ベオウルフ

フュリー
見回りを終えて自分の部屋に戻ろうとすると、緑の髪の美しい天馬騎士がそばの木の枝に何かを縛っているのが見えた。
「…フュリー?」
ベオウルフは疲れているにもかかわらず彼女が気になったので、彼女の名前を呼んで、傍に行く。
いきなり名前を呼ばれたフュリーは体が跳ねるほどビックリした様子だったが、自分を呼んだのがベオウルフだった事に気づき、パッと笑顔になる。
「お疲れ様です。見回り、交替なされたのですね」
「ああ」
枝を見てみると、1本のリボンがちょうちょ結びで縛り付けられていた……クリーム色の。
「何だ、コレ?」
「おまじないです。『大切な人が無事に自分のもとに戻る』と言う話です」
本当は、黄色いリボンでやるものなんです…と、フュリーは笑った。黄色のリボンを探したのだが、売り切れていたらしい。
「非現実的だな」
ベオウルフは困った様に笑った。
「それでもいいではありませんか。現に、このおまじないをする人増えているみたいですし」
「そうなのか?」
「ホラ、あの木の枝」
フュリーが指差した木の枝には黄色のリボンがやはりちょうちょ結びでつけられていた。……ひどく結びが汚いが。
「どなたが結んだものか、お分かりになりますか?」
「ラケシスだな、ありゃ」
「よく分かりましたね」
「結びが慣れてねェからな」
よくよく見ると、あたりの木の枝にはあっちこっちに黄色いリボンが結ばれていた。 キレイに結ばれてるものもあれば、縦結びになっているものなどもある。
女はくだらねェ事が本当に好きだなーと、ベオウルフは溜め息を心の中でついた。
すると突然。
「?」
何を思ったか。
フュリーが今しがたしばったリボンを解いて、しまいこんでしまったのである。
「フュリー、何で解くんだ? 今しばったばかりだろうに」
当然の疑問をベオウルフはぶつける。
すると、フュリーは笑って1言。
「もう、意味ないからですよ。ベオウルフ」
ニコッと。
フュリーはさっきまでしばられていたリボンの様に可愛らしく微笑んだ。
初めはよく分からずに考え込んでいたベオウルフだったが、フュリーの笑顔とその行動の意味を理解した途端、顔を赤くしてオロオロしだすのだった。

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