金融の複雑化、高度化、グローバル化  株式投資

■金融の複雑化、高度化、グローバル化

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株式投資・個別銘柄ストラテジー  株式投資

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米国内生産に回帰 改革の息吹  株式投資

【鼓動】

 製造拠点を海外から国内に移す「リショアリング」と呼ばれる現象が、米国で活発になっている。とくに中国から工場を引き揚げる動きが進んでおり、背景には中国での人件費の上昇やカントリーリスクへの懸念がある。11月の大統領選で再選を狙うオバマ大統領も「米製造業の再興」を掲げ、長らく停滞していた米製造業が脚光を浴びている。(米オハイオ州ノースカントン 柿内公輔)

 中央に掲揚された巨大な星条旗に目を奪われた。「メード・イン・USA」へのこだわりが浸透した職場で、作業員が手際よく鋼板を加工し、分担しながら部品を組み立てていく。

 オハイオ州第2の都市クリーブランドから車で約1時間。ノースカントンに、ヒーターや空調機器を手がける米スアレス社の工場はある。それまで中国で生産していた製造拠点を米国に移したのは昨年9月。この工場では約270人の作業員が働き、週に最大2万3千個のヒーターを生産しているが、州内にさらに3つの工場を抱える。

 「すばらしい仕事をしてくれる従業員に誇りを持っている。雇用も通じて地域と米経済に貢献しているという確かな手応えが今はあるわ」。資材調達などを担当するホープ・パオリーニ部長は笑顔を見せた。

 「ラスト・ベルト(さびた産業地帯)」と呼ばれるオハイオ州など中西部は、かつて鉄鋼など製造業が盛んだったが、近年は衰退し地域経済の没落に苦しむ。ノースカントンも例外ではないだけに、デービッド・ヘルド市長は「税収や雇用だけでなく、地域に命を吹き込んでくれた」とスアレス社に頭が上がらない。

 中国などから米国に最近拠点を移した米製造業は同社だけではない。ミシガン州デトロイトでは今年、エレメント・エレクトロニクス社が米国メーカーとしては実に17年ぶりに米国内でテレビ生産を始めた。キャンプ用品のコールマン社は、クーラーボックスの製造を中国からカンザス州の工場に移管。世界最大の建設機械メーカーのキャタピラー社は、今年半ばにテキサス州で新工場を建設する。

 米企業のリショアリングを促進する業界団体「リショアリング・イニシアチブ」の創立者、ハリー・モーザー氏は「米製造業は復活し、米経済の回復を導いている」と強調する。

 中国など新興国に拠点を求めていた米製造業が今なぜ、米国に続々と「帰ってきた」のか。いくつかの理由が指摘されるが、とくに大きいのが、中国を「世界の工場」たらしめていた安価な人件費が過去のものになりつつあることだ。

 中国における製造業の1人当たり月平均賃金は、リーマン・ショックに伴う金融危機が直撃した2009年を除くと、ここ数年間2ケタ増のペースで伸び、昨年までの5年間でほぼ倍増した。米ブルッキングス研究所のハワード・ワイル研究員は「賃金の急上昇を目の当たりにし、多くの米企業が中国から拠点を戻した方がメリットがあると思い始めた」と指摘する。日本や欧州に比べれば米国は人件費が安いこともある。

 加えて原油など世界的な資源価格の高止まりで、原材料費や輸送費も上昇しており、製造拠点の分散は米企業にとってリスクにすらなりつつある。

 さらに、米企業にとっての中国の政治・社会リスクが最近顕在化していることも見逃せない。象徴的なのが、米電子機器大手アップル社をめぐるトラブルだ。同社の看板商品の「アイパッド」の商標で中国企業と訴訟になったほか、労働待遇をめぐっても中国の現地工場との軋(あつ)轢(れき)が表面化。手厚い政府の補助金に支えられた中国企業との競争に苦しむ米企業も少なくない。

 中国との経済摩擦を懸念する声は根強いものの、親中派の米業界団体によってワシントンで4月に開催されたフォーラムでは、米ケイトー研究所のダニエル・イケンソン研究員が「中国は市場の自由化を進めており、メディアが米国との摩擦をあおっている」と強調した。別の米シンクタンク関係者は「安全保障では譲れなくても、通商問題では米中間の決定的対立を避けたいのがオバマ政権や米産業界の本音」と解説する。

 それでも米製造業のリショアリングは当面加速しそうな気配だ。米国はこれから大統領選に向けて本格的な政治の季節を迎える。最大の焦点は雇用問題だが、とりわけ米経済を牽引(けんいん)する製造業の雇用の拡大は大統領の腕の見せ所だ。

 オバマ大統領は2月15日、ウィスコンシン州ミルウォーキーの米錠前メーカー大手マスターロック社の工場を視察。その場で演説した大統領は、やはり中国から拠点を移した同社を「米国での雇用を重視している企業だ」と持ち上げ、米製造業の復活に向けてオバマ政権が邁進(まいしん)することを誓った。オバマ氏は自動車産業が集積するミシガン州などでも演説し、公的資金投入による米自動車産業復活の成果をアピールするなど、リショアリングを最大限に政治利用する方針だ。

 一方、大統領選でオバマ氏との対決が濃厚な共和党の有力候補、ロムニー前マサチューセッツ州知事も負けてはいない。法人税率を最高25%(オバマ氏は28%)へ引き下げると打ち出したほか、米景気の押し上げに向けても民間企業の競争力の活用を前面に打ち出し、公共事業重視など「大きな政府」路線のオバマ政権との違いをことさらアピールする戦術をとる。

 米製造業のリショアリングは過去にもあったが、持続性に乏しかった。今回は大統領選後も尻すぼみとなることなく、米経済の構造改革と底上げにつなげられるのか。大きな命題が米国に突きつけられている。

 

投資の神様バフェット  株式投資

世界一の大投資家バフェットが、福島県いわき市にあるタンガロイの新工場の竣工式典に出席した。バフェットも「働いてみたい」とする驚愕の生産システムとは?

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■ハンバーガーは野菜抜きで味付けなし

 2011年11月、福島県いわき市の私たちタンガロイの新工場完成式典に、世界一の大投資家で、大富豪ウォーレン・バフェットさんに出席していただきました。バフェットさんは、タンガロイの親会社IMCの大株主です。
 羽田空港までお迎えにいき、そこから車での移動をご一緒させていただいたのですが、私たちのようなメーカーと、バフェットさんの住む投資家の世界は全然違うせいか、あまりビジネスの話はせず、食べ物のことばかり話していました。
 バフェットさんがかなりの偏食家だということは耳にしていました。車中で「あなたは、本当にハンバーガーしか食べないのですか?」と聞いてみたのです。そうしたら「日本食もチャレンジしてみるよ」と笑うのです。
 バフェットさんの自伝『スノーボール』にも載っている有名な逸話があります。ソニーの当時のトップだった盛田昭夫さんが、ニューヨークの自宅にバフェットさんをお招きしたんです。バフェットさんは、次から次に出てくる日本食20品に一切手をつけなかった。この逸話をみんな知っているので、バフェットさんは、挑戦してみるなどとジョークを言ったのです(笑)。

 事前の情報で、バフェットさんは、ある種類のハンバーガーとある種類のコーラしか召し上がらないと知ったので、式典のときの食事はずいぶん変わったものになりました。
 ハンバーガーも、ハンバーガーであればいいのではなく、マクドナルドのクォーターパウンダーがいいみたいです。しかも、本来ならレタスやピクルスやチーズなど、肉以外の具材もたくさん入っているはずなのですが、それを全部抜いてしまって、ソースも味付けも一切なし。完全にパンで肉を挟んだだけのものです。それを200個ほどマクドナルドに注文しました。コーラはものすごく甘いチェリーコークだけを、1日に何本も飲むとのこと。チェリーコークは、日本の小売店で売っているお店が少ないので、ネットで探してなんとか手に入れました。
 バフェットさんとは今回の来日で、3回ほど食事の機会がありましたが、サラダ、魚、肉と私たちが食べている料理には目もくれず、特注のハンバーガーをずっと食べていました(笑)。


■バフェットのタンガロイへの投資スタイル

 私たちタンガロイがIMCの子会社となった当時は、バフェットさんがIMCの大株主であるということは全く話題になっていませんでした。
 バフェットさんはよく言われるように、長期投資が基本のスタイルです。一度投資をすると、ほとんど手放すことはありません。そして、株主と会社はあくまでパートナーという考え方。ですから、その経営者に任せられるかどうかということを確認したら、その後は期待通りの数字が出ているかをチェックするだけで、経営のやり方に口を出すことは一切ありません。

 現在のタンガロイの本社は福島県いわき市です。ここにはもともとタンガロイの工場があり、建てたのは実はもう20年も前のことになります。もともとメーンの工場は神奈川県の川崎にあったのですが、段々開発が進んで市街地になってきたので、工場としての立地に向かなくなってきました。その後、事業拡大して山梨県やトヨタのある愛知県などにも工場をつくりました。工作機械メーカーさんのメッカですので、なるべくお客様の側で質の高いサービスができるように、という目的だったのですが、工場が分散することによって、少しずつではありますが、生産性の効率が低下してきました。そこで、生産設備をもう一度集約して、生産効率の向上を図ってみよう。これが、新工場を建設し、本社を川崎から福島に移した一番大きな理由です。

 実は、本社の移転、そして製造能力の増強のための投資を決めたのは09年の前半、つまりリーマンショックの後です。当時はみんな投資を控え、慎重に判断をしているところでした。そんなタイミングで事業拡張の計画を始めたものですから、「タンガロイは気でも狂ったのか」と言われたり、地元の方にも「なんで今いわき市に移すのですか」と驚かれたりもしました。

 タンガロイが、IMCの傘下に入った数カ月後に、新工場建設の打診をIMCに申し出ました。バフェットさんは「タンガロイは宝の山、古い設備をIMC流に切り替えられればもっと利益が出る」とおっしゃってくださって、すぐにIMCからゴーサインをもらいました。打診をしてから決定までの決断の早さにはとても驚きました。
 たとえば、業界で私たちの商品のシェアが12%くらいだとします。現状のシェアはまだまだ低いですが、裏を返せば88%は成長できる可能性があるわけです。もちろん、競合他社との熾烈な争いの後になりますが、論理的に言えば私たちが成長する余地はまだまだ残されている。それがIMCグループの考え方です。その考え方が、もともと成長戦略を考えていたタンガロイとリンクしました。その結果が本社の移転と投資に繋がりました。
 私が入社した当時は、先ほどお話しした神奈川県の川崎が本社で、経営トップから製造工場までが上から下まで全部セットになっている会社でした。それが事業の拡大によって、あちこちに段々と分散していく。その過程をこの目で見てきました。それをわざわざもう一度ひとつに集めるということになります。


■超硬合金とは「腐らない硬いキャラメル」

 製造というのは、どのような事業展開をしていくか決めたら、それをきちっと最後までバックアップするというところまでがひとつのセットです。ですから、会社が決定を下してから、試作をつくり始めるスタートまでが、物理的に近い場所でやるということは、その分フットワークが軽く、単純に決定から実行までの時間短縮になります。近年のように景気や経営方針などの変化の振り幅が大きい時代には、これは有利な体制だと思います。タンガロイは、理想のメーカーに近づいているのです。

 私たちが04年に東芝グループから独立することになった際、株主構成が大幅に変わり、東証一部の上場基準を満たさなくなったため、上場廃止となりました。当時は再上場するつもりでしたので、アナリストや銀行の評価が気になりました。そこで余分な在庫をなるべく持たず、必要なときに、必要なものだけをつくる、トヨタ式生産方式「ジャストインタイム」を徹底するため、専門のコンサルタントにもお願いして、工場で2年ほどトレーニングをしていたこともあります。
 その後、08年にIMCグループの傘下に入ることになり、再上場をする必要もなくなりましたので、劇的に経営方式を見直すことができました。

 自動車という製品は数万点の部品をもとに成り立っています。もちろん家電製品もそうですし、世にある商品はだいたいそういうものが多いと思います。しかし、私たちタンガロイの製品は部品点数が非常に少ないのです。タンガロイのメーンの商品は超硬合金という黒い塊です。
 外見は、硬いキャラメルみたいなものです。キャラメルと違うところは、腐ったりはしません。商品が市場で陳腐化しない限り、お客様が加工前の素材として持っていても、あるいは最終製品として持っていても、現金に次ぐ価値を持つということになります。

 たとえば、銀行からお金を借りている会社、株式上場している会社ですと、アナリストに受けのいい経営や、銀行が評価してくれるような経営の仕方をしなくてはなりません。
 現在の日本でメーカーが評価されるのは、どこまでトヨタ式生産方式が徹底されているかに尽きます。つまり在庫であったり、中間在庫を多めに持つということは、そういった方面からの評価基準に反する経営プランになってしまいます。
 先ほどお話ししたように、私たちの製品はほとんど陳腐化もせず、在庫自体が現金に近い価値を維持できます。なおかつタンガロイ製品は生産材ですから、この製品を使って生産をされるお客様がいるわけです。そういったお客様は、常に私たちの製品を持っていてスタンバイしているわけではなく、注文をもらって、そこではじめて、必要な生産材を集めて、仕事をして、完成させ、届けるというサイクルになるのです。
 そうすると、お客様が「欲しい」と言われたときに即お納めする、ということがビジネス上、一番重要なポイントになります。ですから、在庫をあえて少し多めに持っていることが、お客様への納期を少しでも短くすることに繋がります。それが非常に価値の高いサービスになるのです。私たちタンガロイは、非上場企業という立場になったおかげで、アナリストや銀行の評価を気にする必要がなくなり、今までと違う大胆な経営方式をとれるようになったのです。今の私たちにとって、大切なのは、市場の評価ではなく、お客様の評価なのです。

 もちろんジャストインタイム方式そのものを否定しているわけではありません。生産に入る段取りの準備期間を短くしたりですとか、工場の整理整頓など、ジャストインタイム方式の考え方の基本は同じです。ただ、在庫をなるべく持たないようにしたり、中間仕掛かりを持たないようにしたりするところの、やり方が違う。違いといえばその部分だけです。
 これはIMCの考え方でした。私たちは再び上場するつもりでやってきましたから、IMCの傘下に入ったとき、「非上場になったのだから、もう市場の評価は要らないでしょう」と言われ、あえて在庫を増やすようになった当初は、やはり大きなカルチャーギャップを感じました。


■なぜ震災から短期間で復旧できたのか

 新工場は11年2月の時点で工場そのものは完成していました。あとは機械を入れるだけ、というときに震災が起き、3月に予定していた工場完成式典も11月まで延びてしまいました。新工場は本格的に稼働し始めましたが、一部はまだ修理をしている状態です。修理が完了して、もともと震災前に持っていた新工場のコンセプトに基づいた生産に戻り、効果効率を上げることが当面の目標です。

 バフェットさんは「たった8カ月で」と驚いておられましたが、実際には震災から1カ月後には生産を始めていました。震災後、工場内施設の診断や、使いものにならなくなったパイプの交換、そういった下準備を終えたあと、全従業員を集めました。福島県のいわき地区は、契約社員を含めると約1000人ほどになるのですが、この従業員のマンパワーが、スピード復旧のために一番効果的だったと思います。そして先ほどお話ししたように、中間在庫をたくさん持っていたのも、早く復旧できた理由のひとつになります。

 やはりタンガロイのビジネスの中核はエンジニアリングです。優秀なエンジニアを集めることは、将来への発展において、一番のキーになると思います。以前、関東にいるときは比較的リクルーティングがしやすかったのですが、福島のいわき市でのリクルーティングというと、やはり多少不利になる面があると考えています。これが今後私たちの課題になるのでしょう。ただ、私たちはすでに、東北の大学との関係をより緊密にしようと動いています。彼らの技術はもちろん、彼らから始まる新しい関係なども視野に入れて、新しい雇用に繋げられたらと思い、会社としても教育や福利厚生に力を入れています。
 バフェットさんにも「もしも私がエンジニアだったら、タンガロイで仕事をすることを選ぶ」と、公式にコメントを発表してもらうことができました。世界のバフェットさんの言葉ですから、説得力があります。これ以上に頼もしいことはありません。

 

OBARA GROUP <6877>  株式投資

  業績修正のOBARA GROUP <6877> は、46円高の1066円と反発。1日(火)15時に今9月期の中間期と通期について修正を発表した。

  中間期では、売上は従来予想を13億円下回るものの、営業利益で3億5000万円、純益で5000万円、それぞれ上回る。修正後の営業利益は18億5000万円(前年同期20億7800万円)の見通し。一方、今9月期通期についても、売上は10億円下回るものの、営業利益で7億円、純益で5億円それぞれ上回る。

  修正後の通期営業利益は35億円(前期43億3800万円)。前期比19.3%減益とはなるものの当初の35.3%減益に対しては減益率が縮小する。予想1株利益は133.8円の見通し。溶接機器関連事業においてアジア地域での業績が順調に推移したため。配当は年20円の予定。

  株価は年初来高値1144円(3月30日)に対し高値圏にある。利回り1.87%、PER7.9倍と割安な点が注目される。とくに、1180円前後のフシを抜くとチャートでは2000円どころまで売物の少ない真空地帯。狙い場といえるだろう。

 

中国「世界の工場」終焉か  株式投資

 「世界の工場」とされた中国から企業の撤退や事業縮小が始まっている。背景にあるのは人件費の高騰が大きいが、中国独自のさまざまな規制や参入障壁、参入後の競争の激化に知的財産権の問題なども残る。

 ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が、米国を拠点とする製造業106社を対象に調査したところ、全体の37%の企業が「中国からの製造拠点の移転を計画、または積極的に検討している」と回答。売上高100億ドル(約8150億円)以上の企業では、48%がそう答えたという。

■米国では「回帰」で300万人の雇用創出と試算

 BCGによると、中国に進出している企業の大半が「中国の人件費は上昇し続ける」とみており、さらに日本や欧州といった先進国と比べても米国の人件費は安くなりつつあると指摘している。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)はこれまでメキシコと中国にあった家電の製造拠点をケンタッキー州に戻した。BCGは競争力のある製造拠点を米国に置くことで、向こう10年間で最大300万人の雇用創出が見込めるとしている。

 日本でも中国からの撤退・事業縮小の動きは、すでに起こっている。

 「洋服の青山」を展開する青山商事は、現在75%ある中国の生産比率を3年後には50%に縮小する計画だ。中国製の「安さ」を売りものに紳士服の販売を伸ばしてきた同社も、「人件費の高騰」を理由にあげるており、今後はベトナムやカンボジア、インドネシアなどに縫製部門を移す。同社は「中国からの撤退ではなく、一部を移転するだけです」と話している。

 アパレルでは「ユニクロ」を展開するファーストリテイングも、中国以外での生産規模を拡大する傾向にある。

 富士ゼロックスは、年内をめどに商業用の高速デジタル印刷機の生産を、中国から新潟工場に移管する。中国での生産は量産品に特化。同社は、「新潟工場の生産効率が上がってきたこともあり、まずは1機種を移すことにしました」と説明。他の機種も状況をみながら検討する。

■規制や知的財産権が「壁」に

 いち早く、2011年3月に「撤退」を決断したのが、ゼネコン大手の大林組だ。中国の経済成長による建設ラッシュを背景に進出したが実績は上がらず、原因は「ライセンス制度」にあった。

 中国には、大規模なビル建設のほか、鉄道や道路などの大型案件を受注するのに必要な「特級」から、ビルの階数によって1〜3級までの4段階に建設の「ライセンス」を制限する独自の規制がある。しかも、外資系には実質的に門戸が閉ざされているため、「受注できるプロジェクトの範囲が狭かった」という。

 ただ、同社は「中国市場を否定しているわけではない」と、今後の再進出に含みを残す。

 最近では、インターネット大手の楽天が2012年4月20日、中国のネット検索大手の百度(バイドゥ)との合弁事業として、中国本土で手がけているショッピングモール「楽酷天(らくてん)」のサービスを5月末で終了すると発表した。

 「楽酷天」は10年10月に日中の約2000の業者が出店しスタートした。しかし、中国では昨年から電子商取引への投資熱が高まり、同業他社との競争が激しくなったことでバイドゥと協議。その結果、大幅な改善は難しいと判断し、わずか1年6か月での撤退となった。

 ネット事業をめぐっては、米検索大手のグーグルも、中国本土向けサイト「Google.cn(グーグル中国)」のサービスを打ち切った。

 外資系企業の多くは、中国の知的財産権の保護は不十分であると考えている。ある企業は、「中国は海外企業の技術を奪い、これらの技術を中国国内や海外市場で利用している」との不満を漏らす。

 日本貿易振興機構(JETRO)は、「中国はいまも投資(進出企業)のほうが伸びている」というが、企業に不信感が募っていることは間違いない。

 

薬学部生が空前の売り手市場  株式投資

 大学生が厳しい就職環境にあえぐ中、薬学部生が空前の売り手市場となっている。

 6年制移行のために2010年、11年に卒業生が途絶え、人材供給が止まっていたためだ。今春卒業した6年制の1期生には求人が殺到。大学からは「特需はいつまで?」といぶかる声も上がるが、ドラッグストア業界や調剤薬局の採用熱はまだ高い。

 ◆「別世界」

 日本大薬学部(千葉県船橋市)では今春の卒業生の就職率はほぼ100%。6年制移行前は8、9割だったが、今年は4月に入っても、沖縄県など人手不足の地方の病院などから求人が来るという。担当者は「2年間のブランクのためで、特需のようなもの」と語る。

 他大学も事情は同様。横浜薬科大(横浜市)の担当者は「就職先に人気があるのは、病院などだが、規模を拡大しているドラッグストアの求人が多く、薬剤師免許を取って職に就けない学生はいない」と話す。

 城西国際大薬学部(千葉県東金市)でも、3月に就職活動を始めた学生が、4月から職に就けた。教授の一人は「世間の就職情勢からすれば別世界」と驚く。

 今月、大手ドラッグストアの面接を受けた昭和薬科大の学生(23)は「4月前で5年生なのに、就職先が事実上決まった薬学部生もいる。人気のある製薬会社は別にしても、就職試験で落ちるのがおかしいぐらい」と話す。

 大学の薬学部は06年入学生から6年制になった。このため、薬剤師国家試験合格者は4年制最後の入学生の大半が卒業した09年に1万1301人を数えたが、10年が3787人、11年が1455人と激減した。

 

日銀の追加金融緩和への期待  株式投資

 来週(23−27日)の東京株式市場は、日銀の追加金融緩和期待を支えにしっかりした展開か。「FRB(米連邦準備制度理事会)がQE3(量的金融緩和第3弾)を実施するにしても6月以降、日銀は次回会合で追加緩和を実施、これが市場コンセンサス」(国内投信)。ふたを開けてみなければ分からないが、27日の日銀金融政策決定会合までは下値の限られた展開が続きそうだ。

 また、国内では日電産 <6594> 、コマツ <6301> 、ソフトバンク <9984> 、任天堂 <7974> など国内企業の決算発表も本格化する。前期の反動が見込まれ、相場の支えになるとの期待も高い。また、日経平均株価の13週移動平均線割れで調整の可能性が指摘されているものの、個別株物色の様相が強まるようであれば、全体的に動きの鈍い展開となりそう。前向きに捉えれば、大幅な値幅調整に発展する懸念も後退する。

 ただ、来週は24日、26日、27日にイタリアで国債入札があり、欧州債務問題に対する警戒感が強まるようであれば、波乱の恐れがある。

 

数学受験の文系大卒は高収入  株式投資

 大学入試で数学を受験した文系出身者は、大企業に就職して高収入――。

 京都大、同志社大などの研究者グループが約9000人を対象に行ったインターネット調査で、そんな結果が明らかになった。数学になじむと論理的な思考が身に着き、様々な仕事に適応できるのだという。

 グループは2011年2月、国内の国公立、私立大や海外の文系学部を卒業した20歳代〜70歳代の働く男女に調査した。その結果、数学受験者の40%が大企業に就職していたのに対し、受験しなかった人では34%。数学受験者の平均年収は532万円で、未受験者の443万円を大幅に上回った。

 一方、理系学部出身者4000人を対象にした別の調査でも、生物や化学より高い論理性が要求される物理を得意とした人は、年収が高かったという。


 

NTT ソフトバンク セブン&アイ  株式投資

 企業の決算発表が本格化してきた。4月上旬から中旬にかけてスーパーや外食など2月期決算の流通各社が続々と公表する。下旬には3月期決算の発表がスタート。1年に1度の“企業の通信簿”だけに市場は目の色を変える。とりわけ注目されるのが本業の儲けを示す営業利益だが、今年は上位ランキングが激変しそうだ。

「各企業が予想する数字を見る限り、順位は大幅に変動します。昨年の大震災後にどんな対応策を取ったか。それが試される決算になりそうです」(市場関係者)

 最も稼いだのは唯一1兆円を超えたNTT。以下、NTTドコモ、ソフトバンク、国際石油と続く(記事末尾を参照)。

 自動車や電機は東北に集中していたサプライチェーンの崩壊やタイ洪水被害、円高が重なり営業利益を大きく落とした。トヨタ自動車は、昨年度(10年度)に4600億円を稼ぎランク8位だったが17位に下落。ピーク時に2兆円を超える営業利益を叩き出していた栄光は見る影もない。ホンダも4位から24位まで転落した。気を吐いたのが日産で、震災後、ライバルが国内販売台数を10%以上も落とすなか、2%程度の下落で踏ん張った。07年の中越沖地震以降、災害対策本部でさまざまなシミュレーションを行ってきた成果だ。

 家電業界は総崩れの状態にある。2000年代半ばに3000億〜5000億円を稼いでいたパナソニックやソニーは赤字予想。もちろんランク外だ。

 第一生命経済研究所首席エコノミストの嶌峰義清氏が言う。

「経済の動きの変化についていけなくなった企業が利益を減少させています。逆にデフレや少子化といった流れをうまくキャッチした会社は増益基調にあります」

 セブン―イレブンを傘下に置くセブン&アイの稼ぎっぷりはすごい。会社予想は前年比17.5%増の2860億円だが、「利益は3000億円を超えてくる」(証券アナリスト)。低価格PBを次々と投入し、新規客を取り込んだことが大幅増益につながった。ランキングも前年の18位から13位に上昇だ。

 中国市場を開拓したコマツは前年比26.5%増で22位から14位にアップ。資源高や原油高が追い風の総合商社も順位を上げている。

 大震災を乗り越えて大儲けする会社は、どこか違う。

【トップ25社(11年度)】

◇順位/前年比較/社名/営業利益(予想)/伸び率

◆1/→/NTT/12500/2.9%

◆2/→/NTTドコモ/8700/3.0%

◆3/→/ソフトバンク ※/6700/6.5%

◆4/↑/国際石油開発帝石/6580/24.2%

◆5/→/日産自動車/5100/▲5.1%

◆6/↑/KDDI/4750/0.7%

◆7/↑/日立製作所/4000/▲10.0%

◆8/↑/キヤノン ※※/3780/▲2.4%

◆9/↑/三井物産 ※/3700/1.7%

◆10/↑/三菱商事/3600/13.9%

◆11/↑/JR東海/3580/2.5%

◆12/↑/JR東日本/3470/0.6%

◆13/↑/セブン&アイ HD/2860/17.5%

◆14/↑/コマツ/2820/26.5%

◆15/↑/伊藤忠商事/2800/9.3%

◆16/→/武田薬品工業/2700/▲26.4%

◆17/→/トヨタ自動車/2700/▲42.3%

◆18/↑/住友商事 ※/2650/32.7%

◆19/→/JX HD/2600/▲22.2%

◆20/↑/ファナック/2360/24.4%

◆21/↑/東燃ゼネラル石油 ※※/2161/544.8%

◆22/→/三菱電機/2100/▲10.2%

◆23/↑/イオン/2050/18.9%

◆24/→/ホンダ/2000/▲64.9%

◆25/→/東芝/2000/▲16.8%

営業利益は会社予想、単位=億円。ただし※は「会社四季報」(東洋経済新報社)予想。※※は11年12月期実績


 

Facebook  株式投資

インターネット交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックが上場先にナスダック市場を選んだことが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)など複数の米メディアが5日報じた。5月にも上場する見通し。

 フェイスブックは今年2月に米証券取引委員会(SEC)に株式の新規公開を申請し、ナスダックかニューヨーク証券取引所に上場するとしていた。

 ナスダックは、アップルやグーグルなど有力なIT企業が多いことなどもあり、上場先として選択されたようだ。

 フェイスブックの上場は2004年のグーグルを抜き、ネット関連企業では史上最大規模とされ、市場や投資家の注目が集まっている。上場時の株式時価総額は最大1000億ドル(約8兆3000億円)規模に達する可能性がある。


 

欧米の太陽光発電ビジネス  株式投資

 欧米の太陽光発電ビジネスを“暗雲”が覆っている。今月2日に米カリフォルニア州でメガソーラー発電所を手がけていたソーラー・トラスト・オブ・アメリカが経営破綻。3日には、かつて太陽電池で世界トップメーカーだったドイツのQセルズも破綻した。中国メーカーの安値攻勢に加え、ドイツでは電力会社による買い取り価格の大幅な引き下げも予定されており、事業環境は厳しさを増すばかりだ。日本では今年7月から固定価格による買い取り制度が導入されるが、現在進んでいる価格設定の議論にも影響を及ぼしそうだ。

 日本が太陽光発電の普及で先行事例とするドイツは、2000年に再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る制度を導入。太陽光は、風力に比べ5倍近い高い価格が設定され、設置が大ブームとなった。

 しかし、割高な買い取り価格が電気料金に転嫁され、家計や企業の負担が増大したことで、段階的な引き下げを実施。今月から新設の太陽光発電の買い取り価格を一気に約20〜30%引き下げる法案が議会で可決された。

 Qセルズは、買い取り制度を追い風に08年に太陽電池の世界シェアで首位に立ったが、「太陽光バブルの崩壊」で資金繰りに行き詰まった。

 米国でも低価格の中国製パネルの流入や欧州での普及一巡で昨年以降、太陽電池メーカーの破綻が相次いでいる。ソーラー・トラストも、ドイツの親会社の破綻から事業継続が困難になった。

 これに対し、日本では欧米に比べ、太陽光の普及は大きく遅れており、昨年8月に成立した「再生エネルギー特措法」に基づき、今年7月から再生エネルギーによる電力の買い取り制度が導入される段階だ。

 現在、経済産業省の有識者委員会で、太陽光や風力などエネルギー別の買い取り価格を算定する作業を進めている。

 3月19日の会合では太陽光発電の業界団体が1キロワット時当たり42円の買い取り価格を要望したが、風力や地熱に比べて2倍近い価格になった。価格が高ければ、普及は促進されるが、料金への転嫁で負担は重くなる。欧米のようなバブルの懸念も拭えない。

 普及促進と負担のバランスが課題となるが、資源エネルギー庁幹部は、欧米の現状を踏まえ、「買い取り制度で安定的に普及させることは見かけほど簡単ではない」と話している。


 

スマートフォンの無料通話ツール  株式投資

スマートフォンの無料通話ツールが人気だ。「スカイプ」や「ライン」など多くのアプリがある。この普及により、携帯電話キャリア各社の収益が下がっているということだ。「スカイプ」などのアプリは、インターネット上で音声データをやり取りすることで各キャリアへ電話代がかかることなく、会話を行うことができる。利用者にはパケット代がかかるため、パケット代使い放題というプランを選んでいる場合その他の費用がかからないのだ。

利用者にとってはうれしいサービスなのだが、各キャリアは通話料の収益が落ちているということで、頭を抱えているということ。

スマートフォンの普及は、キャリアにとってもビジネスのあり方を考えさせる問題のようだ。


 

KDDIの新戦略  株式投資

アプリ取り放題! KDDIの新戦略 利用拡大余地に照準

KDDIは3月1日に新サービス「auスマートパス」を開始。この日は記念イベントが開かれ、高橋誠専務(右)やCMに出演する女優の剛力彩芽さんが登場した=東京都渋谷区(写真:フジサンケイビジネスアイ)
 スマートフォン(高機能携帯電話)市場をめぐる大手携帯3社の戦いが新たなステージに入りそうだ。スマホ普及の先陣争いで後手に回り、2011年4〜9月期の移動体通信事業の営業利益でソフトバンクに初の逆転を許したKDDI(au)が、市場競争の第2幕への「ゲームチェンジ」(田中孝司社長)を宣言。スマホ普及を前提に、契約者1人当たりの収入の最大化を図る新機軸のサービス戦略を仕掛け始めたからだ。サービス満足度の向上は契約者の囲い込みにもつながる見込みで、KDDIは利用拡大期の機先を制し、スマホ時代の主導権奪取を狙っている。

 月額390円で、スマホ向けアプリ(ソフト)が取り放題。KDDIが新サービス戦略「スマートパスポート構想」の第1弾として、今月1日から始めた破格のアプリ配信サービス「auスマートパス」が好調な滑り出しをみせている。ゲームや辞書など総額5万円を超える500以上のアプリを好きなだけダウンロードできるお得感から、27日にはサービス加入者が50万人を突破。既存のスマホ契約者数とほぼ同数の約400万人を想定する1年〜1年半後の目標に向け、順調に加入が増えているという。当初は年間70億円の経費の持ち出しが見込まれるが、「赤字覚悟」(高橋誠専務)の裏には新たな収益成長への深謀遠慮がある。

 スマホは、アプリの取り込みでさまざまなIT(情報技術)サービス・機器と連携できるのが特徴で、機能的には電話よりパソコンに近い。このため従来携帯に比べてデータ通信利用の頻度が高く、ソフトバンクはその収入の伸びを源泉に収益力でKDDIを追い上げてきた。

 ◆ソフトバンク脅かす

 ただ、米グーグルがモバイルマーケティング協会などと共同で昨年3〜7月に実施した世界のスマホ利用状況の調査によると、過去30日間に使用したアプリの数は、米国や韓国、フランスの10以上に対し、日本は8にとどまる。auの契約者でも、「アプリの平均ダウンロード数は10に満たない」(新規ビジネス推進本部の繁田光平課長)のが現状といい、急速な普及の中で多くの利用者はスマホを十分に使いこなしていない。

 また、民間調査会社のトレンド総研(東京都渋谷区)が2月、20〜39歳の500人を対象に実施した調査では、興味のある有料アプリについて、71%が「料金を理由にダウンロードしなかった経験がある」と答えている。

 裏を返せば、スマホ機能の本格利用期はこれからで、データ通信収入の拡大余地はまだまだ大きい。料金体系を含め、利用者ニーズに合致したアプリ提供モデルを確立できれば、データ通信収入の大幅な上積みに道が開ける。KDDIはそこに、ソフトバンクに対する再逆転の照準を定めている。

 現在のスマートパスのサービス対象は、グーグルの基本ソフト(OS)搭載のスマホに限られるが、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」や、タブレット端末への対応も検討中だ。アイフォーンへの対応が実現すれば、米アップルの専用配信サイト「アップストア」を重視し、アプリ販売を手がけていないソフトバンクも、戦略の再考を迫られる可能性もある。

 ◆回線の垣根超え

 一方、KDDIの新サービス戦略の矛先は、スマホ市場だけにとどまらない。

 田中社長は新サービスを「『(インターネットの)オープンで、制約のない世界』へのパスポートにしたい」と話し、加入者に発行した「ID」を、固定や携帯の回線を問わず、同社が今後、展開する多様なネットサービス利用の共通カギとする方針。これによって契約者の利便性向上を図る一方、回線の垣根を超えた総合力で収益をとらえる新たな経営モデルへの脱皮を進める構えだ。

 先月から予約受け付けを始めた固定通信とスマホのセット割引「auスマートバリュー」はその新発想の先駆け。NTT東日本が、自社の固定回線と通信ベンチャーの日本通信のデータサービスを組み合わせる対抗措置に乗り出すなど波紋が広がっており、KDDIが仕掛ける「第2幕」は通信業界のビジネスモデルを変えていくかもしれない。

 

スーパー「世界ビッグ3」  株式投資

イギリスのテスコ、フランスのカルフール、アメリカのウォルマート――。圧倒的な調達力と優れた小売り技術を持つ彼らが、日本では苦戦を強いられたのはなぜか。

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■イギリスの綿が日本を席巻できなかった理由

 現在、静岡県知事を務められる川勝平太氏には、『日本文明と近代西洋──「鎖国」再考』(NHKブックス)という名著がある。明治初期のわが国近代工業の曙をテーマとするものだが、内容はわくわくさせる面白さがある。
 イギリスに100年遅れてスタートした明治期の日本の近代化。当のイギリスは、産業革命を契機とし綿工業の生産力を高め、19世紀から20世紀にかけて世界の市場に進出した。その圧倒的な力による攻勢に耐え、逆にアジア市場で主導権を奪ったのは日本の綿工業であった。100年遅れてスタートしたにもかかわらず、日本の綿工業は、どうして巨大な生産力と販売力を併せ持ったイギリス綿工業に対抗できたのか。不思議な話だが、川勝氏は、その秘密を解き明かす。

 結論だけ言うのも無粋な話だが、決め手となったのは、日本をはじめとする東アジアの衣服における文化・伝統による障壁の存在であった。同じ「綿」と言っても、生活における使い方や役割は、西欧と東アジアとでは大きく違っていた。イギリス産綿布は、いわば夏物といってよい薄地で、絹のごとくすべすべしていた。他方、国産綿布は堅牢で、冬の寒さを防ぐ厚地であった。
 この品質・用途の違いのために、イギリスの綿はその生産力にもかかわらず、日本・東アジア市場を席巻できなかった。世界の先進国へと駆け上がるのに力を与えた日本の綿工業が離陸するうえで支えになったのは、何世紀もの長い時間を経て育て上げた東アジアの衣服文化の伝統であったというわけなのだ。

 同じことは、21世紀の現代にも起こっている。欧米の小売企業が、なかなかわが国市場に進出・定着できず、逆に撤退する大手が目立つが、その一因はここにありそうだ。
 最近、テスコが撤退を表明した。同社は、イギリスを本拠地とする巨大スーパーマーケット・チェーン。売上高は7兆円を超え、日本のビッグツーのイオンやセブン&アイを大きく凌ぐ。アジア、欧州、北米の14カ国で店舗を展開し、日本には2003年に参入した。スーパーマーケットTESCOのほか、食品店「つるかめランド」を運営した。TESCOは、これまで8年間、日本の小売市場での定着を図ったが功を奏さず。採算が取れない日本での事業を売却することになった。

 同社は、CRM(顧客管理)の優れた手法を持っていることで有名だ。ポイントカードの購買履歴を使い、きめ細かい顧客分析を行って、購買傾向や好みを把握し、それを店頭の品揃え・陳列、プロモーションや顧客へのダイレクトメールに生かすことで集客力を高める手法である。日本でも、そうした試みをする先進的小売企業は少なくないが、そのお手本となっている。日本でその手法がどれだけ通用するのか見たかったのだが、使いこなすまでに至らなかったようだ。


■コモディティではなくブランドで選ぶ日本人

 世界で活躍する大手小売企業も、日本では苦戦する。こと食品に限定しても、世界2位のフランスのカルフールは7年前に撤退した。世界1位のアメリカのウォルマートも、なかなか調子が出ない。最近ようやく、西友を完全子会社にして巻き返しを図る。
 彼らは、圧倒的な規模を背景として世界的な調達力と優れた小売り技術を持っている。それにもかかわらず、わが国では橋頭堡さえ確立できない。なぜか。

 その理由として、もっとも重要と思われるのは、日本の生活者の食文化にありそうだ。われわれは、ほぼ毎日、鮮度の高い食材(生鮮3品と言われる鮮魚、肉、野菜・果物)を食べる。しかも、一口に鮮魚といっても、地域によって異なる多彩な産品と、季節ごとに異なる旬のものがある。野菜も、地域ごとに食する種類は大きく異なり、また季節ごとに食する種類は異なる。生鮮3品における「鮮度と多様性と旬」の存在は、わが国の伝統的小売業を形づくる基礎的要因だ。戦後生まれたチェーン経営を軸とする食品スーパーも、実のところこの「鮮度と多様性と旬」の壁をなかなか越えることはできなかった。スーパーマーケットが出始めた頃、1960年代から70年代にかけて、「スーパーは、安かろう、悪かろう」と言われたが、それはこの壁を越えることができなかったせいである。

 それを打ち破ったのは、関西スーパーでありサミットストアであった。彼らは、店舗内に広いバックヤードをとり、個人の職人技としてではなく組織として生鮮を扱う設備技術やノウハウを蓄積した。80年代のことである。その時期を境にして、それまで「鮮度と多様性と旬」の扱いにおいて圧倒的な優位を誇ってきた小売市場や商店街の生鮮3品の商店が、上記の食品に特化したスーパーマーケットとの競争に苦戦することになる。

「鮮度と多様性と旬」のある商品を扱うための技術に加えて、もう一つ、速い商品回転率の経営を確立する必要がある。加工食品や日雑商品のように本部で一括して大量・安価に仕入れて、チェーン各店で売り減らすという手法は、この種の商品には通じない。できる限り在庫を切り詰め、次々に商品に入れ替えるスピードがカギになる。

 商品回転率志向の経営は、だが、世界の大手小売企業の目指す方向ではない。たとえば、世界のウォルマートと日本でポジションを確立したイトーヨーカ堂の回転率の違いを見ればわかる。02年のデータの比較だが、在庫回転率では、イトーヨーカ堂のほうが倍くらい高い。他方、販売管理費ではウォルマートが、売上高割合で10%ほど低い。この結果を見ると、ウォルマートが調達力とコスト削減力を背景にして競争優位を確保する経営であること、そしてイトーヨーカ堂は速い商品回転率で勝負していることがわかる(スレーター『ウォルマートの時代』日本経済新聞社)。回転率におけるこの大きな違いは、同じ小売業と言っても、やり方に根本的な違いがあることを示すものである。世界の大手小売企業が日本に適応しようと思えば、自らが展開してきた経営の流儀を根本から変えないといけないということになる。

 日本の生活者は、食べ物の「鮮度と多様性と旬」を評価する。その結果、第一に、独特の買い物行動が生まれる。鮮度の高い食材を求めて、ほぼ毎日買い物に出る。自家用車と大型冷蔵・冷凍庫という大量購買・長期保存の手段がほとんどの家庭に普及したが、高い買い物頻度の習慣はそれほど変化しない。

 第二に、食への繊細な好みを背景にブランドが食を支配する。魚とか肉とかといった大雑把な「コモディティ・レベル」で食材を選ばない。もっと繊細なレベル、たとえば神戸の霜降り、京の野菜、明石の魚、泉州の水ナス、新潟のこしひかりといった、いわば「ブランド・レベル」で識別する。それらブランドへの信頼は、強まりこそすれ、薄れる気配はない。

 こうした食文化が、独特の小売り活動を要請する。第一に、日々変化ある店頭への要請。それに応えて、小売店での商品入れ替えスピードは速い。第二に、地域ごとに異なる食材ニーズに応える店対応への要請。ローカル・スーパーが大手総合スーパーに対して互角の勝負をしているのは、故なしとはしない。「標準化された商品の週に一度のまとめ買い」や「Every Day Low Price」を標榜する欧米大手小売企業の戦略では、そうした要請に応えることはできない。
 食文化の伝統は、まさに独自の小売業を生み育て、そして海外からの参入の天然の要塞となって守っているのである。




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