二月も余す日が3日と、普通の月よりも3日少ない月の日数なるがゆえに切なさを覚える。案の定、三日少ないのに家賃には値引きがないと呟いているラーメン屋のオヤジの愚痴が耳に入った。彼の店は今は整備されて美しい街並みになっているのだが、かっては路地が入り組んだところでその日の稼ぎに凌ぎを削っている飲食店が櫛比していた。ある歌人はそんな風景を見て、
「いづこにも貧しき路がよこたはり神の遊びのごとく白梅」と嘯(うそぶ)いたものだ。そこに咲く白梅の清冽さに、この季節になると、その白さを神の遊びのごとくと、そこに神が坐しているかのように、花は卑しからざる存在として見られたのであろう。そこに残された白梅の古木を眺め、静かに過ぎ去って行く、きさらぎの日々を振り返っているところである。
丁度、わが家の火災保険の契約が終るので更新の来訪があった。かって筋向いにあった保険会社の出張所。その所長の子息で、亡くなった親のあとを引き継いで業務を続けているのだが、もう65歳になったとか。その保険会社の建物で生まれたのであるが、その持主が変わっている物件が昨年壊され今はモータープールになったことを知って思わず涙を零していた。時を経て変化して行く街に住んでいる自分を思い懐旧談に花が咲く。その保険会社も今は外国資本と業務提携し社名も変わっていて昨年と同じ条件なのに保険料は3000円上がっていたが、親の代からのよしみがあるので継続してしまった。
きさらぎの街の明るさ向こうから保険屋が来る背伸びしている

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