夜明けと共に城主より騎士の称号を授与されることになったキホーテは、一晩断食をし城の中庭にて祈祷をしながら静かに語る。
「日は沈みて時経ち、ラ・マンチャの家々やバルコニィを夜のとばりが包みし頃、ドン・キホーテは慎重なる足取り、高尚なる面持ちにて、大いなる城の中庭において祈りを仕りき!」
ここで彼は自分の声に勿体ぶったこだまを聞き、恥じいりうなだれる。
「おお、何と空しき高慢な言葉だ。数ある夜のとりわけ今宵虚栄に屈するとは、駄目だぞ。ドン・キホーテ―人生の息吹を深く吸いこんでいかに生きるべきかを考えよ。」
そしてこう続ける。
「己の魂以外は己のものと思うなかれ。現在の自分は愛さず、将来の自分を愛せよ。快楽のみを追うな、常に先に目を向けよ。今年の巣に去年(こぞ)の鳥は居らぬものなればなり。男には公正であれ、女には丁重であれ。」
そして想い姫を想いこう言う。
「その人の幻のなかに生きよ。その人のためにこそおおいなる勲しを…その人の名はドルシネア。」
役者としての生き方にとどまらず人としての生き方の根本を問う言葉だ。
現実は必ず変わるものと信じて真実を求めていく、僕もその一人でありたい。