晴れていても台風の影響があるのか、蒸しつく暑さに、つい冷房してしまう。素足に草履ばきの気安さもあるのか、その心地よさを愉しんでいる。星野立子の、
「電車いままっしぐらなり桐の花」という句を想起しながら、歴史好きの娘とよく走った但馬路で桐の花のむらさきを眺めたものだ。清少納言も
「桐の花、紫にさきたるはなほをかしきに」と述べたように、山のなかに青葉、若葉と入り交じって花が高いところに霞んでいるさまは、夢見る趣を覚えさせてくれる。ふとあの桐の木で作られた下駄を履き、カランコロンの音を響かせて歩いた記憶が甦って来る。ところがである、今朝起きて歩こうとしたら、何故か左の足の親指の付け根が痛い。寝ていてこんな唐突な痛みがあり、少し歩行に難儀を感じることがあるのやと思いながら様子をみることにした。きっと、素足に桐下駄でなく地面により近い草履なるが故のフィット感が老人の歩行に影響があるのではの自己判断に委ねていて、取敢えず明日を待つことに決め込む。
部屋なかをうるさきまでに蝿が舞う灯火消せば逃げ行くものと

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