朝早く起きなければならない用件があるので、飲酒を控えて夕食後、就寝。尿意を催して目が覚めて寝付かねぬまま夜が更けて行く。所謂、長き夜が待っていた。『徒然草』第29段で兼好法師が書く
「人静まりて後、長き夜のすさびに、何となき具足取りしたため、残し置かじと思ふ反故など破り捨つる中に、亡き人の手習ひ、絵書きすさびたる、見出でたるこそ、ただその折のここちすれ」。現代語では、人が寝静まる時刻は、いわゆる「人定(にんじょう)」の時で、亥(い)の刻(午後10時ごろ)。何ということもない身のまわりの所持品や道具類を書き損じて不用になった紙。文字を書き散らしたり、興にまかせて絵を画いたりしたのを、その当時そのままの気持ちがしてくることだ。とでも書き残したものだろう。ところで、一時間経てば、尿意があり、いよいよ眠られぬ秋の夜長に突入して行った。所謂、丑三つの刻。外は雨である。仕方なく書見することになる。何時しか雨があがり、ニワトリは鳴かないがカラスが啼き未明を迎えていた。二匹の猫は安心してぐっすり寝入っているのがなんとも微笑ましく、未だ明けきらぬ中を出かけることにした。
残る秋もう直ぐ終る朝まだき猫は抱き合い寒さ耐えいる
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