NHK大河ドラマ
『龍馬伝 第37回 龍馬の妻』
放送日:2010年9月12日
演出:梶原登城
と
『龍馬伝 第40回 清風亭の対決』
放送日:2010年10月3日
演出:松園武大 渡辺一貴
作:福田 靖
第37回のほうは、池田屋事件直後のハナシ。九死に一生を得た坂本龍馬(福山雅治)はお龍(真木よう子)とともに薩摩藩の助けで京を脱出、海路、薩摩に向かう途中、長崎に立ち寄ります。
で、亀山社中にお龍をおいて出向いたのが、グラバー邸。長崎でビジネスをやるにはマージャンは必須らしい。龍馬、グラバー(ティム・ウェラード)、大浦慶(余貴美子)、そして小曽根乾堂(本田博太郎)が、ジャン卓を囲んで和気あいあい。とはいえ、長崎の大商人たち、世の変化の兆しやら何やら、龍馬の考え・行動は“買い”なのかどうなのか、アンテナの感度を目いっぱい上げて見極めようというような雰囲気がそこはかとなく漂っています。何しろ、龍馬は、戦なしで幕府を倒したい、これからますます金が必要になるのでよろしゅう頼みますきにと、皆の顔を見回すのですから。なごやかな内に微妙な緊張感。こういうの、余貴美子、本田博太郎のご両所は、それぞれ違った味ながらうまいものです。龍馬は、薩長を結ばせた、幕府に追われ池田屋で襲われたけれど生き延びた。しかし、この段階では、乾堂さんは100%龍馬に肩入れしていいとは思ってないかもしれない。
夜、明かりの下、印章(乾堂さんは篆刻家でもあるから、彼が刻んだものなんだろうけど、何て読むの?)をつくづく眺めている乾堂さん。英四郎(杉山彦々)に坂本龍馬に深入りするなとくぎを刺す。商人が世の中を変えるために命を捨てても誰もほめてくれないという言葉は、長次郎(大泉洋)のことが念頭にあるのかしらん?暖かさと侘しさが同居したような声音が◎。
それが、長州が幕府軍を撃ち破った馬関の戦ののちの第40回、乾堂さんは幕府に見切りをつけて覚悟を決めちゃいます。
アバンタイトルでは、お龍が射撃の練習をするのを傍らで見物。乾堂さんは、幕府軍を破った龍馬が天下のお尋ね者になるかもしれないと予想しつつ、また実際に亀山社中が何者かに荒らされたことを知っても、今や、幕府ではなく龍馬のほうを取るのです。龍馬らに小曽根邸の離れに引き移るように勧めます。奉行所の目もそこまでは届かないって。もう完全に犯人隠避をやってのけようという覚悟。
薩長と土佐の仲介を求められたり、坂本龍馬の居場所を尋ねられたりした時の、しらばっくれ様にその覚悟のほどがにじみます(?)。痴れ痴れと徳川様のご領地である長崎で商売させてもらってる・・・などという大浦慶の言葉のあとを引き取って「土佐と薩長の橋渡しなどどうしてできましょう」とかね。坂本龍馬の名前を出した途端、様子の変わった後藤象二郎(青木崇高)や岩崎弥太郎(香川照之)を見据える二人の眼差しの冷たいこと!
そうしても坂本龍馬を探し出せと後藤象二郎に命令された弥太郎はグラバーや大浦慶に相手にされず、乾堂さんの所にもやってきます。乾堂さんが言うには「坂本様はお尋ね者ですたい。知っとったらとうにお奉行様にお知らせしとります」。せせら笑うようなオウムの鳴き声が◎。トルコ軍の進軍マーチみたいなのに乗って駆けずりまわる弥太郎も◎。乾堂さんの意味ありげな微笑、口の端だけの微笑も◎。ただ、乾堂さんはいつも意味ありげだけれど、意味が結局よくワカラン。
いつも、象二郎vs弥太郎+トルコ行進曲風劇伴は面白いけれど、今回、象二郎vs龍馬、襖の向こうに張り付いている弥太郎も見ごたえがありました。
それにしてもお龍さんが的にしていたのは何かな?真木よう子は、情感のある低い声が好もしいけど、こういうピストルをぶっ放すお龍さんもいいナ。ムカシのヤクザ映画みたいな姐さん役が見てみたい。

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