鼠六匹に冬の蛙

　朝から小糠雨が降り続いている。台風が秋雨前線を押し上げているのだろう。外に出ると阪神高速の１号環状線の東南の高架の彼方に常に望まれる「あべのハルカス」の超高層ビルの威容も雲に包まれて見えない。この分だと明日に予定している屋外でのバーベキューは難しい。やむを得ず準備している材料のことを考えて少々窮屈だがわが家の倉庫を片付けて始めることになった。３０人を越える参加者があるとかで、その段取りに大童だ。長塚節の短歌に、「・・・、ささやかなる店に蔬菜の売れ残りたるも哀れなり」の詞書があって「うるほへばただ美しき人参の肌さへ寒くかわきけるかも」というのがあるのだが、バーベキューに必要な、人参、ピーマン、ジャガイモ、玉葱など野菜の準備などにも大変さが付き纏う。大方の準備が終るのは多分、日が変わっていることだろう。ただ、早朝から場所を取りに行く労苦がないための気休めがあると思いつつ、明日のことを愉しみにしている様子が見受けられる。


　　　人を思へば空暗く雨降り風吹き花が散る秋の夕ぐれ


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