2017/4/18

東京電力「新新総特2017」を批判する(下)  ]Xフクシマ原発震災
  たんぽぽ舎です。【TMM:No3053】地震と原発事故情報
 ▼ 東電は原発に依存せず追加資金を投じない計画を立てるべき
   福島第一原発の廃炉とは、汚染水とデブリによる事故や
   環境汚染を防止しつつ、原発を撤去すること
山崎久隆(たんぽぽ舎)

 5.パワーグリッドから利益を生む?
   送電網から得られる利益は本来設備の更新など必要な部門に振り向けるべき
   利益が出るのならば託送料金の値下げに充てるのが本来

 分社化した東電の中で送配電設備を保有するのは東電パワーグリッドである。
 この会社は送配電システムを管理しているので、新電力など他電力の電気を送る際に徴収する「託送料金」が主たる収入だ。一見すると巨額の利益を上げているように見えて、実際は、その経営は火の車といって良い。


 実態が露呈したのは昨年10月12日に発生したケーブル火災事故だ。新座市の地下に埋設されていた275キロボルトの高圧送電線が火を噴き、鎮火までに4時間を要し広域に停電も発生した。この事故で驚くのは燃えたケーブルの使用年数だ。
 火災を起こしたのは「OFケーブル」と呼ばれる、絶縁に紙、冷却に油を使うタイプのもの。現在はほとんど製造されていない。
 電気設備使用の目安20年を大幅に超え、35年も使ってきた古いタイプで、原因は「劣化」。原発事故と同じ構造がここにもあった。

 使用年数を大幅に超えて使い続ける理由は「資金不足」
 東電管内でも特に東京周辺は電線の地中化が進んでいる。総延長は1543キロにも及ぶ。そのうち1027キロが火災を起こしたタイプと同じものが敷設されており、これらの多くで35年以上の時間がたっている。
 東電によると、ケーブルの交換は巨額の費用が掛かる上、効率よく交換作業が出来ない敷設方法になっているところが随所にあるという。単に古くなったというだけでは短期間に大量交換作業が発生することや交換するための数千億円もの資金が足りないので、点検して危険と見なしたもの取り替えている。結果的にこれが裏目に出て、新座市でケーブル火災を引き起こし58万6千軒もの広域停電を引き起こした。

 送電網から得られる利益は、本来設備の更新など必要な部門に振り向けるべきだし、その上で利益が出るのならば託送料金の値下げに充てるのが本来の姿だ。廃炉費用や、まして「過去分の補償」の原資にすることは認められない
 最後の規制部門である送配電システムは、2020年まで総括原価方式が認められている。その間に会社を売却して分離独立させることこそが電力システム改革にとって最も良い方法である。
 それが成されなければ「国内トップレベルの託送原価(2016年度比500億円以上削減)を実現」や「事業構造改革により2025年度までに世界水準の託送原価(2016年度比1500億円程度削減)を実現」(新新総特の送配電事業の項目)することは難しい。

6.電力再編と脱国有化
   唯一の方法は東京電力を売却すること

 東電は現在国有化された状態だ。株式の過半数を保有するのは国の機関である「機構」なので、経営方針は常に国の監理下にある。これをそのままにしていては他電力や会社との事業統合や再編は困難だ。(19億4千万株、54.69%)
 これまでに大規模な統合が行われたのは、火力発電用のガスを調達するために中部電力との合弁で立ち上げた「JERA」だけ。
 今後は保有する火力発電所をここに移管する計画だが、例えば原発の保守管理を共同で行うなどの新たな計画は進んでいない。
 日立や東芝などのメーカーはコストダウンのために統合を望んでいるが電力会社が二の足を踏んでいるという。背景には国の強い管理を嫌ったからだとされる。

 東電は「脱国有化」を掲げるが、株式の過半数を国が保有してきた理由は東電の救済と共に福島の復興資金、具体的には除染費用4兆円の調達を東電株の売却により行う計画だったからだ。
 しかし、現在の保有株式数から割り出すと株価が2800円を遙かに超えない限り、売却益から除染費用と汚染廃棄物の中間貯蔵費用合わせて5.6兆円を調達することは出来ない。
 市場で東電株の大規模な売却を行えば一般的に株価は暴落する。そのため売却そのものも現実的ではない。
 現在の株価の5倍にも達する「価値」を株の売却で生み出すことは不可能なので、唯一の方法は東電を売却することだ。特にパワーグリッドと火力設備は大きな資金源になり得るだろう。

7.廃炉は可能か
  福島第一原発の廃炉とは汚染水とデブリによる事故や
  環境汚染を防止しつつ、原発を撤去すること

 最も先行きが見えないのは「廃炉」である。
 福島第一原発の廃炉とは、単に原発を解体することではなく、汚染水とデブリによる事故や環境汚染を防止しつつ、原発を撤去することだ。はじめから使用済燃料を撤去している他の原発の廃炉とは次元の異なる問題を抱え、先行する事例も存在しない過酷な事業だ。

 費用の見積もりは東電により最初2兆円とされたが、既にそのうちの1兆円は汚染水対策などで使っている。
 試算結果が「有識者ヒアリング」と呼ばれる意見聴取会において「スリーマイル島原発事故では当時約1000億円かかった」から、それを50〜60倍した数値」とされる金額6兆円を、これまでに東電が見積もった費用2兆円に上乗せして8兆円になると示された。しかし真に受ける人はほとんどいない。

 まず、燃料の位置と量を把握するだけでも何年もかかるであろう。最終的にはわからないものも出るかもしれない。
 しかし東電は今年の夏に取り出し方法を決めるという。無理な相談である。

 第一に、本来ならば取り出せるかどうかを検討課題とするべきだ。1号機から3号機まで状況は全く異なるので、方法どころか取り出せない可能性が高い

 第二に、40年後と仮置きした廃炉完了予定は大きく揺らいでいる。一方で、これが、東電と国の「公約」になっている。できないことを約束するのは、特に地元に対して大変失礼だし犯罪的だ。

 第三に、その無理が新たな危険性を作り出す。福島第一原発は依然として津波災害に極めて脆弱であることを忘れていては困る。放射性物質の拡散防止、特に再度の津波災害を防止する対策が最重要課題だ。石棺方式も検討すべきだ。

 第四に、優先順位を見誤っている。汚染水対策とともに重要なのは放射性物質の拡散防止対策だが、デブリ取り出しを優先すれば拡散防止は疎かになる。
 また、使用済燃料対策も遅々として進んでいない。使用済み燃料プールから取り出すだけでなく乾式貯蔵への早期移動も重要課題だ。

 第五に、福島第二原発を廃炉にすること。宙ぶらりんの状態のまま6年も過ぎてしまった。地元が廃炉を要求しているのに放置していることが大きな不安材料になっている。安心・安全とは正反対の行動では信用を得ることなどできるわけがない。
 福島第二原発は第一原発の南約10キロ。いわき市など人口密集地帯により近い。

 8.原発抜きで考えよ
   東電は原発に依存せず追加資金を投じない計画を立てるべき

 「新新総特」に破たん処理がないことは、東電と最大株主の国(機構)が作る計画であるからだとしても、柏崎刈羽原発を(明記はされないものの)2018年度までの再稼働を前提となっている計画自体が、地元はもちろん、市民の意志とかけ離れた荒唐無稽なものとなっている。

 柏崎刈羽原発につぎ込んだ6800億円の資金に加え、これからも発生する維持管理費用を考えれば、再稼働こそ利益を食いつぶしていることが分かるだろうと思う。
 新潟県は再稼働を論ずる前提として福島第一原発事故の原因究明を挙げている。
 しかし、東電も国もそれを放棄した。事故原因を津波で電源を失ったこととして単純化し、従来の過酷事故対策を多少書き換えただけで新規制基準を作った。これでは新たな事故を招き寄せる。

 「世界最高水準の安全の実現に向け、「原子力安全改革プラン」を着実に推進する。」と「新新総特」に記述しているが、原発事故の防災体制にさえ責任を負わないのにどうして世界最高水準と言えるだろうか。
 少なくても東電は、原発に依存せず追加資金を投じない計画を立てるべきである。それが最低限の要求だ。(了)

(上)は、【TMM:No3044】
http://wind.ap.teacup.com/people/11727.html


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