雨が降ったり止んだりしながら八月は終ろうとしている。集中的な暑さと豪雨に見舞われていつの間にやら秋になっていた。
長年、主のように棲んでいた金魚がいた水槽に若い金魚が放たれた。夏の暑さを避けていたのだが秋の気配に、緋いろが動くすがたは美しい。
「一閃のひかりのごとくながれつつ魚は月日の記憶をもたぬ」と、斉藤史が詠んだ、ひかりのごとくながれる魚が還って来た。
街はずれの公園を歩いていたら、パラリと一枚の葉っぱが落ちて来た。鬼貫の
「桐の葉はおちても下に広がれり」の句が咄嗟に浮んだ。その落ちた桐の葉に天下の秋を知ろうとしているのではないが、なぜか秋の寂しさを感じているところである。
・きょうのわが駄作詠草
真白なる風吹きわたる夕暮れよ逆立ちをして歩きたくなり

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