例年のことだが、三月末は格別に忙しい。下世話な話だが、税金の申告、出会いと別れ、進入学の合格、不合格、悲喜交々の人生模様が其処彼処で拝見できる。年を取って上記の事例にある深刻な経験は昔ものがたりになってしまったが、想い出せばつらく、切なく、遣る瀬無いことの方が多い。税務当局の関係する仕事に携わる業界であったので、同業者が当局の役人と衝突して自殺した悲劇もある。いついつまでに書類を提出すべしとの権威に逆らっての行動であったのだが、爾来、「けが人は出しても、死人は出すな」の業界での隠語になってしまった。許認可制という有難き恩恵に浴していたため、役人の権威にしばられていたので、先の死人まで出るという忌まわしいことがあった。ふとそんなことを想い出した三月尽の日であった。
「ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く。しかし、よく私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気付かない。」 とは、ヘレンケラーの言葉である。多くの試練を耐えた彼女ならではの言葉であり、恵まれた環境にいてついつい日常のぼやきを言ってしまう自分にとっては耳の痛い言葉である。さて、明日からは4月である。どのような出会いがあり、どのような ドアが開いているのか、楽しみである。
・きょうのわが駄作詠草
狂い咲く花に逆らい花見せず花咲くまでに逝きし人あり
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