鬱陶しい梅雨空が晴渡ると、爽やかな風が心地よい。中国伝来の琵琶の演奏法、楽譜などを記した平安時代に作られた
『琵琶諸調子譜(びわしょちょうしふ)』という御物(ぎょぶつ)を天皇、皇后両陛下がご覧になっている写真が今朝の朝刊に載せられていた。平成になって本格的に補修作業された「琵琶譜」の書かれた、紫、茶、青などのさまざまに染められた紙の色が紙面に映えている。美智子皇后は「草木染でいい色がでましたね」と、称賛されたとある。
「琵琶諸調子譜」
草木染とは、植物の葉、茎、根、実などを煮だした液に繊維を浸し、20分程度加熱し、染まった色素を金属イオンと結合させて発色させるのだという。天然染料は色素の含有量が一定せず、また単一の色素のみを持つことも少ないので、同じ色を出すのはほぼ不可能と言われている。元の紙とほぼ同じ色に染められるには高度な技法があったことが想像出来る。
主な草木による天然染料としては、@アカネ=乾燥させた根を赤色の染料として用いる。Aベニバナ=花弁を黄色、赤色の染料として用いる。Bムラサキ=乾燥させた根を紫色の染料として用いる。Cアイ=乾燥させた葉などを青色の染料として用いる。様々な植物が「アイ」と呼ばれており、日本ではほとんどの場合タデアイを指すDカリヤス=生または乾燥した茎や葉を黄色の染料として用いる。イネ科の植物で、ススキに似た外観をしている。Eキハダ=乾燥させた樹皮を黄色の染料として用いる。Fウコン=根茎を黄色の染料として用いる。Fゴバイシ=五倍子(ふし)とも。ヌルデに発生した虫えい(ヌルデノミミフシ)を乾燥させたもの。黒色の染料に用いる。Gクサギ=果実を青色の染料に、萼片、葉も染料として用いることができる。Hイラクサ類=茎葉を用いる。赤色や茶色などの色が取れる。Iヨモギ=茎葉を用いる。緑色や褐色が得られる。Jカキシブ=未熟な柿の果汁から作る。茶色の染料として用いる。日に当てることで繊維の強度が増す。塗料として用いられる。という草木染のことを少し調べてみただけでも興味がわいてきた。
この草木染の紙に書き遺された琵琶の譜から奏でられる琵琶の音色を聴きたいものである。
―今日のわが愛誦俳句
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白といふ厚さをもって朴(ほほ)開く 富安風生
―今日のわが駄作詠草
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持てば重たき花束持ちて坂上る
この花染めて紙を折りたし

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