朝刊の
『朝日新聞』に100年ぶりに連載されている、夏目漱石
の『こころ』、今日は先生と私の味わいのある会話があった。
「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。それからあっと思う間(ま)に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」「不自然な暴力って何ですか」「何だかそれは私にも解(わか)らないが、自殺する人はみんな不自然な暴力を使うんでしょう」「するところされるのも、やはり不自然な暴力の御陰(おかげ)ですね」「殺される方はちっとも考えていなかった。なるほどそういえばそうだ」という部分である。この漱石の皮肉と相似たのが、一高時代に漱石が教えたという藤村操(1886−1903)の、「既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。始めて知る、大なる悲觀は大なる樂觀に一致するを。」の辞世であることを思い出した。哲学を専攻した友が蔑むように冷笑したのを思い出す。調べたら、奇しくも藤村操が「華厳の滝」に飛び込んだのがきょう5月22日になっている。
「西と言うたら東と悟れ」ということわざの意味を考えながら五月の街を歩いている。そうそう昨日の税務署の件は書類を提出し、難なく終了した。新緑も日ざしも目に痛いほどであった。
恐ろしき緑の中に入りて染まらん 星野立子
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