聖闘少女資格喪失〜ノーザンクラウンのカティア

  | 投稿者: 月華守屋

セインティア翔より冠座。ノーザンクラウンのカティアさんに資格を喪失していただきました。

聖闘少女の資格が「処女であること含め乙女であること」というのは無力化するには凌辱すればいいということですよね。
彼女はアテナのために寝返ったフリをしていたとありますが、エリスの「願いの毒」に犯されていたともありますし、どちらでしょうね。

任務中にエリスの軍勢に襲われたところを助けられたカティアは、教皇に対して忠誠を誓っていた。悪夢から目覚めたカティアは胸騒ぎに従って教皇の元へと向かい、悪夢の続きが始まる。




 聖闘少女――セインティア。
 それは処女神アテナの傍にあって身の世話をする特別な役割を持った女性聖闘士。従来の女性聖闘士は女であることを捨て、仮面を被るが特例として女子のまま聖闘士として認められる。
 聖(セント)・アカデミーでの全ての課程を修了、且つ純潔で高い素養を持った完全な女子数名のみに聖闘少女としての資格が与えられる。
 これは、そんな少女戦士達の汚れし記録。

 * * *

 全身を稲妻に撃ち抜かれたような衝撃に、カティアは膝をついて、そのまま体を支えることができずに前のめりに倒れた。常人ならば死んでいるであろう一撃も聖衣の加護によってくい止められ、何とか意識は保っている。しかし、それは彼女の苦しみを長引かせているだけと言えるかもしれない。
(不覚……エリス、の……邪霊士……)
 カティアの傍へと近づいてくるのは体中に蔦をまとわりつかせた男だった。瞳は赤く染まり、肌は浅黒く、満面の笑みには意志を感じさせない。体の輪郭が歪んでいるのは、立ち昇る邪悪な小宇宙によるものだった。
「くぅ……ぐぅ……」
 カティアはどうにかして体を起こそうと上半身に力を込める。だが、普段ならば羽のように軽い聖衣が重い。見た目通りの重さが生まれたかのようで、カティアの動きを阻害する。それも、強烈なダメージによって傷ついた体を少しでも回復させるために小宇宙が燃え上がっているためで、けしてカティアの邪魔をするためではない。結果的に、彼女は逃げられずに男に首を捕まれ、持ち上げられていた。
「かっはっ……あぐ……はな、ぜ……」
 170センチの届こうかという身長は女性にしては高い。そんなカティアの姿が男の前に露わになる。
 傷ついてもなお輝きを消さない背中までの金髪。聖衣から露出し、ノースリーブのインナーから覗く肩の白さは、踏み荒らされていない雪原を想起させる。胸元の露出を押さえるために首に巻いて前へと下がったスカーフや、聖闘少女の戦闘装束であるワンピース型の白い衣服は電流による攻撃で少し汚れていたが、美しさは損なわれていなかった。
 聖衣が覆う箇所は少ないながらも、局所的に肌の露出を押さえることでカティアは処女性を保っている。これが冠座のカティアの聖衣であり、戦装束。女人禁制である聖闘士の世界で、少女のまま聖闘士として戦うことを許された聖闘少女の姿だった。
「ぐぐぐ……かかか……」
 男は呻きにも聞こえるような笑い声を発し、空いている右手を伸ばす。すると、体中に巻き付いていた蔦がカティアの方へと伸びていった。
「な、何を……あっ!?」
 蔦はカティアの首元までやってくると、スカーフを引きちぎった。聖衣では覆われておらず、鎖骨の部分まで装束と肌が露わになる。現れた素肌を舐めるように蔦はさすり始めた。
「やめろっ! 触るな! 汚らし……ぐっ!」
 カティアはどうにかして拘束から逃れようと、自分の首を絞めている男の左腕を外そうとする。しかし、両腕には力が入らなくなっていき、いくら力を込めても外へと逃げていくかのようだった。
(どうして……これ、は……エリスの小宇宙の影響……?)
 エリスの邪悪な小宇宙に当てられて、体の中の自らの小宇宙の流れがおかしくなっていることにまだカティアは気づかない。表面的なダメージを与えるだけではなく、じわじわと体の内側へと浸食してくるのが、邪神エリスの力。特に、エリス自体が女性の神であり、女性に対しての浸食は圧倒的だった。
「やめっ……がはあっ!?」
 力が入らないなりに拘束を外すように動いていたカティアだったが、空いている腹部へと右拳がめり込むと息が止まった。横隔膜を強打されて呼吸が止まり、白かった顔色が青ざめていく。何度か咳込んで呼吸は回復したものの、一気に体力を奪われてしまい、両腕はだらりと垂れ下がった。あとは足が残っているが、聖衣が重荷となって腕以上に動かすことができない。
(くそ……このままでは殺され……はっ!?)
 自分の未来に待つ死を自覚した時、両足が自然とあがっていた。だが、それは彼女の意志ではなく無理矢理に掲げられたもの。いつの間にか両足に蔦が絡みついて、Mの字の形に宙に吊されてしまった。乙女の聖域はスカートによってまだ守られているが、別の蔦がゆっくりと一直線にカティアの股間へと向かっていく。
「あ……ああ……ゃめ……やめろ……ああっ!?」
 カティアは弱々しく左右に頭を振りながら呟く。乙女の聖域に近づいてくる蔦に、その後の処女喪失を想起すると体が恐怖に硬直する。そんな彼女を弄ぶように、蔦は勢いよくカティアの体を反転させていた。M字に足を固定されたまま反転させられて、膝丈のスカートも同様に逆さとなると乙女の秘部を守るショーツが露わになった。
 乙女にふさわしい純白の布地は程良い恥丘の盛り上がりを隠し、ムダ毛も一切なく白い陶器のような肌を持つ足の付け根として、美しさを保っていた。
「ああ……やめろ……はなっ……せ!」
 蔦が股間に向かう様子がはっきりと見えるようになり、カティアの中で処女を失う現実が具体化する。純潔を守っている乙女であることが聖闘少女としての用件であり、処女を喪失するということは必然的に聖闘少女として資格を喪失することになる。アテナを傍で守るために自らを鍛えてきた聖闘少女は、戦いが終わればいずれ恋をして、自然と資格を失い日常へと戻っていく。その時が来るまでは、何人にも目に触れさせることさえもしないつもりだったのに。
(辱められて……こんなことを……)
 羞恥よりも怒りがこみ上げてきて、再びカティアは何とか拘束を外そうと小宇宙を燃やそうとする。だが、どうしてもエリスの小宇宙が邪魔をして全く燃やすことができず、逆に力が抜けていく。
「だめ……力が……この、蔦……」
 蔦を通して男の方へと小宇宙が流れていくのがカティアには見えた。燃やせば燃やすほど急速に減っていく蝋燭のように、自分の中にあるべき小宇宙が消えていく。急激な脱力感に体を弛緩させたカティアを見て、男は蔦をのばす速度を上げてショーツの内側へと滑り込ませた。
「あっ!?」
 蔦はショーツの布地にしっかりと巻き付くと、ゆっくり外側へと伸ばしていく。股間から離れ、隙間ができると共に内側の秘部が露わになる。それまでわずかだが妨げられてきた外気が直接、膣口に触れると共にカティアの精神は均衡を壊していた。
「い……いやぁあああああ!」
 生娘のような悲鳴に失望した瞬間、カティアの視界が黄金色に染まった。

 * * *

「――はっ1?」
 勢いよくベッドから体を起こしたカティアは、高鳴る心臓を押さえるために最初は激しく、徐々に周期を長くするようにゆっくりと呼吸をしていった。たっぷり数分を使って呼吸を整える間に滝のように流れていた汗は、大半がシーツに吸い込まれていき、残りは彼女の体に付着したまま体温を奪う。やがて動悸が落ち着いたところでカティアは体を一度震わせた。失われた体温を補完するための反射的な動作だったが、完全には体温は戻らない。一つため息を吐いてからベッドを離れ、着ていた寝具を脱いでシャワールームへと入った。
(あの時の夢……まだ、私は恐れている……)
 熱い湯に身を任せて掌で徐々に触れていく。過去、エリスの邪霊士に襲われて触れられた肌には傷はない。足にも腕にも、そして恥部にも。
(あの方が来てくれなければ……私は……)
 克服したと思っていても、唐突に当時のことはフラッシュバックしてくる。夢に見た後だと、思い出す映像はより鮮明になっていた。
 処女を奪われる寸前に自分と邪霊士に向かってきた光は、一瞬で邪霊士を消し去り、カティアを拘束から解放した。何が起こったのかと視線を移すと、太陽の輝きを持つ聖衣をまとった凛々しい男が一人、両腕をかざして立っていた。そして油断なく辺りを見回してから構えを解き、カティアの傍へとやってきた。
(教皇……あなたこそ……私が仕えるべき、主君です)
 聖アカデミーで教わった教皇とは、幼いアテナを殺そうとした男であり、聖域を支配している邪悪な存在だった。射手座の黄金聖闘士であるアイオロスはいち早く教皇がアテナを殺そうとしていることに気づき、アテナを保護してギリシア旅行をしていた木戸光政へと預けた後に力尽きた。光政は命がけでアテナを守ったアイオロスの意思を尊重し、アテナである沙織のために戦う少女を養成する場所・聖アカデミーを創設したのだった。
 だが、カティアが教えられた知識は、教皇の姿と神々しい小宇宙に触れたことで消え去っていた。
 邪悪な存在と教えられた教皇のまとう小宇宙は、教えられたこととは結びつかない。邪悪を許さず正義を全うする、真の聖闘士だとカティアは直感した。だからこそ、カティアはアテナからの召集を拒み、行方不明になったと見せかけて聖域の教皇の下へと向かったのだった。
(教皇が悪であるはずがない。アテナを名乗るあの女は、偽物だ)
 シャワーを止め、バスルームからタオル一枚の姿で部屋へと戻るカティア。白くほどよい肉付きの体についた水滴をタオルで拭き取り、純白のショーツを穿き、聖闘少女の服装へと着替える。インナーである白いワンピースを着た後で聖衣の前に立ち、小宇宙を高めると自然とカティアの体に冠座の聖衣が装着された。装着するだけで小宇宙が高まり、かすかにではあるが冷気が生まれる。
 冷気を操る冠座の聖闘少女。その心は静かに、教皇への忠誠を誓う。
(……少し、出歩こうか)
 カティアは自分にあてがわれた部屋から出ると、音をできるだけたてないように歩きだした。時刻は深夜二時。聖域も聖闘士になれない雑兵が二十四時間体制で警備をしている。アテナを守る戦士である青銅聖闘士以上の戦士達は彼らが異変を察知した上で動き出す。そのため、いつでも起きる準備はできているが基本は就寝の時間だ。
(それにしても、私はなぜ……)
 廊下を歩きながら、カティアは自分の行動を振り返った。
 寝覚めが悪く、汗をシャワーで洗い流したところまでは問題ない。ただ、その後に聖衣をまとったことも、部屋から出て自ら見回ろうと思ったことも普段の自分からは考えられないことだ。これまで何度か邪霊士に襲われた時の夢は見ており、その度に起きてはいたがこうして戦闘準備をするのは初めてのことだった。このまま寝ることを良しとしない何かが体の中に生まれている。
(戦闘準備……そうか、これは……)
 心の中で思い浮かべた「戦闘準備」という単語がしっくりとくる。自分は何かを感じて、何かと闘うために聖衣をまとい、部屋から出たのだ。自分の行動に心から納得する答えが生まれると、次に浮かぶのは「何と闘うのか」ということ。そして敵が本当にいるならば、誰を狙っているのか。
(まさか、教皇が?)
 一番始めに教皇の姿が思い浮かんだのは、正に夢を見ていたからかもしれない。カティアは足音はたてないまま全力疾走に移り、教皇がいる十二宮の頂上にある宮へと向かう。
 十二の黄金聖闘士が守る十二宮とは別方向に、教皇の住むスペースがあった。聖闘少女はアテナ直属の聖闘士として、聖域でも独自に教皇の間へと向かうルートを知っていた。
 飛ぶように通路を進み、やがて教皇の間が見えると躊躇なく入り、教皇を呼んだ。
「教皇様! 冠座のカティアです! 深夜に非礼を承知の上でやってまいりました!」
 叫んでから教皇の小宇宙を探す。建物のどこかにいるのは間違いないが、その小宇宙は弱々しく、消えてしまいそうだった。カティアは自分が助けられた時に感じた小宇宙の方向へと歩を進め、やがて一つの扉を開く。
「地下室……?」
 目の前には、カティアも知らない地下への入り口が口を開けていた。普段は絨毯の下に隠れている入り口が、今は絨毯がはねのけられているために露わになっている。
 カティアは一度唾を飲み込んでから一気に階段を駆け下りていった。蝋燭の炎のみが光源の通路を下りていくと、二階分ほど下りたところで階段は終わり、あとは真っ直ぐに進むだけになる。
「教皇様!」
 通路の先の暗闇から漂ってくる教皇の小宇宙に向かって呼びかけ、走り出すカティア。ほんの数分もしないうちに閉ざされた扉が見え、走ってきたことによる勢いを右足の踏み込みで完全に殺してから押し開いた。
「教皇様! 失礼いたします!」
 胸の奥からわき出てくる焦燥感に、カティアは声を大きくしてしまう。部屋の中は暗闇に支配されていたが、視線の先にははっきりと人の輪郭が見えていた。日食の時に見える太陽のコロナのような揺らめきが人の体に沿って映し出している。
「……カティアか。どうした?」
 問いかけてきた声は教皇のものに違いない。しかし、カティアは即座に戦闘体勢をとっていた。全身の毛穴が広がり、鳥肌が立っている。全神経が暗闇の先にいる男を警戒していた。
(どういうこと……教皇様の偽者? いえ……気配は同じ……なのに……)
 振り返った教皇の顔は、やはり暗闇のために見えない。だが、青白い光によってほんの少しだけ見える髪の色は黒いように思えた。教皇の髪は美しいブロンドのはずで、本来なら見間違えと思うだろう。だが、カティアの直感が告げている。
 目の前の教皇は、別人であると。
「いえ……このような部屋で……いったい何を……しているのかと……」
「何。自分との対話、というものだ。精神統一とでもいうべきか」
 再度聞こえてきた柔らかい声音は、普段の教皇と全く変わらないようにカティアは思う。それでも、普段通りだと近づいた瞬間に襲いかかられるような緊張が胸の内に広がっていく。
「そう、ですか……それでは、私は失礼します」
 極力平静を装ってカティアはきびすを返した。一刻も早く今いる場所から出ようとしたが、目の前の光景に足が止まってしまった。
「い、入り口が……」
 カティアの目の前にはただ闇があるだけだった。手を伸ばして空間を触ってみても何にもぶつからない。ただ見えないだけではなく、本当に虚空に触れているだけ。それまで自分が入ってきた地下へと続く階段が綺麗に消え去っていた。更に前へと進んで手を動かすも、やはり何も触れないことにカティアは背筋に冷や汗が流れるのを押さえられなかった。
(どういうこと……この空間自体が、現実の空間と断絶されて……? はっ!?)
 カティアは現状に混乱していたために、背後に立つ気配に気づくのが遅れた。振り返るとすぐ傍に教皇が立っている。近距離で初めてカティアは気づいたが、教皇は全裸であり、自然体で佇んでいた。
 体を覆う光によってほとんどの輪郭は把握できたが、局部と表情は闇に隠れたままで見えない。それでもカティアは男性の肌を見るのが初めてであり、とっさに距離を取った。
「なぜ……そのような姿を……?」
 頬が熱で赤くなるのを自覚しつつ問いかける。乙女であることが求められる聖闘少女は男に慣れていない。時折男勝りの女性もいるが、カティアは基本的に男性とは必要最低限の事務的な会話のみで、長く話したこともなかった。聖アカデミーに入ってからはずっと聖闘少女になるための知識や技能取得に年月を費やしたのだから当然と言える。
「頬をそんなにも赤らめるとは……やはり乙女か」
 暗闇の中でもカティアの表情が分かると言わんばかりに教皇は告げてくる。カティアはゆっくりと手を掲げて、自分の中の恐怖を押さえつけるように呟いた。
「教皇様……ここは一体どこなのでしょうか」
「ここは異空間だ。本来なら私の技『アナザー・ディメンション』によって敵を飛ばし、永久に時空の狭間を迷わせるために使うのだが。誰にも邪魔されたくない時に私自身も入るのだよ。先ほどは一瞬、精神統一が揺らいでしまったようだ」
「アナザー・ディメンション……? 教皇様、あなたはそのような技を……?」
 カティアの中で警鐘が鳴る。それは聖アカデミーで培った知識の山から顔を出し、カティアへと警告してきた。
 聖闘士の歴史を学ぶ中で、過去の聖戦を生き抜いた教皇の技は全てではないにしろ学んでいる。無論、受け継がれてきた技もあれば新しい技もあるだろう。また、知られていても全容は明かされない。単純にカティアが学ばなかった知識なのかもしれないが、教皇が語る『アナザー・ディメンション』に、カティアはどうしても違和感を拭えなかった。
「教皇様……あなたは、本当に……?」
「私は教皇だ。お前の知っている、な」
 その言葉が、カティアにとって駄目押しとなった。異様な状況のために気づけなかった自分が愚かだと分かるほどに、教皇から感じられる小宇宙が全くの別物だと後になって気づいた。姿形は同じだが、明らかな別人。外見を似せることはできても、小宇宙は偽れない。
「お前は……誰だ! 教皇様をどうした!」
 カティアは大きく飛びのいて両腕を掲げる。いつでも技を繰り出せるように小宇宙を高め、相手を警戒する。しかし、目の前の男は含み笑いをしただけで警戒もせずにカティアへと歩き出す。
「止まれ! いくらお前が強大な小宇宙を持っていたとしても……聖衣がない状態では!」
「どうした、カティア。私に対して拳を向けるのか?」
「……口を開くな!! ジュエリックティアーズ!」
 敬愛する教皇の声色はそのままに、自分へと無機質な優しさを向けてくる男。カティアは込み上げてくる怒りと共に小宇宙を放っていた。
 天から宝石のような輝きを持った氷が男へと降り注ぐ。周囲に満ちた冷気があっと言う間に男の体を覆っていき、氷漬けにしていた。
「はぁっ……はぁっ……」
 息を切らせながら距離を取るカティアは、耳に入る音に足を止める。ピシリ、ピシリと何かに亀裂が入るような音は、氷漬けにした男の方から聞こえた。
「そん、な……」
 ジュエリックティアーズによって凍らせた男の表面にある氷が砕かれて、男の裸身が現れる。暗闇は虹色の光によって照らされて、男の全容が明らかになった。
 黒い背中まで伸びる髪。その下には真っ赤に燃える瞳。筋骨隆々の体には余計な脂肪など一つもなく、股間に屹立するペニスも雄々しい。
「この程度の凍気など、皮一枚も凍らん」
「……こ、の……」
 カティアは再び技を放とうと小宇宙を高める。しかし、次の瞬間に男の姿がかき消えたかと思うと目の前へと現れた。あまりに一瞬のことで硬直したカティアは、腹への衝撃にこらえれきれず吹き飛ばされた。
「あぐあっ! がはっ! あうあああっ!?」
 激痛を後に引きつつ床を転がっていき、やがて止まる。腹部に叩き込まれた拳の痛みによって悶絶し、立ち上がることすらできず腹を押さえたままうずくまるだけで、カティアはこれ以上の戦闘続行が不可能となった。
「一撃か。他愛無い。所詮、アテナ付の侍女か」
 かなりの距離を転がったはずなのに、声はすぐ傍で聞こえる。カティアは戦慄する間もなく、髪の毛を捕まれて無理矢理に起こされた。背中まで届く美しい髪も吹き飛ばされた衝撃と、髪の毛を掴み起こされたことで乱れている。痛みによる涙に視界の中で、教皇の顔をした男が笑っていた。
「私のことを知られた以上、一生日の目を見ることは許さん。死ぬまで、男を喜ばせる玩具になるがいい」
 男の右腕に小宇宙が集まっていく。その量はカティアではとうてい及ばないほどの強大さ。蟻が象へ挑むような無謀な戦いだったのだと、カティアはこの時になって初めて思い知った。
 胸の内に生まれた思いが、弱々しい言葉を紡がせた。
「や、やめ――」
「ギャラクシアン・エクスプロージョン!」
 懇願の言葉も最後まで言うことができず、カティアの意識は小宇宙の激流の中へと消えた。

 * * *

(全身が……バラバラになったみたいだ……)
 どれくらい気を失っていたのかカティアには分からなかった。ただ、意識が徐々に回復してもなお、五感は回復せず、考える力のある頭部以外はなくなってしまったのではと思うほど。そんなあり得ない現実を夢想してしまうのは、混乱が極まった結果、逆に落ち着いてしまったことによる。
 意識を失う直前に届いた技の名前と衝撃。まさに銀河を作り出したビックバンを再現したかのような威力だったとカティアは思う。無論、ビックバンを体験したことはないが、彼女の理解の範疇では強大な威力だった。
(私は……死んでは……いないのか……)
 思考できていることから、自分が生きているという事実を受け止める。死んでもおかしくない攻撃を受けて生きていたのは鍛えた体と、何よりも聖衣のおかげだと思えた。
(徐々に……感覚が……戻って……うう……)
 時間が経つと共に体の感覚が戻っていく。最初に戻ってきたのは触覚。背中には冷たい床の感触。更に股間に何かを挿入され、突き動かされている。反動で体が揺れて、遅れて上下に乳房が揺れる。同年代の中では大きいと自覚している乳房だが、聖衣に包まれている時は固定されていて動きの邪魔にはならず、私服の時も極力動かないように特注のブラジャーを身につけていたため、その反動の強さにカティアは驚いた。
 次に戻ってきたのは聴覚だった。じゅぷり、じゅぷりと水に連続して衝撃を加えている音。水気を帯びたもの同士がぶつかりあう音が耳に届く。自分の上に誰かが覆い被さっており、動きと共に口から漏れる息の音さえも聞こえた。
「――ぁ――ん――ぁん――」
 もう一つ聞こえたのは女声。股間への突き入れと同時にかすかに聞こえてくる声はか細く、か弱いもの。どこか聞き覚えがあったが、自分の周囲でこれほどまでに弱々しい存在は知らない。そんなか弱い存在を守るため。アテナと共に闘うのが聖闘士であり、聖闘少女なのだから当たり前だ。
 そして視覚。最初は暗闇だったが徐々に光が戻ってくる。明るくなると今度は焦点が合わずにぼやけるが、徐々にまとまっていくと、眼前に黒髪の男の顔があった。
「ぁ……あ……え……?」
「目覚めたか」
「……ぁ……あっ……あっ……んあっ……お、おまっ……えっ!」
 視界がはっきりすると共に状況が急速に理解できる。
 気を失う前と周囲は変わらない。出口のない異空間のままで、カティアは男に組み伏せられていた。仰向けで両足を広げられて、股の間には男がいて、何かをカティアの股間の中へと挿入して動いていた。簡単な知識しかなかったが、今、自分が受けているのは男女間の性行為であって、同時に自分が処女を喪失してしまったのだと悟った。
「いっ……いやあっ! 抜い……抜いっ……!?」
 男を押し退けようとしても体は動かず、また突き上げによって伝わってくる衝撃に声が漏れる。か弱い声は自分があげていたことを知ると心が一気に折れそうになる。
(私が……こんな……声を上げる……なんて……)
 歯を食いしばって耐えなければ弱々しい声を上げてしまう。それはカティアのプライドが許さなかった。だが、連続した突き上げにそれまで麻痺していた体は、神経が通りだしたかのように快感を伝えてくる。結合された股間を中心にまるで網の目のように広がっていく。
「ぁっ……あんっ……うぅ……んっ……んんんっ……」
「我慢しなくていいぞ? お前はもう聖闘少女ではない。ただの女なのだからな」
「ただっ……のっ……女……そ……ああっ!?」
 否定しようとしても大きくなっていく快楽の波に飲まれかけて仰け反ってしまう。男の顔を睨みつけていてもすぐに視線が泳ぎ、強い意志を維持できない。自分の体を見下ろすと、何もまとっていない裸体があった。聖衣もその下に着ていた装束も影も形もない。ただ、強烈な攻撃を受けた痕跡としてところどころ火傷のように黒ずんでいた。
 闘う力を完全に剥ぎ取られたカティアには、この場で抵抗することはできない。
 聖衣は自己修復機能を持っているためいずれは復活するが、問題はそれ以前だ。
(私は……聖闘少女では……なくなった……そう、か……)
 男の言葉を思い出す。聖闘少女の条件は処女であること。その処女が、男によって奪われたのならば、もう自分は聖闘少女ではなくなっている。ただ、一般人の女性と比べて少しだけ肉体を鍛えている女にすぎない。
「うぅ……くっ……うう、あ……」
 自然と涙が溢れてきて、あえぎ声を押さえるために食いしばっていた歯の役目は変わっていた。心を満たす悲しさの発露として嗚咽が漏れる。自分の聖闘少女としての命を奪った男の前で彼女ができる唯一の抵抗は、弱々しい少女だという様子を見せないこと。しかし、その行動すらも男を喜ばせるだけだとカティアは分からない。
「ふむ……いい泣き顔だ」
 声は冷静に、しかし腰の動きは激しい。
 上半身と下半身で全く別の生物であるかのように男の臀部がぶつかってくる。膣の中から生じたむず痒さと、それに伴う快感に脳が焼けるような気がしてカティアは必死に気を逸らそうとした。
「いいぞ。その顔は……さすがに聖闘少女だったことはある。なら、これはどうだ?」
 男は腰の動きを止めてカティアの下腹部を掴むと結合したまま器用に反転させた。仰向けからうつ伏せにされて床に顔が押しつけられる。その状態で再度動き出すと、先ほどまでより強い快感が頭の先まで貫いた。
「うぁあああ! あうっ……ああっ! やめ……やめろ! やめろぉお!」
「いい声で鳴くじゃないか。どうした? 気持ち良いのか?」
「誰っ……がっ! あっ! あんっ!?」
 背後を向いて言い返そうにも体は動かず、額を床につけた状態から動きようがない。体に力は入らず、ただ快感が体の中を駆け巡る。繋がっていない神経を快楽が埋めるかのように。快感以外を伝える神経が死んでしまったような錯覚に陥る。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! んはっ! くっ……うう!」
「苦しそうだな。どれ、引き上げてやろう」
「何っ……をっ……あはあっ!!」
 カティアは両腕を捕まれて体勢を起こされたことで、これまでで最も強い快感が全身を貫く。動かない体が衝撃に弾かれるように動き、背後へと仰け反って硬直して小刻みに震える。口が開かれて、涎が口の端から流れ落ちた。
「あっ……ああ……かっ……はっ……」
 体勢を変えられたことで男のペニスが膣の奥深くまで挿入され、子宮口に当たっていた。太く長い肉棒は子宮口を更に押し込んで、中に入ろうとする。何度も突かれると痛み以上に快感が頭の中を焦がし、とろけさせていく。
(激しい……駄目……頭の中がぐちゃぐちゃ……で……流されて……しまう……)
 このまま快楽に身を委ねてしまうことの危険さに、カティアは必死に抵抗する。唇を噛んで犬歯を食い込ませると血が流れ出し、ほんの少しだけだが意識がはっきりした。だが、すでに快感は股間だけではなく他の場所からも発生していた。
「どうした。乳首が立っているぞ」
「んんんっ! あんっ! やっ……ああっ!」
 左腕が解放されたかと思うと、乳房へと男の左手が伸びてきて乳房を鷲掴みにした。それだけでも今、膣を襲っている快感と同じくらいの衝撃が走るというのに、乳首を指で摘まれたことでカティアは一瞬意識が飛んだ。膣がぎゅっとしまり、肉棒を締めつけてしまう。自分の意志ではなく、体の意志が。男は一瞬だけ呻くと抽送の速度を速めた。
「あうあ! あっ! はげしっ……ンンンー! あふアッ! あ……ぎぃ……かっ……ふ……こわれ、る……やめて……お願い……」
 脳内が焼かれて意識が飛ばされる恐怖に、カティアは涙を流しながら男へと懇願する。続けられるピストン運動に小刻みに意識を飛ばしては戻すということを繰り返し、終わりの見えない快楽攻めによって全身が火照っていく。どこを触られても快感を感じるようになってしまっては、快楽に狂うことも遅くない。聖アカデミーでは年上として、皆の先輩としてクールに威厳を保っていたカティアには、淫らに乱れて悲鳴を上げる自分が耐えられない。
「許して……お願いだから……」
「お前に許すことなど、なにもない。ただ、私を満たせ」
「そんな……ああっ!?」
 カティアは背後へと体を引っ張られて体勢をまた変えられていた。今度は男のペニスに結合されたまま腹の上に乗せられている。腰を背後から捕まれて、倒れそうになる上半身をちょうどいい位置で支えることでバランスを取っている。そこから男が腰を動かし、突き上げることでカティアは上下に揺さぶられ始める。
「あっ! ああっ! うごっ……かないでっ!? 動かない……でぇえ! あうあ! あんっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! ああっ! あんっ……ああ!」
 ほぼ固定された上半身と異なり、不安定な上半身は突き上げによる反動で揺れ動く。腰から離れるほどに揺れは大きくなり、頭部は前後へ大きく振り幅を広げた。
「ああっ! あんっ! あんっ! あんっ! あんっ! ああんっ! はぅ……ああっ! ひっ! ひぃい! やあ! アッ! アアッ! アッ!?」
 徐々に高くなる声。一突きされるごとに増幅する快感は、ペニスの先が膣の中でカティアの「弱い部分」にぶつかってきていることに関係していた。敏感な部分をえぐられて、カティアの脳内は完全に溶けていく。ドロドロに溶けて意識がかき乱され、思考停止と共に残るのは快感に身を委ねることだけ。それまで頑なに拒んできた快楽への恭順の拒否も、考えることができなければ意味はない。
(もう……耐えられない……私は……わたし、は……)
 突き上げられるごとに結合部から水音が激しくなる。男の下腹部に流れていく愛液の量も最初から比べて数倍の量となり、ピストン運動の動きが男の力も併せてなめらかとなる。
 それでもカティアの膣内の敏感なスポットへの刺激は的確で、カティアは遂に最後の頂へと登る。
「アッ……アアアッ……キャァアアアアッッッ!!」
 根本さえも膣口へとねじ込まれたかのような突き込みと同時に、カティアは人生で初めての絶頂を迎えていた。
「ふふ……どうだ? 聖闘少女として女の喜びも知らなかったんだろう?」
「アッ……カハゥ……ハァ……ハ……ヒ……ハア……」
 語りかけられても、カティアは男の声は聞こえていなかった。荒い息を吐く度に体を震わせて、その振動によって体の中を快感が走り抜ける。初めて絶頂に達したというのに、連続した小さな絶頂を繰り返していて、意識はほぼなくなっている。
「さあ。女としての喜びを手に入れたのなら、男も喜ばせるんだ」
 男は結合を解かないまま腕の力だけでカティアの体を反転させる。男のほうを向かされてもカティアの視線は男を向くことはなく、背中の側に頭部が倒れたことで視線は天井へと移っている。男はカティアの背中に腕を回して抱き寄せて、カティアのだらしなく空いた唇へと自らの唇を重ねた。
「ウゥウウウ! ウウゥン! フゥン! ンフゥウ!」
 口の中を動き回る舌さえもカティアの快楽を引き出す。見開いた瞳から溢れ出す涙が、何度もたどった筋を更に濃くする。頬が快楽による紅潮と涙による腫れによって赤くなっていた。
「ンッ! ンンッ! ンッ! ン! ンゥウウ! プハァア! アンッ! アッ! アアンッ! ハァ……ムブゥウ!」
 時折口を離されて空気を取り込んでも、すぐに唇を塞がれる。腰の動きは変わらず激しく、カティアは考えることを止めて完全に快楽に身を任せる。抵抗をやめてしまえば後に残るのは気持ちよさのみ。次々と襲ってくる快感の波に心臓が激しく脈打ち、体力が減っていく。
 一度、絶頂に達したことで、鍛えた体に蓄積していた体力は底をついた。その後は一瞬一瞬で意識を飛ばしながら男を受け入れた。
「そろそろ私も、イかせてもらおうか」
 男は唇を離して少しカティアの体から距離をとると、両腕でしっかりと彼女の胴を掴み、上下に激しく動かす。下半身を固定して腕の動きだけでカティアの膣を動かし、自らのペニスをしごいていく。完全に物と化したカティアの姿を視界におさめながら笑う男の声も、カティアは自分の嬌声によって聞こえることがなかった。
「アヒャアッ! ンハアッ! ンアッ! アッ! きもち……きもちいい……アンッ……ダメェ……また、イクッ……イクゥウウウウァアアアアア!!」
 一度達したカティアは再び絶頂へと至る。更に男も深く突き入れてペニスの先から欲望を迸らせた。膣の先、子宮口にねじ込んだことで子宮に注ぎ込まれる精液。満たされる白濁液の感触にさえ、カティアは快感に満たされてしまった。
「なか……ぁ……出、て……かは……あ……」
「くくく……」
 か細い呼吸で空気を取り込んで、気を失わないことが精一杯のカティア。男は快楽に落ちた少女の様子にかすかに笑い、腕の力だけでカティアを持ち上げて膣からのペニスを引き抜いた。
「アゥ……」
 引き抜かれた衝撃にとろけた声を漏らす。男はそのまま自分も立ち上がり、カティアをまるで赤ん坊を抱き上げるように脇の下へと手を入れて持ち上げていた。力が抜けて下がる両足。その間からは男がそそぎ込んだ精液が太股を伝って落ちていた。
「さて、次は」
 男は呟くと小宇宙を燃やし始める。暗闇が男の小宇宙によって照らされて、やがて光が満ちた。
 光が消えた時にはもう、二人の姿がそこにはなかった。

 * * *

「ぁ――ぁあ――んぁ――」
 聞こえてきた声はまた自分のものかと、カティアはゆっくりと目を開ける。つい先ほど意識が戻り、体の気怠さにまた眠ってしまいそうだったが、また気を失いことへの抵抗が強い。だが、今回は自分の声ではなかった。
(ここは……)
 視界はまだ回復しないが、これまでいた場所ではなく明確に部屋の中だということが分かる。自分を犯した男が『アナザー・ディメンション』という技によって異空間に飛ばされ、そこで聖闘少女の資格を奪われ、辱められた。
 その事実はカティアの中に影を落とす。聖アカデミーでアテナを守るための知識と力を授けられ、卒業後に敵だと考えられていた教皇の人となりに惹かれ、アテナを、アテナを語る少女だとして見限った。だが、教皇は豹変して自分を少女として凌辱し、カティアも女として快楽に飲まれてしまった。
「アンッ! アッ! アアッ! キャアッッ!!」
 絶頂に達したのか、声の主は甲高い声を上げた。視界は未だに回復せずぼやけている。だが、先には肌色と白い色をしたものが合わさっている。白い物が下だ。声と照らしあわせると、自分と同じように少女が、男に犯されているのかもしれない。
(私……だけではなく……)
 怒りは体を動かさなかったが、視界を回復させる。やがてはっきりとした視界には、見覚えのある人物が組み伏せられていた。
「ぁ……あ……そんな……アリシ……ア」
 アリシア・美衣・ベネトール。
 聖アカデミーで自分と共に聖闘少女となるために学んだ少女。アテナに幼い時から仕えていたため、アカデミーを卒業してからすぐにアテナの元へと参上し、先にあったエリスとの闘いも主力となって闘っていたはずだった。
「お。目が覚めたかぁ」
「あぅ……ぐっ……」
 仰向けに倒れていたカティアは背後から近づいてきた男に髪を捕まれて上体を少しだけ起こされる。顔を強引に後ろへと向けさせられると、そこには彼女の三倍はあろうかという体格の男がいた。
「ここは聖域の地下にある部屋なのさ。いつも聖闘士の下で働いている俺達雑兵に、教皇様が癒しをお与えになってくれるんだ」
「いや、し……」
「そうだ。あの女は聖域の敵として白銀聖闘士様達が捕らえてきたんだ。他にもアテナを語る女や、それに従う女聖闘士達がいるからな。どんどん増えるだろう。お前もそいつらと一緒に、これからずっと俺達の公衆便所になるんだよ」
 雑兵は立ち上がるとカティアの髪を掴んで引きずっていく。先には絶頂に達した友人がいる。アテナを語る少女の側についたことで袂を分かつた少女と教皇についた自分。同じようにこの部屋で、これから男達に凌辱される日々が始まるのだと悟るとカティアの中に絶望を広げていき、抵抗する気力が消えていく。
「ひゃひゃっひゃ! これからずっと楽しませてもらうぜぇ! できるだけ壊れるなよ!」
 引きずられた先にあるベッドに倒されて、雑兵に体の上に覆い被さられる重さを感じながら、カティアはゆっくりと目を閉じる。
 再び聞こえ始めた声が自分の物なのか、アリシアの物なのか、もう彼女には判断できなかった。
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