2018/1/10

民営化10年 郵便局のサービスは良くなったか?  ]U格差社会
 ◆ 民営化10年 郵便局の今
   〜巨大な郵便工場ができて、効率最優先の非人間職場
(週刊新社会)


 「官から民へ」の大号令の下、国鉄に続いて行われた郵政民営化から10年が経った。配達員の制服の色が変わり、郵便局の看板も(日本郵便)や(ゆうちょ銀行)に変わった。
 国鉄民営化とは異なり地域分割ではなく、事業別郵便、貯金、保険、郵便局)に分割した郵政。各社を統括する日本郵政会社(JP)により株が次々と放出され、巨大な民営会社グループとして歩み出したが、はたして郵便局のサービスは良くなったか、労働者にとって働きやすい職場となったであろうか。(『伝送便』編集部・池田実)

 ◆ 赤字郵便部門を効率化
 先ごろ郵便料金が22年ぶりに値上げされたが、郵便物の減少に歯止めはかからず、日本郵便はゆうパックやメール便など郵便以外の荷物や物流事業へとシフトしている。


 儲けが見込めない小型郵便事業から成長産業である大型物流事業への流れである。
 そして効率化の名のもとに行われているのが郵便物の仕分けを行う「地域区分局」の集約化=「郵便・物流ネットワーク再編」と呼ばれる大合理化だ。

 従来、都道府県ごとにいくつか設置されていた地域区分局を県をまたいで集約化、各集配局に配備されていた自動読取り区分機も新設の大型区分局に集中移管。各集配局で行っていた機械による仕分け作業を新区分局で集中的に行い、労働力を削減する狙いだ。
 2014年から始まった再編は北海道から九州まで順次行われていった。

 新区分局の設置場所は高速道インターチェンジ付近で、郵便局とは名乗っていても窓口もATMもボストもないという、まさに巨大郵便工場と呼ぶにふさわしい建物となつている。
 1300億円を投資して建設した各局だが、開局直後から次々と問題を起こしている。
 まず郵便が遅れる。
 岡山新局ではDM郵便が期限に間に合わず、局が謝罪に回ったと地元紙に掲載されたほか、各地でゆうパックなどの配達遅れの苦情が寄せられている。

 ◆ 各地で集団退職が頻発
 その一番の原因は人手不足である。
 なんせスピード優先のために人里離れたインターチェンジ付近に建てられたので、交通の便が悪い。だから近くにコンビニも食堂もない所が多い。さらに給料もコンビニ以下ときては、アルバイトが集まるわけがない
 すでに鹿児島局、岩手局、札幌道央局などで非正規社員が集団で退職したほか、各局で採用直後の退職が相次いでいる。

 深夜勤務中心の過酷労働に加え、食堂や満足な休憩室もないという福利厚生面、長時聞のシャトルバス通動での苦痛など、人手不足の要因は容易に想像できる。
 年末繁忙に向けて大量の募集チラシを撒いたが若者からも主婦層からも敬遠され、残った社員は連日残業に追われているという。
 そのため新調した最新鋭区分機も人手が足りず眠ったまま、はたして年賀状はどうなるのか不安の声は募るばかり。人よりモノ、郵便の効率性ばかり追い求め、働く人間のことは二の次という郵政会社の非人間性が浮き彫りにされる施策である。

 ◆ 過疎地の集合受箱配達も
 人件費削減とともに検討されているのがサービス切り下げである。
 郵政民営化にあたって、日本郵政に義務付けられたのが全国の郵便局を維持する「ユニバーサルサービス」。
 「全国で公平に安定して確保され、国民のだれもが利用できる料金と条件で提供されるべきサービス」と定義されるものだが、今効率化の流れの中で見直しが始まっている。
 総務省に「郵便のユニバーサルサービスに関する検討会」が設けられ、「ユニバーサルサービスのコスト」について議論が行われている。

 中間答申では、国民・利用者がユニバーサルサービスのコスト負担のあり方について述べ、検討事項としながらも、現行の週6日配達を5日にする(アメリカ、韓国等で実施、ニュージーランドでは週3日配達)ことや、郵便局窓口時間の短縮、さらには過疎地域での戸別配達を「集合受箱配達」へ切り替える(カナダで実施)などが取り上げられている。
 さらに第三種・四種郵便(点字郵便や新聞、種苗郵便等)の料金値上げも検討されており、今後サービス切り下げ、料金値上げの流れはさらに加速するだろう。

 ◆ 企業買収も誤算続き
 その一方で、日本郵政は「事業の成長・発展のための戦略」(中期経営計画)として、国際物流事業や不動産事業、物販事業での新たな展開を図ろうとしている。
 そのためM&A(企業買収)、子会社化を拡大しようとしているが、日通ペリカン便吸収や豪トール社買収での巨額損失、野村不動産の買収断念など誤算続きである。
 結局、そのツケは現場労働者と利用者にまわされるのか。
 本来の公共サービス、インフラとしての郵便局のありようを捨て、目算のないまま国民から預かった資産を新規事業や企業買収に注ぎこむ郵政幹部。

 民営化後、「風通しの良い職場」を掲げた郵政会社だが、10年経った今も上意下達の「もの言えぬ職場」は変わっていない。
 非正規社員の一般社員への登用も実施されたが、依然として格差は縮まらず、分断は拡大している。
 民営化でいかに儲けるかを追求する姿勢を改め、労働者、利用者に寄りそう姿勢がいま求められる。

『週刊新社会』(2017年12月19日)


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