2017/4/7

「平和の少女像」を「慰安婦像」と呼ぶことを決めた日本政府  ]その他
 ◆ 「少女像」撤去は問題のすり替え
   「日韓合意」をめぐる情報操作
(ふぇみん)
   ●梁澄子

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 1月24日放送の「NHKクローズアップ現代+ 韓国、過熱する”少女像”問題、初めて語った元慰安婦」(別掲参照)は、一方の事実だけを語ることで他方の事実を隠し、印象づけを多用して情報操作を行う悪質な番組だった。
 例えば、釜山の日本総領事館裏に設置された少女像については、朴撞恵(パククネ)大統領の退陣を求める韓国のデモを紹介した上で、「こうした政治的な空気の中で、釜山の日本総領事館前に少女像は設置された」とだけ説明する。
 実際には、この少女像を設置した学生団体は、日韓合意直後の16年1月20日に設置計画を発表している。日韓合意への怒りが、領事館前(実際の設置場所は領事館裏)の設置へと学生たちを突き動かしたのだが、この事実には触れず、あたかも韓国内の政治状況が少女像設置の要因であるかのように印象づけ、情報操作を行ったのだ。


 ◆ 日本政府の情報操作
 このような情報操作の本家本元は日本政府だ。政府は、合意に従ってすでに10億円を支払ったのだから、あとは韓国政府が合意を実施する番だと繰り返し求めてきた。
 加害国が被害国に「要求」を突きつけるということ自体が、問題の「すり替え」で、甚だしく転倒しているが、ここで言う「合意の実施」「少女像の撤去」を意味していることも、重大な「すり替え」だ。
 合意ではソウルの大使館前の少女像について「適切に解決されるよう努力する」としただけで、そもそも撤去が約束されたことは一度もないからだ。
 まして釜山の少女像は合意時点では存在すらしていないのに、「最終的・不可逆的に解決する」と合意したのだから、「そのような意味合いから遺憾だ」として「撤云を強く申し入れ」たのである(1月5日菅官房長官)。
 「意味合い」から「撤去を強く申し入れ」るというおかしな論法が、日韓合意に基づく当然の「権利」であるかのように語られ、世論にも疑問を持たれずに、異常とも思える報復措置が高い支持を得ているのである。

 ◆ 日本政府が圧力
 「少女像」の設置が外交と領事に関する「ウィーン条約」22条2項が規定する外国公館への「安寧の妨害と威厳の侵害」に当たると日本政府は主張する。
 醍醐聡さん(東京大学名誉教授)によると、同条約22条の2が問題となり、これまでに確認されたのは3例
 そのうち条約違反が適用されたのは、1979年の「在テヘラン米国大使館事件」のみで、イラン人が米国大使館を襲繋し占拠した行為に対し、イラン政府があらゆる努力でそれを終了させなかつたことが、同条約22条の2ほかの義務を履行しない不作為にあたるとされた。
 他の2例はいずれもウィーン条約違反が認められなかった。
 「米国内の大使館周辺で外国政府の評判を疑めるような掲示を禁止する法律」の合憲性が争われた事例では、「ウィーン条約22条2項が定めた外国公館、外交官の尊厳を守るべき必要性の限度を超えて、個人の政治的言論の内容を規制するものと考えられ違憲」という判決が米国で出されている。

 政府は今月に入って、「少女像」の呼称を「慰安婦像」で統一することを決めた。
 一体どのような権限で他者がつくったモニュメントの呼称を勝手に言い換えるのか。

 本来、名称をつける権限は、つくった人々のものだろう。そのような原則に従えば、ソウルの日本大使館前の碑は「平和の碑」、釜山の総領事館裏の碑は「平和の少女像」だ。
 ソウルの「平和の碑」は、1992年に始まった水曜デモが1000回を迎えた2011年12月14日、20年間その場所に立ち続け、平和を訴える活動家に変化していったサバイバーたちを讃えるために建てられた。
 しかし、釜山の「平和の少女像」は、日韓合意への怒りから設置され、その怒りは、設置を防ごうとする日本政府の言動によってますますヒートアップした。

 例えば、昨年11月28日付で日本総領事が釜山市東区庁長宛に書簡を出し、「(少女像が建立されないよう)区庁長が強いリーダーシップで対応していると思う」「少女像が設置されたら日本人の韓国訪問客数に悪影響を及ぼす懸念がある」等と圧力を入れていたことが暴露されると、世論は「韓国は未だに日本の植民地なのか。なぜ日本の総領事が韓国の行政に指図するのか」と猛反発し、これが領事館裏への設置を促す世論喚起に大きく寄与したのだという。

 ◆ 本質に立ち返るべき
 一昨年の日韓合意以来、韓国市民の反発は強まり、少女像等の記念碑は増え続けている。その過程で、ソウルの「平和の碑」に込められた意味が、一部で変質しつつある状況に胸が痛む。
 しかし、そのような状況を引き起こしているのは、第一義的に日本政府の態度だ。
 合意で「お詫びと反省」をロにしながら、お詫びの手紙を書く気は「毛頭ない」(安倍首相)と言い放ち、いつの間にか「10億円を振り込め詐欺」(首相側近)された「被害者」にすり替わることに成功した日本政府に対して、日本の市民が声を上げ、「慰安婦」問題の本質に立ち返った認識を示すよう働きかける他に解決の道はない。

『ふぇみん No.3147』(2017/2/25)


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