きょうも30℃を越す真夏日が続いている。熱中症に注意せよとの呼びかけが効いているのか街を歩く人の手にはペットボトルの持参が目立つ。雨がなく、薄日が射している梅雨の晴れ間ではあるが室内は蒸し暑い。
堪らず戸外に出て体を動かしてみるのも老人には反面、うら悲しいことでもある。しかし、途端に暑い大気のなかから風が吹いてくる。いわゆる、「風薫る」という微風が吹いて瞬間に涼しさを呼んでくれるからだ。天正13年(1585)といえば、豊臣秀吉が関白になった年で、連歌師里村紹巴(さとむらじょうは1525−1602)が編んだ
『連歌至宝抄』という冊子に
「風薫ると申すは南の風吹きて涼しきを申し候」とあるように、夏、青葉のなかを吹く、草木の香を含んだ風のことで、
「明け方は池の蓮(はちす)も開くれば玉のすだれに風薫るなり」の藤原俊成の詠草が最古とされているが、白楽天の
「薫風南より至りて、我が池上の林に吹く」の影響もあるとされ、心地よい風を堪能しながら一服の涼風を味わっているところである。
むしむしと汗ばむ体に風来たり乳母車に眠るみどり児を見る

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