天子のことばは、一度口から出れば取り消せないことの例えに、
「綸言(りんげん)汗(あせ)の如し」ということばがある。
『漢書』の「劉向(りゅうきょう)伝」に出て来る。 さすれば、先日、天皇陛下が生前の退位を口にされたのはどうなってしまったかを思いながら、たらたらと流れる汗を拭いているところである。散歩中、呼び止められたので汗が引く間、一服できることになった。先日、一軒置いて隣りで店を構えていた人があいさつもなく、店を閉めて去って行った話が出て来た。一年も経たず閉店したのだから、他人には聞かれたくない事情があったことが想像できる。人間は、顔が同じでないように、他人とは違う個性を持つとされる。個性があるからこそ、その動作や考え方も他人とは異なるのであろうと忖度しておいた。大言壮語していたので、あいさつなしの撤退はないだろうと思ったまでだという。そんな愚痴を聞きながら、前を通る「ポケモンGO」を「歩きスマホ」をしながらポケモン探しに熱中している老人、幼児を除く青少年男女の表情を見ている方が面白いぞと、話題を転換させる。たらたらと流れていた額の汗もいつしか引いていて老人の他愛のない話が流れていた。
・きょうのわが駄作詠草
人はみな来たり去ったりまた来たり赤い花束そこに忘れて

1599

14