OKIの音楽には、二つの方向性がある。一つは樺太、北海道に残されたアイヌの伝統的なトンコリ音楽を伝承しようとするもの。もう一つは、OKI自身の人生の中で影響を受けたロック、レゲエ的な旋律をトンコリという楽器だけではなく、ドラム、ギターなどの他の楽器とミキシングによる操作で表現しようというものだ。もちろん、インストロメンタルだけの曲もあるが、これに、OKI自身と女性のアイヌ語によるヴォーカルが付け加えられる曲がある。
私自身は、CDでもライブでもその両方を聞いている。それぞれに良さがあるが、トンコリという弦の音色の美しさを楽しむという意味では、伝統的なものが好きだ。しかも、ソロで演奏するときの彼の音楽はスローな曲も、スピード感のある曲も、天上へ舞い上がるかのような飛翔感がある。そしてアイヌ語の響きが、その飛翔感に大きな弾みをつける。
ひさびさの旭川でのOKIライブだった。私的な事情で、今回のライブ参加は止めようかと思っていた。その矢先、先輩のTさんの担当するFM放送のOKI特集や、写真家のMさんの電話などに後押しされて参加を決めた。
2007年秋。高山の紅葉が次第に街へ降りてきている。
午後6時半、川村カ子トアイヌ記念館。Tさんと到着した時点では、まだ会場はさほど人は多くないが、時間が迫るにつれ、圧倒的に若者が多くなり、外国人の姿も見られる。
つい2日前の放送にTさんのFM放送のゲストとして参加した大阪出身のGさんに紹介される。放送の声のイメージとは違った雰囲気の、くだけた人だった。しかし、体と表情に人柄の良さがにじみ出ている。会場の前でたこ焼き屋を開いていて、早速、本場の味を頂く。なるほど、これが本場の味である。
写真家のMさんも現れた。彼女とは、3年前に嵐山のMOKERAMOKERAでのOKIライブでは一緒に撮影した。彼女とは久しぶりに会ったが、元気そうだった。
午後7時。個性的な帽子とシャツのOKIが登場した。最初の二曲は、樺太アイヌの伝統曲だった。シンプルな旋律が秋の夜に響き渡る。
「あまりにシンプルな曲なので、3000円は高いかなと思っている人もいると思うので次の曲へ行きます」
と、OKIは聴衆を笑わせた。
私の好きな「ケント・ハカ・トゥッセ」(ケントの帽子 手探りする)など幾つかの曲が続いた。第一部の圧巻は、伝統曲のロック的なスピード感のある「ヘチリ・ロック」だった。樺太に原曲があるという。もともと、OKIは、陰と陽、スローとスピード感の両方を兼ね備えた人だが、トンコリでこの感覚を表現できることに感動した。
第二部は、アイヌ衣装を着た女性4人が登場。彼女たちはMaewrewと呼ばれているようだが、意味はわからない。一人は、CDでも旭川冬祭りでもOKIと競演しているレクポというOKIの奥さんだ。
チラシには、妖艶の輪唱と書いてあったが、まさにミキサーの内田直之さんの力もあるのだろうが、なかなかのハーモニーとまさに輪唱の大きな広がりがアイヌ記念館に響き渡った。
最後に、初めて聞いて曲名が分からないのだが、ハードな演奏とOKIのシャウトする歌でライブが閉じられた。この曲のアグレッシブなイメージも、私を突き動かす力があった。
アンコールは、日高山脈の奥に位置する湖をイメージした「カイ・カイ・アシ・トー」(さざ波立つ湖)で幕が閉じられた。この曲は、私が数あるOKIの旋律の中でも最も好きな曲である。その選曲の妙に満たされた想いを、心の奥に感じながら雨の夜の街を、私は家へ向かった。

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