「7.5「ピースウォーク」取材、現場最前線で見た光景(1)」
日記・雑記
こ、この野郎…………断じて許せん!!!
とにかく、まず最初に抱いた感想はそれだった。7月5日、この時期の札幌にしては強すぎる陽光がようやく西へと傾いた夕刻、デモ終着地の中島公園に迫った路上に立ちすくみ、汗まみれの身体には苦すぎる思いを、私は噛み締めていた。目の前には相変わらず、ずらりと並んだ盾にヘルメットの、機動隊――。
その約1時間前。
5000人(主催者発表)とも2200人(警察発表)ともいわれる群集で賑わった大通公園から、デモ「ピースウォーク」は、「世界でひとつだけの花」の演奏をバックに、まばゆい昼下がりの理路上へと乗り出した。先導する第一ブロックは全国各地から集まった農業組合や労働団体が中心。もっとも、参加者の大半は中高年のいかにも普通のおじさんやおばさんばかりで、お揃いの着物姿でしゃんしゃん手拍子を打ちながら進む様子はさながら村祭りのよう。大きな七夕の短冊飾りを抱えた人もいるなど、まさに「平和な行進」そのもののホンワカした雰囲気のスタートだった。
が、それを出迎える沿道の光景はスタートからあまり平和とかホンワカとかいう言葉が似合うものではなかった。というのも、公園を出てすぐの北側の歩道には、こちらもお揃いの青い帽子に黒の革チョッキをまとった警官たちが、見たところここだけで優に200〜300人ぐらいズラリと並んでいたからだ(その前を普通の速度で歩きながら通り過ぎたら、ちょうど1分ほどかかった)。街路が広くて真っ直ぐな札幌の、しかもその代表格の道路での眺めだけにそれはそれでなかなか壮観ではあった。
「……にしてもなあ」と、やはり思う。まあ、個人的にデモの取材はこのところ東京でさんざんやっているし、今さらこうした警察の過剰警備に逐一ナーバスに反応したりするものでもないが、とはいえ毎度おなじみのこうしたデモ参加者と警備とのギャップは何とかならないものですかね。そこで七夕の短冊をふってるオバチャンが「暴力的な破壊活動を行う危険分子」である可能性を想定のうえ、多額の税金を投入してこれだけの警備シフトを敷くのは、いかにG8対策だからだといっても、一般の理解は得られにくいのではあるまいか。
などと思っていたら、そんな私の理解も超える集団がオバチャンたちの背後に続いて現われた。いや、私だけでなく、おそらく居並ぶ警官たちの理解も超える存在だったかもしれない。
「
アン、アンチ! アンチ・キャピタリスタ!!」
翌日にこれを書いている今も耳の奥底に焼きついて離れない叫び声や爆発的な大音響とともに、その黒ずくめの集団が二車線の一方通行道路いっぱいに広がりながらやってきた。どうやら昨年のドイツ・ハイリゲンダムG8サミットの際に隣町のハイリゲンダムで「暴動を起こした」などと報道されたアナーキスト集団「ブラック・ブロック」およびその同類さんたちらしい。噂には聞いていたが、G8各国首脳の表情を模した被り物や奇怪なパペット類、ところ構わず振り回される黒い旗のもとでくり広げられる傍若無人の騒ぎぶりは噂以上のものがあった。
しかもこいつら(というのはあくまで親愛の意味を込めた表現)が凄いと思うのは、のっけから道路二車線ぶんをきっちり確保して堂々と押し寄せてきたことである。日本の場合、欧米でのデモのように複数車線を進路に使うデモは自治体条例などにより認められておらず、主催者側も「日本では規制が厳しくて……」と溜め息交じりにこぼしたりするわけなのだが、そんなチンケなローカルルールをこの連中は早々に実力行使でぶっ飛ばしてしまったのだった(しばらく後で日本の各国内団体による後方の集団を見に行ったところ、あまりに行儀よく整然と行進しているので、まるで葬列かと思ったくらいだ)。
で、かくなる集団に対して警察はどう対応していたのかというと、はっきり言って完全に後手に回って振り回されっぱなしになってしまったようなのであった。セクトだ労働組合だといった常連さん相手とは勝手が違い、しかもカラダはデカイわ声もデカイわ言葉もわかんないわで一体どう立ち向かったものかわからずオロオロしている様子が明らかに見て取れた。後ろからやってくる路線バスが横の車線をなかなか通り抜けできずに立ち往生する一幕もあったし、これが国内の団体だったらこの時点で逮捕者が出るのが必至の状況だったが、どういうわけか警察は終始、英語でかかれた警告文を見せつけるくらいで、あとは宥めにかかるばかりだった。
あるいはこうしたヨソ者への遠慮が“身内”への八つ当たりにつながったのか、事態は思わぬ展開を見せることになる。
びっしり並んだ機動隊員の盾が銀色の壁のごとく立ちふさがったテレビ塔前の交差点を右折し、デモは札幌駅前から続く通りを南下。繁華街のすすきのを抜ける頃までは、特にトラブルなどもなく、このまま終点の中島公園まで行くのかな・・・・・・とも思われた。
だが、やはり事件は起こった。すすき野を過ぎ、デパートの「ロビンソン」前にさしかかった頃、いきなり先導車付近から凄まじい怒号と罵声が聞こえてきたのだ。
大慌てで駆けつけ、参加者・報道陣・警官が揉みくちゃになる中をどうにか潜り込み、大音響が鳴り続けたままの荷台にいたDJに聞くと「1人逮捕された」という。前触れもなしにいきなり警官が両側から乗り込んできて、「まあいいから」とだけ言って連れ去っていったのだそうだ。
「理由は!?」「わからない!」「何かやったのか!?」「何もやってない!!」
即座には事情が理解しかねる状況だったが、ともかく、この時点では機動隊や警察官もわりとすんなり引いたことから、とりあえずデモは進んだ。が、どうやら警察がついに動き出したのは確かなようだ。すでにデモ終点は間近に迫っていたが、ここは残量の少なくなったビデオテープを取り替えておこうといったん歩道に戻り、入れ替えに少々手間取っていた――ところで、再び先導車の周囲から群集の絶叫する声が聞こえてきた。
何で俺が離れてる時にそういうことが起きんの? と歯噛みしながら、またまた揉みくちゃにされながら何とか荷台の後部に取り付くと、物が散乱した台上には既にもはや人影はなく、周囲では今や怒りの極に達した参加者と、盾を前面に抱えた機動隊員が「おまわり帰れっ!」「危ないから下がって下がって!」「ざけんじゃねーよこのやろー!!」と互いに大声でわめきながら衝突の真っ最中。ほどなく音楽も途絶えたことで、もはや事態が明らかに一線を超えてしまったことが誰の目にも明らかになった。
私はカメラを頭上にかかげ懸命に撮影を続行したが、とにかく四方八方から玉突きのごとくにどつかれまくるわで立っているのがやっと。二度ほど機動隊員のヘルメットに鼻先がぶつかってメガネがずり落ちた。それでもようやく荷台後部の右端に出ると、おりしも十数人の警官たちが運転席の周囲に群がり、中にいる人間を引きずり出そうとしているではないか。しかし、行く手には若い童顔の機動隊員が盾を持って立ちはだかり、「危ないから下がってください!」と言う。
「危なくない! どけ!」と私は鼻先30センチくらいの距離にあった彼の顔めがけて怒鳴った。「これは報道だ! 君たちがやってることを取材しに行くんだ!!」
すぐ横にいた先輩格と思しき隊員が「よけいなことは話しかけるな!」と注意した途端、若い隊員は空ろな目で黙り込んだ。
そうこうするうちに何人かがカメラを片手にトラックの荷台へとに上がり込んでいった。一瞬躊躇ったが、旧知の「FMわぃわぃ」代表・日比野純一が乗り込むのを見るや、私も構わず転がり込むように上がり、荷台上から、まさに運転手が20〜30名の制服警官によって連れ出されていく様子をカメラに収めた。運転手は完全にのびてしまっているらしく、連れて行かれるというよりは完全に手足をがんじがらめにして「拉致される」といった状況だった。
「ケーサツ帰れ! ケーサツ帰れ! ケーサツ帰れ!」
「ふざけんなーーーーーーー!!!」
と口々に、あるいは持参の楽器を盛大に鳴らしながら激しく抗議を続ける参加者らの頭上から、監視車上の警官が拡声器で容赦なく警告を発していた。
「警察官に抗議をするな! ただちに行進に戻りなさい! ただいまの時刻、午後4時10分!」――。
(つづく)
(
「G8 Media Network News」7月6日付より転載)