何にこころが動いたのか、とある商店街の夜警に出掛けることにした。夏と年末に行われている恒例の行事であるのだが、何年か前、はじめて参加したとき、皆の歩調について行けず「置いてけ掘」にされたことがあって以来、迷惑になることを思い参加していなかった。最終日だということで当局の安全課からの挨拶のあと、3班に分かれて警らに出掛けた。
拍子木が打たれて
「戸締り用心、火の用心」が連呼されて行く。ふと空を見上げると、満月が皓々と照り輝いていた。誰かが、クリスマスの満月は38年ぶりであると教えてくれた。蕪村の句にある、
「月天心貧しき町を通りけり」の情景を思い浮かべている。昔は貧しい町であったところもすっかり様変わりしてビル化し、その間からは、
「月黄なり眩しきほどの黄にはあらず」と安住敦が詠んだ現代の風景があった。棒になりかけていた足も何とか持ち堪え、聖夜の満月の下を帰途につく。
きょうのわが駄作詠草
美しきまちであれよと希いつつ聖夜にひびく拍子木の音
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