彼岸が過ぎたのに曇り勝ちの秋の空である。天気予報では暫らく雨模様の日が続くらしい。秋といえば秋晴れの空を想像するのだが、きょうは始中終(しょっちゅう)秋の曇りがちの天象が続いている。秋霖雨(しゅうりんう)という秋に降る長雨の季語があるが、
『万葉集』にも
「秋の雨に濡れつつをれば賎しけれど吾妹(わぎも)が屋戸(やど)し思ほゆるかも」と、大伴利上のもの寂しいものとしての詠草が残っている。
そんな鬱陶しいなかを、大分の宇佐市の知人から送られて来たカボスを妻がせっせと友人たちにお裾分けしていた。まさに、俳人鷹羽狩行が詠んだ、
「年上の妻のごとくにかぼすかな」の秋の風情を感じているのだが、湿りがある天気だけはどうすることもできない。
刺青を見て目を逸らす橋の上美醜とは川の流れのごとく

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