氷雨の季節がやって来た。鶴橋で市営地下鉄を下車。地上まで何と長い階段なのだろうか。老人には足がふらつく程キツイ。階段の手すりを左手で、傘を右手に持って杖替わりに、喘ぎ喘ぎ地上にたどり着く。例によって独特のコリアタウンのニオイが嗅覚に届く。次に聴覚が「つ」と「ざじずぜぞ」の日本語の発音に特徴があることばを聞き取る。そんな中、疎開道路を御幸森天神宮まで、そこから御幸通り商店街を抜け、御幸森小学校に辿り着く。
そこでは多くの在日コリアンが暮した「猪飼野」と呼ばれた生野区のコリアタウン周辺の半世紀前の街の情景を撮り続けた写真展が開催されていた。
ここでは視覚がフル活動する。路地で夢中にビー玉遊びする子どもたち。リヤカーにいっぱいのダンボールの廃品を積んで運ぶ老女。チマ・チョゴリを着て街を歩く女性。橋脚に書かれたハングル文字の落書き、ヘップサンダルの廃材の山。廃品回収して歩く老人と、此処だけではないわが街にもかって散見された風景がより色濃く、ひつこく追いかけられている。
傘を差しての買物は辛い。まだアーケードがない御幸通商店街では、キムチ、チヂミ、海苔巻など耽羅の
かおりのする物産に目がいく。雨の中にもかかわらず、大勢の人出があり、とくに若者が多いのにも驚かされた。最後に買ってきたものを味覚が堪能する。五感をフルに使った1日になった。
・きょうのわが駄作詠草
ハルモニのむかしは知らず写真見る人のなかから苦しかったと

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