強い台風10号が東北地方に上陸するという報道をテレビで観ながら遣る瀬無い気持ちになっている。太平洋からこの地を台風が直撃して上陸した例は記憶にない。門口に立ち街の様子を眺めていると、昨日、終日降り続いた雨も上がり、一変して新涼の風が吹いていて寒気すら覚える大阪である。そして、この秋の気配を敏感に捉えているのは、家にいる3匹の飼い猫で、最近までエアコンの恩恵に浴していたのが部屋の隅にかたまっているのを見るにつけその動物的な感覚の鋭さに驚く。「わが屋戸の 穂蓼古幹(ほたでふるから) 採(つ)み生(おほ)し 実になるまでに 君をし待たむ」(わが屋戸の穂蓼の古い幹を採って新しいのを生えさせ、それが実になるまで、あなたの帰って来るのを待っています)と、
『万葉集』にある歌の如く、わが家で飼っていた雌猫が卒然と姿を消して久しい。その帰りを待っていたが、外から3匹の雄猫が闖入して来たのがいまいる猫である。この歌ではないが、穂蓼=
赤まんまがいま庭に咲いている。実になるまでと帰りを待っていたが今年も帰って来ず秋の訪れを迎えてしまった。
・きょうのわが駄作詠草
赤のままそのままそこに群れて咲く秋は静かに近づくという

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