みなさんこんにちわ。神魂未生&河野流桜です。
 このブログは、私達の私小説のブログです。
 未生は主にMLに近いBL系の小説を描き、
 流桜はNL系ファンタジー小説を描いています。
 どうぞ、ごゆっくりなさってくださいね。

2017/3/21  9:00

【銀狼記】 春の野原に新緑満ちて(3)  ◇銀狼記

【銀狼記】【春は西からやってくる】【祥黎&琥狼】 
冬の狼牙省を抜けて、西へと向かった一行は… 
銀狼記 「春の野原に新緑満ちて」(3)  

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 「もともと独立国であったところは…」 


玄黒国は元々北の大地で、4つの国に分かれていました。
最北にあるのが、琥狼の支配する狼牙国。
東の東嶺沿いに東海までに広がっていたのが、
緋遼たち緋閃の民の暮らす緋閃国。
そして、独立する部族ではない独立国が、
西の海に面する蒙炎国でした。
蒙炎国は、西の海を使って他国との貿易や、
玄黒国との貿易の中継ぎをする、
いわば通商によって存在していた国家であり、
住んでいるのは玄黒国の中原や西原に住んでいる人と、
全く同じ玄黒人です。
そのせいか、玄黒国に合併する交渉が行われた時も、
それまでの自分たちの利権が何も変わらず守られるならと、
比較的簡単に合併できたようです。


と、いうことで、祥黎と琥狼の子供主導の旅物語。
「厳冬の故郷に眠る」の続編をお届けします。
自分で書きながら、思いがけない話の飛び様に、
実は田舎暮らしの昔の子供たちを、さりげなく妄想しております。
それでは、お楽しみいただけましたら、幸甚でございます。 (*^_^*)




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 銀狼記 「春の野原に新緑満ちて」(3)
                           By.河野流桜。
 


森泉の村を出て、狼牙路を西に向かう。
西から吹く風に、春を迎えようとする野原や、
葉の落ちた枝に見える芽吹きの気配。
山々の雪は、陽光を浴びて、あっという間に溶けて、
山から流れ出す小川の水は。日々大きくなっていく。
そろそろ、小屋で冬の間窮屈な思いをしていた牛や馬たちも、
牧に放たれる日が多くなるだろう。

気分がウキウキして来るのは、動物たちばかりではない。

鼻歌を歌いながら、先頭を歩く零鄭も、
今朝方見た琥狼の子供のこともあって、
今日は至って、楽しげに歩いている。

「おい、あんなところに、花が咲いているぞ…」

道端の草の中に咲く、小さな白いすずらんの花。

「すずらんだな… あれは、王妃様の花だ…」

そう言った緋遼に、零鄭は不思議そうな顔を向ける。

「何で、すずらんが母上の花なんだ?」

「何だ、知らないのか? 有名な話だぞ。
 王が結婚を渋る王妃に、毎日ずっとすずらんの花を届けて、
 プロポーズし続けたんだそうだ。
 だから、王妃様の紋はすずらんだろう?」

「ああ、そうだ… ふーん、そんな話があったのか…」

「零鄭、お前の両親は、容易くない道程を生きてきた。
 王は、若くして父王を失い、
 最強の軍神と言われていた紅狼様が率い、
 強大な軍事力を誇る狼牙国が、
 王の交渉力では併合できないのではと、
 随分と貴族たちには危ぶまれていたらしい。
 母上様は、あの通り、初めての狼牙族の王妃であり、
 お前は狼牙の血を引く子供だ。
 これから先、そのことはお前にとって、
 良いことばかりではないだろう。
 狼牙族が国の中央で、余りにも大きな力を持つことを、
 警戒する奴らも多いからな…」

緋遼はそう言って、小さくため息を落とした。

「玉凛さまが名を祥凛に変えられたのも、
 そんな古参の重臣たちの声に配慮してのことだと聞く…
 まあ、王の傍にはいつも兄である紅狼様がおられたからな…」

歩きながらそんなことを言いつつ、
いつしか一行は、省境の川べりの道に出た。
向こうの方に大きな橋が見える。

「あれが、狼牙省と蒙炎省を繋ぐ橋、狼炎橋だ」

橋の向こうにはこの時期になってもまだ、
真白に雪を冠した大きな山が一つそびえている。

「あの山が蒙炎国の聖なる山、炎暦山と言うらしい。
 年中あの万年雪は溶けぬそうだ。
 あそこだけは、禁足地になっているらしい」

「へえ…そんなに高い山でもないのにね…」

零鄭は真白な山を見上げてそう言った。

気が付けば、蜻蛉は一行から姿を消していて、
二組の親子の薬売りが、薬を売りながら旅をしている、
一行の雰囲気は、昨春に玄栄を出た時のように戻っていた。


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狼炎橋の向こう側には小さな小屋があって、
そこでは一応の省境の警備兵が数名配備されていて、
橋を渡って来るもの、橋を渡って狼牙に行くものをじっと見て、
怪しげなものが出入りするのをチェックしているようだ。

「おい、琥狼。 狼牙の方には警備兵はいないのか」

零鄭が呆れたようにそう言うほど、狼牙の方には何もない。
考えてみれば、東の緋閃省から狼牙省に入った時も、
狼牙側にも緋閃側にも、警備をするものらしい配備は、
見あたらなかったように思う。

「狼牙と緋閃は、親父の代から、
 出入り自由の協定があるからな。
 緋零様と親父の間に、敵対しあう理由は全くない。
 それ故、そのようなものは不要、ということだ」

そう言って琥狼が笑えば、

「その通りだ。
 緋閃と狼牙はこの先もずっと共闘関係にある」

緋遼の声は、本来であれば緋閃国王の声でもある。
狼牙と緋閃、共に独自の民族と、
他国にはない文化を持っている。
そのどちらもが、今は玄黒国に加盟してくれていることの、
大きな意味を零鄭は感じていた。

「蒙炎は違う、ということなのだな…」

そう呟いた零鄭に、緋遼と連尚は大きくうんと頷いた。

「白狼様の指示により、ここから先は決して狼牙の民も、
 表張った行動は起こしません。
 決して目立たぬように、出来れば、目に付かない様に、
 なるべく大人しく行動願います。
 最悪な場合は状況によって、私と琥狼、緋遼殿と零鄭の、
 二組に分かれて行動することになるやもしれません。
 良いですね、琥狼、そして、零鄭。
 くれぐれも自重して下さい。
 この国には他国からの移住者も多く、
 村や町の基盤も全く異なります。
 充分に気を付けてくださいよ」

連尚が、真顔でそう言った。
琥狼と零鄭はうんと頷いた。

「見て頂ければわかると思いますが、
 この省では身分により、町や村が構成されています。
 支配するのは、役人階級の者、そして、その下に商人、
 そして、農民や生産を主導するもの、
 村の庄屋クラスや工場主ですね。
 次にそれに従事する労働者、
 最下層が、彼らの世話をする補助作業者、です。
 その垣根を越えることは、ありませんし、
 越えることはこの省ではルール違反です」

緋遼の声には厳しさがあった。

“なんだ…? 農民を迫害しているのか…?”

琥狼がそう思うほど、連尚と緋遼は緊張していた。

「あー、お前らは狼牙の薬屋か…
 春になったし、そろそろ薬売りには、良い季節だな…」

「はい、ありがとうございます。
 今年は特に変わったことはありませんか?」

包みの中から、狼牙の強壮薬を少しばかり取り出して、
兵士たちに手渡しながら、連尚が聞いた。

「いつもすまねえな。
 狼牙の薬は元気が出るから助かってるぜ。
 いや、特に変わったことはねえなあ…
 っても、夜間の外出禁止令が、
 大きな町では敷かれているって話だよ。
 この辺のちっせー村なんかはないけどな」

「そうっすか、ありがとうございます」

「おう、気を付けて行けよ。
 海沿いの町は最近物騒だって聞くからな」

「わかりました」

連尚と緋遼が頭を下げて通過するのに、
琥狼と零鄭も後ろから、ピョコンっと頭を下げて、
彼らの前を通り過ぎた。

橋を渡った先は、川から用水路を分岐した、
道沿いに小川の流れる大きな牧場が左右に見えた。
どうやら、新緑の芽吹きを当て込んで、
牧場に放たれたらしい羊の群れが、
あちこちで草を噛んでいる。
そのはるか向こうに、
厩舎らしい大きな建物が幾つも見える。
まるで巨大な工場の様だ。

「すげーでっけーなあ…。
 狼牙の牧場とは全然違うんだな」

「ここはこの牧場だけで出来た村でしょうね…」

だんだんと近づくにつれ、大きくみえるようになる厩舎は、
玄栄の大学の学舎の様に、巨大で二階建ての建物だ。
しかも何棟も並んで建っている。

厩舎に並んで、いくつかのアパートの様な建物と、
一戸建ての家が整然と並ぶ村があり、
一番街に近い方には、ひときわ大きな御屋敷があった。

“輪興牧羊村”と書かれた看板が、その村の入り口だ。

「行きましょうか」

「うん」

連尚の声に、一行は頷いて、入り口の守衛小屋に声を掛ける。

「すんません。狼牙の薬売りですが、
 入らしてもらってもいいでしょうか?」

「ああ、大分向こうから見えとったよ。
 アンタら子連れだなんて珍しいけど、息子かい?」

「ええ。こっちが俺の息子で琥狼。
 あっちのが連れの息子で零鄭っす」

「勢が良くていいこったなあ。
 良い跡取りじゃねえか。
 薬売りだったら、この道をまっすぐ行って、
 右手のふたっつめのでけえ建物が、
 店や病院なんかがあるところになっているから、
 そこへ行ってくれ」

「ありがとうございます。」

そう言って、連尚は省境の時と同じように、
強壮薬の小袋を衛兵にそっと手渡した。

「アリガトよ、助かるぜ」

そう言って衛兵はニイッと笑って通してくれた。


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「さっきから連尚が衛兵に渡しているあの薬は何?」

小さな声でそう尋ねた琥狼に連尚は苦笑しつつ言った。

「強壮薬だ。
 ニンジンにニンニクやタイソウ何かを混ぜたもんで、
 疲労回復や栄養補給になるんだ。
 大抵の衛兵はあの薬を渡せば、
 狼牙の薬売りだとわかるからな」

そう言って、軽くウインクする。

「個人で買うんじゃないのか…」

「ここは、個人は殆ど金を持っていない。
 村の中にいる者は大抵、欲しいものを貰って帰るからな。
 商売は個人を相手にするんじゃなくて、
 村の世話役をしている役人や商人を相手にするんだ」

「なにそれ…」

このご時世で、金の流通の無いところがあるなんて…
琥狼も零鄭も唖然とした顔で連尚を見る。

「だから、ああやって少しでもタダでもらえると、
 彼らは嬉しいんだよ。
 なんせ、卵一個からコメの一匙まで、
 何もかも帳面につけられて、
 その分だけ労働で返さなきゃならないんだからな…」

驚いた顔の琥狼に、連尚は言う。

「柔らかな拘束状態にあるんだ。
 ここの住人達は…」

今度こそ、琥狼と零鄭の顔色が変わった。



                         To Be Continued。


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