暑さ負けしているのか声が出ないのか引き攣るような顔の表情をして、知り合いの婦人が家の前を通って行った。きっと「お暑いことですネ」と、あいさつしてくれたのであろう。手元にある山本健吉編著の
『句歌歳時記』夏の部をめくっていたら窪田空穂の
「夏至(げし)の日のまひるのひかり庭に浸(し)み雀葉かげに潜みて飛ばず」という作品に「夏至。一年中でもっとも昼の長い正午ごろ。暦は概念的な知識だが、日の光の浸みとおるような庭の静けさの感動に、一つの色合いを添えている」というコメントを述べている。まだ梅雨入りになっていない大阪だが、夏至の日を迎えている。その暑い暑い真昼の昼下り 朝から7時間を超える長時間、歩行困難使用者のため駐車禁止除外車との一片の書面が車内に置かれた車両が家の前に止められている。一週間後、G20開催の日、かかる横着な長時間駐車禁止除外の権利が許されるのだろうかと呟きながらひとりの歩行者が通って行った。
一年でもっとも昼間の時間の長い夏至の日の寸感ではある。
地の上に夏至のひかりの耀けるこころある人の呟きもまた

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