出産が始まりました。
自分自身がクローンであるトメ吉は出産がどういうものか分かりません。
ですから隣村から、お産婆さんに来てもらいました。
しかし、お産婆さんは宇宙船の内部に連れて来られると
鬼の棲家(すみか)じゃ!
と言って腰を抜かしてしまいました。
お産婆さんが驚くのも無理は有りません。
だって地球は今から4百年前です。
日本では江戸時代がやっと始まった頃です。
そんな訳で出産はトメ吉が面倒をみなければいけません。
お産婆さんの指示に従い妊婦さんの様子を観察しました。
妊婦さんは可なり危険な状態です。
それに代々クローンで世代交代を繰り返してきたので出産に使用する体の機能は凄く退化しています。
これは無理じゃ
お産婆さんは悲しそうな顔をして言いました。
産みます、私の命に代えても
ベッドの上で苦しむ妊婦(生き残った隊員)が弱弱しく言いました。
その時、偶々遊びに来たサンジェルマン伯爵が
帝王切開という方法が有る
と提案しました。
それはトメ吉も知ってはいましたが経験は有りません。
お願いします…
妊婦はそう言うと息を引き取りました。
やるしかないだろ
伯爵はトメ吉に迫りました。
手術は直ぐに始まりました。
妊婦のお腹にメスを当て、スーッっと引っ張りました。
妊婦は、もう死んでいるので余り出血はしません。
一刻も早く取り出さないと赤ん坊も母親と一緒に死んでしまいます。
伯爵は母体から子宮ごと取出し赤ん坊を傷付けないよう注意深くハサミを入れました。
子宮から取り出された赤ん坊は青白い顔をして呼吸が止まっていました。
ダメか…
トメ吉が呟きました。
ダメなもんか
赤ん坊の尻を叩かんかい!!
腰を抜かした、お産婆さんが怒鳴りました。
そんな乱暴な
トメ吉が言いました。
なんでもええ、早く尻を叩かないと本当に死んでしまうぞ!
お産婆さんが両手を振りながら言いました。
やってみよう
伯爵が言いました。
トメ吉はピクリとも動かない赤ん坊のお尻を撫でるように優しく叩きました。
ダメじゃダメじゃ!
もっと力を入れて
お産婆さんが怒鳴りました。
トメ吉は心を鬼にして赤ん坊のお尻を叩きました。
赤ん坊は弱弱しく泣き始めました。
もう大丈夫じゃ
お産婆さんが言いました。
この赤ん坊を貰えないか?
妻(細川ガラシャ)が寂しがっているんだ。
伯爵が言いました。
そして赤ん坊は伯爵の住む青森(当時は陸奥の国)の村に連れて行かれました。
−続く−