近隣のお菓子問屋の社長がやって来た。長年中学の社会科の教師をやっていたのだが、親が亡くなって万已むを得ず家業の社長になったと聞いている。東北地方から北海道にかけて手広く商売しているらしいのだが、最近はどうかと訊ねたら、得意先の廃業が続き、大変であるとかと商売人らしくなったが満更ではなく可なりの窮地にあるらしい様子である。家業であるとはいえ
藤四郎(とうしろう)なので商売の難しい環境への対応で悩んでいると真剣な顔つきになって来た。廃業という綺麗ごとを言っているが、怪我はなかったのかと(倒産、夜逃げ)はなかったのかと業界用語で尋ねたら怪我とは何かと聴き返されてしまった。またまた歩いてないのが気になるので、散歩に出掛けて来ると言って外に出た。
寒々と手はポケットに入れている冬晴れのひかり背に浴びていて

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