ひとの かなしみを見て
わたしも 悲しまずに いられましょうか、
ひとの なげきを見て
やさしい慰めを 求めずに いられましょうか。
こぼれる なみだを見て
もらい泣きをせずに いられましょうか、
わが子の すすり泣く 姿を見て
父親が 胸がいっぱいにならずに いられましょうか。
幼子の苦しむ声や、おびえる声を 聞きながら
母親が じっと座って いられましょうか、
いえいえ、そんなことは とてもできません!
いえいえ、そんなことは とてもできません!
みんなに ほほえみかける イェスさまが
ちいさな悲しみに泣く みそさざいの声をきき
ちいさな小鳥が 悩みかなしむ声をきき
幼子たちがこらえる かわいそうな声をきき
か弱いものの こころをあわれと 思わずに
巣のそばに じっと座って いられましょうか、
幼子のなみだを見ても なげかずに
ゆりかごの間近に、じっと座って いられましょうか。
よるもひるも そばに座って
私たちの涙をみんな ふきとらずに いられましょうか、
おお、いえいえ、そんなことは できません!
とてもとても そんなことは できません!
イェスさまは 喜びをみんなに 分けてくださるおかた
イェスさまは 幼子になられるおかた
イェスさまは 悲しい人になられるおかた
イェスさまは 悲しい人の悲しみを くみとるおかた。
あなたがかなしくて ためいきしても
神さまが そばにいないと 思ってはいけません。
あなたがかなしくて なみだぐんでも
神さまが そばにいないと 思ってはいけません。
おお、イェスさまは ご自分の喜びを 分けてくださる!
私たちの悲しみを この世からなくすため!
イェスさまは 私たちの悲しみが消えるまで
私たちのそばにいて 泣いてくださる。
ウイリアム・ブレイク
William Blake
"On Another's Sorrow"
in Songs of Innocence, 1789.
伊東好次郎訳・解説『ウイリアム・ブレイク きよいこころのうた ─母と子の詩集─』アポロン社、1965年、pp.58-61.