダの涙を作るときや、尻尾を折るときは、自分だけでなく、近くにいる人もかならず保護メガネを着用するようにしましょう。

低温の海では鋼鉄製の船が一瞬のうちに脆性破壊して沈没することがあるように、ガラスも、高速で破壊が進行します。水中では、その衝撃でガラス製のビーカーが割れることもあります。飛散防止をほどこすか、ステンレス製やプラスチック製の容器で試すようにしましょう。

ポリ袋に入れてオランダの涙の尻尾を折る場合、厚手の袋を使います。切り裂き耐性のないポリ袋の場合、なんどもオランダの涙を砕け散らせると、破片がサンドブラスターのように作用して、ポリ袋を突き破って噴出してくることがあります。

試したあとは、かならず掃除して、飛散したガラス片で他の人が怪我をしないようにしましょう。掃除が終わって、作業の終わりです。

なお、保護メガネでない、ガラス製のレンズのメガネの場合は、メガネの上から装着できるゴーグルタイプの保護メガネもあります。

保護メガネでないメガネの場合、飛来物でメガネのレンズが割れて、その破片で目を損傷することがあります(注)。

クリックすると元のサイズで表示します


注:わたしは若いころ、労災ですが、作業中に飛来物が遮光メガネを突き破って、右目に刺さったことがありました。目は血だらけになりましたが、会社の診療所ですぐに目の傷を縫合してもらいました。その後、救急車で総合病院に運ばれ、目の中に粉々になって入った無数のガラスの破片を1つ1つ慎重に取り除いてもらいました。おかげで1ヶ月の眼帯生活だけですんで、失明は免れました。
2

2012/12/10

オランダの涙 4 ガラス屑  オランダの涙

クリックすると元のサイズで表示します

オランダの涙になり損ねた、色ガラスのコラージュ。

これらの軟質の色ガラスは、低温で溶ける半面、膨張係数が硬質ガラスの数倍あり、その多くが水中で急速に固まるさいに、熱衝撃に耐え切れずに、ギシギシ、バーン、という爆発音を発して、ばらばらのガラス屑になってしまいます。


クリックすると元のサイズで表示します

オランダの涙になり損ねた、ガラスの尻尾部分です。尻尾の、だいたいおなじ位置で破壊が止まり、尻尾はばらばらにならずに生き残るようです。


クリックすると元のサイズで表示します

数少ない、色ガラスのオランダの涙です。

粘りの強い硬質ガラスの場合は、ヨブの涙(イネ科のジュズダマ、ハトムギのこと)のような形になりますが、軟質ガラスの場合は、ほうき星のような流線型の涙になるようです。

写真の色ガラスのほうではよくわかりませんが、透明なガラスのほうでは、表面が縮んでしわになっているのがよくわかります。

また、尻尾の付け根あたりにくびれがありますが、この部分に応力が集中して、亀裂が一挙に進行し、破壊へとすすむようです。



0

2012/12/10

オランダの涙 3  オランダの涙

クリックすると元のサイズで表示します
オランダの涙が爆発的に砕け散る瞬間

尻尾の部分を折られたオランダの涙が、粉々になって、爆発的に砕け散る瞬間です。

わたしは、高速度撮影できるような高価なカメラや、超スロー再生できるビデオ機材など持っていませんが、ここは逆転の発想です。

ない知恵をしぼって、飛散するガラスの破片のほうを瞬間的にフリーズ、ごく普通のデジカメで撮影しました。

まだ外形は保っていますが、尻尾の部分まで全面的に細かく砕け、本体部分が膨らんで、まさに四方に飛び散ろうとしているのがわかります(下の砕ける前の写真と比較)。


クリックすると元のサイズで表示します


オランダの涙は、高温になって流動化したガラスを水中で急速に冷却することによって、涙滴型に固まった、強化ガラスの一種です。

オランダの涙の表面には圧縮応力が、内部には引張応力が形成され、見かけの上は強度が増しますが、細長い尻尾の部分が破壊の始点となりやすいのです。

オランダの涙の尻尾を折ると、内部に蓄えられた歪エネルギーが、亀裂を一気に拡大させ、粉々の破片にして飛散させます。




0

2012/12/9

オランダの涙 2  オランダの涙

クリックすると元のサイズで表示します

ガラスの形態を変えるためには、熱源とたいへんなエネルギーを必要とします。

工場や学校の実験室のように設備の整っていない家庭環境でも、簡便なバーナーを用いてガラスを加工することができますが、火の取り扱いには細心の注意が必要です。



クリックすると元のサイズで表示します


火炎温度が600℃〜1000℃のアルコールランプでも、融点の低い軟質のソーダガラスなら、オランダの涙を作ることができます。

アルコールランプで使用する燃料用アルコールの主成分は、メタノールですが、引火性があるため、こぼしたり、着火源に近づけたりしないように気をつけます。また、蒸気を吸い込まないよう換気をよくし、保護メガネを使用します。エタノールを使う場合でもおなじです。


アルコールランプは、火炎の向きを変えることができないので、溶けたガラスが棒の先から滴りそうになったら、アルコールランプから水を張った容器の上へと、すばやくガラス棒をもっていきます。


クリックすると元のサイズで表示します

都市ガスは手軽な熱源ですが、使い方を誤ったり日常の点検を怠るとガスの漏洩や爆発事故、火災につながります。

空気をファンやポンプで供給するタイプのバーナーや、酸素バーナーは、逆火すると、炎がバーナーの火口の内部に入り込み、バーナー本体、さらにはガスホースへと急激に燃焼していきます。

火口内部での小さな逆火は、点火や消火時によくあることで事故ではありませんが、火口がつまるなどが原因で高圧の空気や酸素が燃焼ガス側に逆流しておきる逆火は、迅速な対処をしないとたいへんなことになります。

まず、バーナー(トーチ)本体が金属音を発して赤熱、あれよあれよといううちに、バーナーのパイプのロウ付け部分か溶けてポロリと落ちます。

ガスのバルブを閉めるのが間に合わず、逆火防止器が接続されていないと、酸素がガスホース側に回り込んでガスホースが爆発、破裂します。さらにその先に安全装置がないと、おそろしいことになります。

酸素ホース側に火が回り込んだ場合は、酸素ホースが花火のように炎を吹きながらのたうちまわります。燃えるものがなくなるまで、燃えます。

逆火事故を何度も目撃したことがありますが、わたし自身も1度だけ始末書を書いたことがあります。

そういうわけで、エアーバーナーや、酸素バーナーは高温、大火力が得られますが、逆火防止装置をつけないで使用すると非常に危険(規制する法律があるかまでは調べていません)ですので、専門家以外の方の使用はおすすめできません。

ブンゼンバーナーは手軽ですが、それでも、ガス栓やホースの接続部分からガス漏れはないか、点検を忘れないようにします。

また、ブンゼンバーナーの青い炎やその先の部分は見えにくいので、やけどしないように注意します。

作業中にだれかがガスホースを足で引っ掛けたらどうなるでしょうか。ガスホースの取り回しにも注意します。


クリックすると元のサイズで表示します

ガス充填式の、ポケットトーチです。熱量は小さいのですが、最高で1300℃の炎がでますので、実験用の硬質ガラス棒でも直径4ミリメートル程度までなら、溶かしてオランダの涙を作ることができます。


クリックすると元のサイズで表示します

キャンプや料理にも使われる、ガスボンベに取り付けるタイプのガストーチは、ポケットトーチよりもはるかに大きな熱量があります。ガラス棒がかんたんに溶けていきます。

これらのガストーチの使用にあたって大事なことは、決して火炎を人や燃えるものに向けないことです。

「そんなこと当たり前」と思われるかもしれませんが、「トーチが突然倒れることもあるかもしれない」と事前に対策をたてておいても、決して無駄にはならないでしょう。


クリックすると元のサイズで表示します

ガラスを急に加熱したり冷却したりすると、クラックが生じて割れてしまいます。とくに、膨張係数の大きい軟質ガラスの場合は、予熱をちゃんとしないと、「パシッ!」という音とともに高温のガラスの破片が飛び散ることになります。

保護メガネをして目を保護することはもちろんですが、服装も、耐火性の高い綿100パーセントのものを選びます。


クリックすると元のサイズで表示します

高温のガラスの破片が難燃性でない化繊の布に付着すると、溶けて皮膚にへばりついて火傷をひどくするかもしれません。作業するときは、万一のため、水や濡れ雑巾を手元に用意しておくとよいでしょう。

これらは、自分が怪我をしないだけでなく、自分の子どもや他人に危害をおよぼさないためにどうすればよいか、経験的なヒントにすぎません。記事をもとに試してみる場合は、自己責任でお願いします。



0

2012/12/6

オランダの涙 1  オランダの涙

クリックすると元のサイズで表示します
オランダの涙

オランダの涙(ルパート王子の涙、プリンス・ラパートの涙)とは、ガラスの涙のことです。

溶けたガラスの一滴を水中で急冷することによって得られます。

名前の由来や製作方法については、Wikipedia や YouTube その他で詳しく紹介されています。

自然にできるガラス質の涙には、火山涙(ペレーの涙)があります。


50年ほど前、わたしが小さかったころに、子ども向けの科学雑誌に、オランダの涙のことが光の性質の実験の1つとしてのっていたのを読みました。

そして、そのきれいなオランダの涙をつくってみたくなったわたしは、ガラス瓶を割って、その破片をガスこんろの火であぶってみたものでした。

しかし、30分ほどあぶっても、ガラスの破片の先っちょが赤くなってやわらかくなるだけで、滴にはなりませんでした。そして、「ガス代がもったいない」と、母親にしかられたものでした。

50年の時を経て、どいういうわけか、オランダの涙をもういちどつくってみようとおもいたちました。

そしてやっと、きれいに輝くオランダの涙を自分の目でみることができました。


クリックすると元のサイズで表示します
オランダの涙(偏光フィルター使用)



クリックすると元のサイズで表示します

色ガラスをつかって、いろんな色のオランダの涙をつくってみました。

人間社会では、紅涙や黄涙、血涙を流すこともあるそうです。ボーナスの袋をあけてみたらすずめの涙だったり、鬼の目にも涙が光るようなきびしいリストラが待ち構えていたりします。

0

2012/11/5

雲母(1)  計数ソフト

クリックすると元のサイズで表示します

白雲母(Moscovite)です。

組成は、KAl2(AlSi3O10)(F,OH)2

雲母は、層状になったケイ酸塩鉱物ですが、層と層は間にあるカリウムで結合されており、ここから劈開していきます。


クリックすると元のサイズで表示します

黒雲母(Biotite)です。

組成は、K(Mg,Fe)3AlSi3O10(OH,F)2

黒雲母などのケイ酸塩鉱物が変成したものが園芸でよく使われるバーミキュライトで、ラジオ番組で福島原発事故について解説していた京都大学原子炉実験所の小出先生によると、バーミキュライトはセシウムをよく吸着するそうです。カリウムが抜けたあとにセシウムが入り込むのかもしれません。


クリックすると元のサイズで表示します

電子レンジの電磁波を照射する窓に使われている、人造雲母です。

雲母の小片を接着剤で固めてプレスしたもののようです。

うまく劈開しません。




0

2012/10/29

木枯らし1号  雑感

気象台によると、10月29日、近畿地方で「木枯らし1号」が吹いたそうです。

季節は秋から冬へと移っていきます。高血圧症の私にとっては、トイレや入浴時のヒートショックに気をつけなければならない、恐怖の季節です。

ところで、曲亭馬琴/藍亭青藍の『俳諧歳時記栞草』によると、「こがらし」とは「木嵐」であって「木枯らし」ではないそうです。

「こ・あらし」が音便化して「こがらし」となったもので、「いか・あらし」(五十嵐)を「いがらし」とよむのとおなじなのだそうです。

現在はほとんどの人が「木枯らし」を使っているので、「木枯らし」でよいと私は思います。

江戸時代には、ほかにも、「一生懸命」(いっしょう・けんめい)は語源からいうとまちがいで、「一所懸命」(いっしょ・けんめい)がただしい、などの論争があったようです。

いまでは領地をあてがってもらって生活することに懸命になるような人はいないので、「一所懸命」は歴史の中だけで使われる言葉でしょう。

言葉とその意味は時代とともに変化するものです。

0



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ