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2008/7/1
職員会議での挙手や採決の禁止など、現場の教員が自由に発言することができない、都立高校の厳しい現状。原告・被告双方が控訴した「日の丸・君が代嘱託採用拒否撤回裁判」、第2回口頭弁論では、2人の原告と原告代理人が意見陳述を行った――。
▲ 「日の丸・君が代嘱託採用拒否撤回裁判」控訴審 第1回口頭弁論
ひらのゆきこ
6月5日(木)午後2時半より東京高等裁判所で、「日の丸・君が代嘱託採用拒否撤回裁判」(平成20年〈ネ〉第1430号)控訴審第1回口頭弁論が開催されました(稲田龍樹裁判長)。
卒業式の君が代斉唱不起立で嘱託不採用となった元都立高校教諭13名が、東京都に対し、処分取り消しを求める訴えを起こしているこの裁判、今年2月、原告勝訴の1審判決が出ました。東京地裁は、東京都に対し、1次原告各自212万8600円、2次原告各自211万6000円の損害賠償の支払いを命じました。
この1審判決については、(原告らに対する嘱託採用拒否は)従前の再雇用制度における判断と大きく異なるものであり、原告らの勤務成績を考慮せず、職務命令違反(卒業式の君が代不起立)のみで判断したことは、「都教委の裁量権の逸脱・乱用であり、違法である」とした画期的な判決との評価もあります。
一方、国歌斉唱にあたり教職員は国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すべきものとした10.23通達について違憲性が認定されなかったことから、原告・被告双方が控訴しました。
今回の控訴審第1回口頭弁論では、原告2名と原告代理人の意見陳述が行われました。
最初に、原告のAさんが意見陳述を行いました。Aさんは、都立高校の英語教師として35年間勤務し、05年3月、定年退職しました。最後の卒業式の君が代不起立で嘱託不採用となったAさんは、一審判決で東京地裁が示した「原告らに対する不採用は都教委の裁量権を逸脱・乱用したもので違法」との判断に対し、「大いに力づけられた」としながらも、10.23通達の違憲性が認めらなかったことについては、「納得できない」と語りました。
Aさんは、日の丸・君が代強制に対する思いは「単純ではない」としながら、3つの側面について説明しました。
1つ目は、個人として、日の丸・君が代の強制は国民主権との矛盾であるとし、日の丸・君が代は侵略戦争のシンボル的役割を担っていることから、「受け入れられない」との思いがあると述べました。
2つ目は、日の丸・君が代強制は、偏狭なナショナリズムのすり替えであるとし、多様な価値観を教えるのが教育であり、(同じ考えを)一律に押し付けることは教育ではないとして、「受け入れることはできない」と述べました。
3つ目は、これが一番重要なことであるとしながら、生徒に対し、ふだん自分が言っていることと異なる行動はとれない、との思いがあると述べました。1945年生まれのAさんは、戦後の歩みの中で、「国民主権」「思想・信条の自由」「学習権」などについての考えを深める中で、その前提となるのが思想・良心の自由が保障されていることであり、10.23通達はまさに踏み絵であったと語りました。
定年を迎え、最後の卒業式で(君が代不起立によって)処分を受けることへの不安と、信念を貫くことの間で心が揺れながら、起立している自分の姿をイメージすることはできなかったと述べ、「自分が自分でなくなるような感じで、(君が代斉唱のとき)どうしても起立することができなかった」と語りました。
Aさんは、嘱託不採用によって教える場を失い、この3年間、生活の核を奪われた状態にいると述べ、苦しい胸の内を吐露しました。また、(自分たちが)見せしめとして処分されたことで、さらに多くの教員が苦悩している現状を思うと、自分の苦しみ以上に「つらい」との思いを訴えました。
次に、原告のHさんが意見陳述を行いました。
Hさんは、都立高校で37年間社会科を教え、06年3月、定年退職しました。Hさんは、生徒自ら学び、考え、行動する人間を目指し、自立する人間を育てる教育をしてきた、と述べ、10.23通達がくるまで卒業式の日の丸・君が代については、賛成・反対の両方の立場を尊重していた、と語りました。
Hさんが教えていた学校では、生徒自ら卒業式にかかわり、参加した父母らに大きな感動を与えるような卒業式をすることができたそうです。しかし、10.23通達がきてからは、それまの自由で独自性のあった卒業式の雰囲気は失われ、内心の自由の説明をすることも認められず、職務命令という形で君が代斉唱のときの起立が義務づけられました。
自由な卒業式を一切認めないという職務命令は、自ら考えて行動する、自立した人間になるという教えと言行不一致を示すことになり、生徒の出した結論と矛盾することになる、とHさんは述べました。君が代斉唱のとき起立しなかったHさんのもとに生徒たちが次々にきて、「先生が(やったことは)ふだんの授業で言っていることと同じだった」言ってくれたそうです。
定年後の嘱託不採用では、推薦文を書いてくれた校長先生が、非常に熱心に教育に取り組んでいたH先生を不採用にしたことに対し、(都教委に)抗議をしてくれたそうです。お上に逆らうとこうなるという見せしめであり、職員会議での挙手や採決の禁止など、現場の教員が自由に発言することができない、都立高校の厳しい現状を訴えました。
次に原告代理人が意見陳述を行いました。
原告代理人は、嘱託不採用になった原告13名はいずれも勤続30年以上の教員であり、日の丸・君が代は軍国主義を駆り立てる道具としての歴史観、世界観と結びつく、との考えを示しました。生徒の自主性を重んじる都立高校では、2001年の卒業式では(日の丸・君が代)実施率は100%でしたが、事前に内心の自由を説明するなど、慎重な取り扱いがされてきました。
しかし、10.23通達以後、都教委が校長を通じて職務命令を出し、日の丸・君が代の強制が行われるようになったと述べ、10.23通達によってさまざまな歪みが生じたことに言及しました。一度でも不起立をすると例外なく処分されることを明らかにしたうえで、思想・良心の自由と不起立は密接不可分に結びついており、(日の丸・君が代強制は)違法であり、教育基本法10条にも違反すると主張しました。
原告側の意見陳述のあと、今後の審理の進め方について、稲田裁判長が、原告・被告双方に今後の予定を質問しました。原告側は、憲法学者や教育学者らの意見書の提出と人証調べの予定があることを伝えました。被告側は、今後の予定については次回までに決めてきたい、と答えました。
稲田裁判長から、原告・被告双方の主張について質問がありました。原告に対しては、都教委が校長の裁量権を奪ったとする主張について、どのようなことを裁量権と考えているのか、という質問でした。被告側に対しては、1審で、たった一回の不起立で不採用とするのは(処分が)重いとしているが、職務命令違反の回数と処分の重さだけ(を争点にして裁判を)でやるのか、という質問でした。
双方とも稲田裁判長の質問の意味がよくわからないといった感じで、何度か質問の意味について問い返していました。
最後に、原告代理人が、傍聴希望者の数が多い(この日は94人の希望者のうち、傍聴できたのは41名)ので、次回からは大法廷で審理をしてほしいとの要望がありました。
▲ 筆者の感想
嘱託不採用の裁判は1審で原告勝訴の判決が出ました。しかし、被告が控訴をし、続いて原告も控訴したため、控訴審で審理が行われています。これから人証調べ(証人調べ)が行われるということですが、教える場を失い、この3年間、生活の核を奪われたという原告のAさんの訴えに応えるためにも、一刻も早く13名の原告の方々を職場に戻すために、関係者は尽力してほしいとの思いを持ちました。
驚いたのは、控訴した被告(東京都)代理人が、稲田裁判長に今後の進行予定を問われたとき、まったく答えを用意してこなかったように見えたことでした。次回、関係者のみによる進行協議が行われるということですが、今後の予定についてなにも答えることができない被告代理人ら(5名)を見ながら、被告はなんのために控訴をしたのか、大変疑問を感じました。
『JANJAN』 2008/06/08
http://www.news.janjan.jp/living/0806/0806068920/1.php
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