永年、この日本橋で商売をしている酒屋のオヤジから「日本橋安全まちづくり協議会」の発足式とそのあとの啓蒙パレードに身代わり参加してくれないかと是非にと頼まれたので行って来た。
@はみ出し陳列はやめようA不当な客引き行為はやめようBひったくりをなくそうC火の用心で火事をなくそうD放置自転車をなくそうEまちをきれいにしようF安全できれいな日本橋をつくろうと、シュプレヒコールを繰り返しながら浪速警察署→堺筋→日本橋筋西通り(通称オタロード)→日本橋中学校前とパレードして行った。10月も残すところ少なくなって来て、木々の紅葉も始まろうとしているころにしては汗ばむ暑さにかなりの疲れを覚えてしまった。この協議会の宣言には@環境・防犯パトロールの実施A情報交換、警察署・消防署・建設局・区役所との連携B放置自転車対策・違法広告・交通マナー・美化にかかる啓蒙活動Cまちの活性化にむけた各種イベントDはみ出し展示・不当な客引き行為等の抑制などと理想がうたわれていて、一つのことを実行するにも大きなテーマばかりである。が、安全まちづくりのため活動しなければならないだろう。
ところで、歩いていて、戦後のこの街の光景がフツフツと沸いてきた。でんでんタウンになる揺籃のころ、街角で賭け将棋を生業とする者。ポン引き(土地に不案内な人をだまして、金品を巻き上げる者)。街娼婦(パンパン)。盗品を換金する者。花売り少女。ヒロポン(覚醒剤。乱用すると幻覚などの中毒症状になる。)密売人。ヤミ商人などが跋扈した、そのような人間の営みがあったあの場所、その場所を想い出してしまった。何をか況や。この安全街づくりの啓蒙パレードの隊列の一員としてシュプレヒコールを繰り返している。
これはまあ、おにぎはしい、みんなてんでなことをいふ
それでもつれぬみやびさよ いづれ揃つて夫人たち。
下界は秋の夜といふに 上天界のにぎはしさ。
すべすべしてゐる床(ゆか)の上、金のカンテラ点(つ)いてゐる。
小さな頭、長い裳裾(すそ)、椅子は一つもないのです。
下界は秋の夜といふに 上天界のあかるさよ。
ほんのりあかるい上天界 遐(とほ)き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ 上天界の夜(よる)の宴。
私は下界で見てゐたが、知らないあひだに退散した。
帰宅して疲れた体を休めながら、私が生まれる二十日ほど前に、30歳で夭折した中原中也の命日であることを思い出して、彼の全集を書架から引っ張り出してきて今日の疲れを癒やしている。
風が立ち、浪が騒ぎ、無限の前に腕を振る。「盲目の秋」中也の暗示の一節に振り回されそうな迷惑じみた語句に戸惑ってしまった。
―今日のわが愛称短歌
・
めをほそめみるものなべてあやうきか
あやうし緋色の一脚の椅子 村木道彦
―今日のわが駄句
・美しや美化運動に秋あつく
シュプレヒコール!「まちをきれいにしよう。」
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