忙しいところを済みません!
村長さんは、ご自慢の新型BMW(とはいっても5ナンバー)を運転しながら助手席の群馬田舎ケーブルテレビ(群馬県でもマイナーな局)のディレクター(兼カメラマン)に言いました。
いえいえ、こちらこそ!
村興しに一役かえるうえに、うちの番組にも花を添えられるんですから一挙両得とは正にこの事ですよ。なあ近藤!
ディレクター(兼カメラマン)は村長さんに見え透いたお世辞を言い後ろの席の若いADにも目配せしながら言いました。
本当にその通りですね。
こんな景色のいい所他にありませんよ。
ADはとっさに振られ困惑気味に言いました。
※既に日は暮れ辺りは真っ暗です。
国道とは名ばかりの街灯も無い周りは畑だけで明かりといえば今走っているBMW(5ナンバー)のヘッドライトと星明りしか無い片側一車線の狭い道を村長さんの家に向かっている途中です。
おや?
村長さんは、そう呟くと車を止めUターンしました。
道端に17世紀ごろの古めかしい西洋貴族の格好をしたサンジェルマン伯爵が立っていました。
こんにちはチャーリーさん!
村長さんは窓を開けて言いました。
サンジェルマン伯爵はバツの悪そうな顔をして
こんばんわ…
と普段とは違って歯切れの悪い返事をしました。
悪いですね、こんな所に立たせて、今村の連中に交代させますから戻りましょう!
村長さんは、そう言うと有無を言わさず伯爵を車に乗せました。
しかし凝った衣装ですね!
まるで本物みたいですよ
ディレクターが伯爵の衣装を見て言いました。
本物です!
伯爵は不機嫌そうに応えました。
また、ご冗談を!
ディレクターは大学でフランス文学を専攻した事もあり大のフランス通です。
車内は一瞬にして険悪な雰囲気になりました。
数分後、村長さんに言われてドラキュラに変装した未来の叔父さんはサンジェルマン伯爵が立っていた場所に軽トラックで行くと座敷童がお弁当の入った風呂敷を持って立っていました。
おや!
どうしたの?
叔父さんが座敷童に言いました。
座敷童の方も驚いたように
あれ!
伯爵じゃなかったの?
※サンジェルマン伯爵は村人から『伯爵』
と呼ばれています。
村長さんが『代われ』って
叔父さんが言うと座敷童は風呂敷を解いてコンビニ弁当をひとつ取り出して渡しました。
叔父さんは夕食をとったばかりなので
あげるよ食べなさい
と優しく言いました。
そこへ河童が現れました。
悪い悪い!
川の土手を修理してたら手間取っちゃって!!
河童は申し訳なさそうに言いました。
叔父さんはダム工事で来ている作業員と思い込み
とんでもない!
忙しいところを申し訳ない!!
そういって彼に何度もお辞儀をしました。
河童にバトンタッチした叔父さんは座敷童を車に乗せて帰って行きました。
その頃、村長さんの家では伯爵とディレクターがフランスの歴史談義に花を咲かせていました。
一旦は険悪な雰囲気になったものの互いの知識の深さに感服したのです。
−続く−

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