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2009/11/7  23:03

昭和の下宿あれこれ 48  昭和な話

そのようなワケで、如何に不便極まりない下宿環境であっても、昭和の学生たちは自分が不幸だなどとは全く思っていなかった。

が、一方、そうした中でも各々絶対に譲れないこだわりというものも持っていた。

例えば、男子学生にとってのそれは 『ベッド』 だったりする。

「ベッドは男のステータスシンボルだ!」
と、当時の男子学生の皆が、密かに思っていたのである。

とはいえ、世間で言うまともなベッドなどなかなかそう簡単には手に入らない。
そこで、或る者は古雑誌や古新聞を畳みに積み上げ、それをベッド状に平らに均(なら)し、その上にシーツをすっぽり被せて布団を敷き、『ベッド』 と称した。

また或る者は、酒屋から空のビールケースをいくらか譲り受け、それらを土台にして 『ベッド』 と名付けた。

そしてベッドのある生活を夢見てひたすらバイトに励み、本物のベッドが狭い部屋を占領した時、
「これで俺もようやく男になれた!」
と、感慨深い勘違いをするのである。

まあ、ベッドと言ってもせいぜい簡易ベッドの類なのだが、それでもベッドはベッド。
汚い畳に敷きっ放しのセンベイ万年床とはまるで趣が違うのである。

・・もしも・・もしも、彼女が出来て、
もしも・・もしも、彼女がこの部屋に遊びに来たら・・・

こ、このベッドに・・彼女と二人・・並んで腰掛けて・・
そ、そ、そしたら・・あわよくばベッドに押し倒して・・


・・・と、ベッドが入ったその日から、男子学生の妄想は広がるばかり。

彼らのステータスシンボル、『ベッド』 がもたらす妄想は、汚い畳に敷きっ放しのセンベイ万年床では絶対に浮かばない妄想なのであった。



            つづく





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