ガラシャ夫人が喜んだのは言うまでもありません。
赤ん坊は『お雪』と名付けられ百姓の娘として育てられました。
名前の通りの色白で美人の娘に成長した、お雪でしたが活発な性格のうえに村一番の力持ちで10才を過ぎた頃には村の男の子たちを従えてガキ大将となっていました。
そんな、お雪をガラシャ夫人は喜びましたが伯爵は、お気に召しません。
彼にとっての女性の条件は可憐でなければなりません。
それに気になる事がひとつ…
お雪は元々長い宇宙旅行をするため低体温で仮眠を取り老化を抑えるように改造されたミュータントから生まれたため極度の暑がりです。
その為矢鱈と裸になりたがるのです。
7つや8つの小さい頃ならいいのですが13才になり体形も大人になり掛けているのに人目を気にせずに裸になるので周りの人は堪りません。
そんな訳で伯爵は親友の冬将軍に、お雪を預ける事にしました。
彼なら北半球が夏の時には南半球に、そして南が夏の時は北にという具合に寒い所ばかりが仕事場ですから、それに半年に1回は陸奥の国に里帰りできますからガラシャ夫人も渋々承諾しました。
或る冬の事です。
お雪は自分の生まれた明神池にあるトメ吉の宇宙船に遊びに来ました。
そこには亡くなった母親のホログラムが有るからです。
伯爵やガラシャ夫人は優しくしてくれますし冬将軍も親切です。
でも矢張り産んでくれた母親の最後のメッセージは彼女に取っては大切な宝物です。
このホログラムは精巧にプログラミングされていてお雪の問い掛けに応えてくれます。
だから悩みなどの相談にも乗ってくれます。
今日も悩みの相談です。
実は武蔵の国に好きな男性が出来たのですが上手く打ち明けられません。
男性の名は蓑吉といい多摩川の近くの百姓です。
出合ったのは冬将軍の手伝いで北の寒気を武蔵の国に運ぶ途中で偶然立ち寄った船着き場の小屋でした。
お雪は少し遅い夕食を小屋でとろうと舞い降りると中で苦しむ老人を発見しました。
老人は酷く苦しんでいました。
疲労と寒さのせいで心臓の血管が破れていました。
放って置いても直ぐに死ぬのは分かっていましたが、余りにも苦しそうなので見かねた、お雪は老人の上に馬の乗りになり彼の顔に「ふぅー!」と息を吹き掛けました。
すると老人の体は、たちまちのうちに凍ってしまいました。
即死です
彼女には、それ以外方法が有りませんでした。
その時隣で寝ていた蓑吉が起き上がりました。
彼は一部始終を見たようです。
「見たな!」
お雪は蓑吉に向かって言いました。
そして今起きた事を誰にも言わぬように口止めをして去りました。
それは羞恥からでした。
お雪ももう18ですから人並みに恥じらいも有ります。
そして自分の恥ずかしい姿を見られた事で蓑吉に特別な感情を持つようになりました
「オラ、初めてだ!こんな気持ちは」
母親のホログラムに向かって、お雪が言いました。
「素直になることです。大事なのは」
「分かっただ、オラ明日打ち明けるダ!」
お雪はそう言って帰って行きました。
その後のお話はみなさん良く知ってますよね。
補足しますと一旦蓑吉と別れた、お雪でしたが彼が亡くなってからトメ吉が彼の体をミュータント化し死なない体に作り変え以後陸奥の国でずっと幸せに暮らしています。
雪ん子の雪子ちゃんは彼女と蓑吉の間に生まれた百人目の子供です。
トメ吉は、お雪を見る度に出産の時の事を思い出します。
そして遠い目で思い出に浸るのでした。