関係している会社は9月が決算月にあたっている。事業からの給金に頼らずになって久しい年金生活者ではあるが、ながらく携わっていた為、この決算月だけは気になって、棚卸しの業務などについ首を突っ込む。今月中は落ち着かぬまま過ごして来たが、ようやく目途がつき会計士に資料を提出することになった。大体、10月中に段取りが出来て、会計事務所から決算報告書が作成されて税務当局に提出されることになっているのが通例である。
ほっとして、ふと机の上を見たら、からのガラスの花瓶がそこに置かれてあった。大阪北浜の高級料亭「灘万(なだまん)」の跡取り息子として生まれて俳句を嗜んでいた楠本憲吉(1921−1988)の句に、
「びいどろの花器からっぽの秋まひる」のひっそりとした午後の一刻を見出した句があることを思い出した。わが今の心境も堺筋をま北に行けば船場の北浜に、彼の生家の料亭があり彼が俳句に詠んだ風景があったのだろう。その堺筋に面した場所に長年住み、些かなりとも納税する者にとっては、花を活けることも失念して花器を空っぽにしていることを恥じているところで、菊でも活けなけねばと、考えている。
ある時は税務署員と論じ合ういささか枯れし花活けられていし

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