警察当局から堺筋(日本橋筋)に自転車専用レーンを設けるということへの賛否の具申があった。通行人、自転車、商店街の立場で判断しなければならないテーマである。通行人には歩道を傍若無人に走ってくる自転車は、自動車に匹敵する凶器である。急に飛び出した歩行者に自転車が当たり死亡者が出たことをふまえての当局の意見の具申であろうことが推測できる。さて、商店街の立場は如何なりや、となるとそれぞれの立場が錯綜してきて甲論乙駁(こうろんおつばく)の意見が飛び交ってきた。関係している、とある商店街の理事会での議題の一つが討論されている。
「麻につるる蓬(よもぎ)」ということわざがある。「麻はまっすぐな物だからその中に生えれば、よもぎのように本来曲がりやすいものでも、まわりの麻について自然に曲がらずのびる。」ということで、自転車専用レーンを設けるにやぶさかでない意見が大勢を占め始めた。
「水は方円の器に従い、人は善悪の友に因(よ)る 」ということばを思い出す。人間は環境や人間関係に感化され、支配されて、善くも悪くもなるということを言っているのであろう。水は容器の形に従って四角(方)にも丸く(円)にもなる。孔子は、「己れに如(し)かざる者を友とすること無かれ」と
『論語』で述べている。諸橋轍次の解説によれば、
「人はしばしば、自分以下の人で自分に迎合する者を友人としがちである。しかし、それでは自分の向上にはプラスとはならない。自分よりも学問、経験にすぐれた者を友人にもつよう心がけるべきだ」『中国古典名言事典』。とある。
さて、自転車専用のレーン設置の有無は兎も角として、帰途、遠回りした公園に咲きかけた桜を観て今年の桜の開花の早さに驚いた次第である。
―今日のわが愛誦俳句
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砂金かと指の腹なる春のちり 三橋敏雄
―今日のわが駄作詠草
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はずかしき意見述べたり真っ昼間
暴論もまた正論なりと

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