(承前)。念願のこの季節に色づく色とりどりの柿の葉で包んだすしをゲットして、気分が清々する。江戸時代熊野灘でとれた鯖を塩漬けにして2〜3日かけて奈良県の川上村まで売りに来たものをすし飯を奈良の名産の柿の葉で包み、型押ししたのが「柿の葉すし」のはじまりとされている。まるで神武東征のルートを想起しながら「柿の葉すし」のことを考えたところである。
その「柿の葉すし」を車に積み込んで、さて、今年の残んの紅葉狩りを思い立つ。飛鳥から三輪山の麓に沿って天理へ。西名阪高速道路で伊賀へ、更に甲賀へと忍者が暗中飛躍していた秘境の秋の山の千葉の彩りを望見して愉しみながら、
「あいがたき法(のり)におうみの永源寺願うはのちの世つぎ観音」と、ご詠歌に歌われた永源寺に着いた。
この寺の紅葉で著名なことは周知しているが訪れるのははじめてのことで、その境内をつつむ紅葉の見事さには驚嘆した。ちょうど御本尊の秘仏世嗣ぎ観音が30年ぶりに公開されるというご縁もいただけた。
この寺の名物は紅葉とともに赤蒟蒻である。むかしむかしのそのむかし母がここの土産に買ってきた赤蒟蒻を初見した時の驚きである。少年の目に映ったこの赤蒟蒻の存在は奇異そのものであった。それが境内の売店に売られているのを見て懐かしさを覚えた。その売店の売り子をしていた年配のおばちゃんの面白さについつい、蒟蒻の田楽を味見し、赤蒟蒻を土産に買い、早速、夕餉のすき焼きにも入れて賞味させてもらった。
・きょうのわが駄作詠草
ひらひらと落ち来る紅葉葉拾い来て読まざる英書に挟みおきたる

690

8