雨の予想が逸れて好天に恵まれた。妻の老母の体調が芳しくないと聞いたので娘の運転で岡山市に出掛けた。
江戸時代の京都の俳人、高井几董(たかいきとう1741−1789)の句に
「いせかけて大和めぐれば麦の秋」というのをさしづめ「播磨かけ備前」へと置き換えたらと思うような麦秋の風景が続いていた。本格的な梅雨の季節をひかえて、丁度、いまごろは麦の獲り入れどきにあたっている。秋を百穀成熟のときとして、たとえそれが夏であったとしても麦が熟するときが秋であるところから生まれたことばであろうと思われる。
岡山市内にはいまも路面電車が走っている。岡山電気軌道9200形電車で愛称は、「桃太郎」と岡山の名産「モモ」からMOMO(読みは、最初の「モ」にアクセント)という。最近、わが街、日本橋にも「トラムを通してにぎわいを進める会」なる会が設立され、来月富山に視察しに行く案内があった。岡山の「MOMO」を模したのが富山市内を走り、観光客が絶えない経済効果をもたらしていると聞く。その次世代型路面電車(LRT)に試乗した。年を取ると地下鉄駅への上り下りが苦痛を来たすようになる。若者には解らない路面電車の取っ付き易さに期待感が出始めだした。欧米各地で走るスマートなトラムの魅力にもよるが、岡山市内を眺めながら路線の移り変わり行く光景を見るのは楽しいことであった。もう半世紀近く前になるが、岡山駅で降り、この市内電車に乗り後楽園で見合いをしたのもこの初夏の風薫るころであった。その足で妻の実家を訪れたことを懐かしく思い出させてくれた。
・きょうのわが駄作詠草
ゆっくりと来てゆっくりと去って行く電車見ていて寂しくなりぬ

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