12月も押し詰まった頃を年の暮といわれる。江戸時代の戯作本『滑稽談義』「和歌題林抄」の歳暮に「行く年々の暮れ、かへりては身に添ふ年なれど、なほ惜しまるる心を言ひ、老いぬる身には人よりも嘆き、春の来るは嬉しけれども、年の添はんことを憂へ、高き賤しき身に積もるべき年とも知らず、送り迎ふと急ぐをはかなめ、行く年の道、迷ふまで雪も降らなんと願ひ、松伐る賎が行き来に春近づきぬと驚き、また、除夜といふは晦日(つごもり)の日なり、今宵寝なば年の添はんことを思ふ、明くればいつしか変はると、祝ふべけれど今宵は年の名残を偲ぶ心を詠むべし。」と戯作者らしい諧謔に満ちた文章で年の暮の寸感が述べられている。言い尽くされた言辞ではあるが、いつの世でも年の暮の哀歓は似たりよったりの感じである。
・成りにけり成りにけりまで年の暮 芭蕉
・ともかくもあなた任せの年の暮 一茶
・人を見てたのしめさても年の暮 北枝
・眼に残る親の若さよ年の暮 太祇
・去ね去ねと人にいはれつ年の暮 路通
江戸の俳人たちの句を味わいながら、当時の時代背景を重ねていると現代でも大差がない日本人のこころが見えてきて面白い。新聞で今日のテレビ欄をみていると東京国際ドラマ賞最優秀作品賞受賞記念とした『JIN-仁(じん)』が、年末特別番組として、午後7時から11時過ぎまでの長時間に渡り放映される。この作品は、村上もとかの漫画作品をテレビドラマ作品化したものである。以前観たことがあるのだが、現代から幕末の日本にタイムスリップした脳外科医・南方仁が、過去の人間の運命を変えていることを自覚しながら、現代の医療技術の知識を駆使して、抗生物質や近代的な医療器具を次々と「発明」し、江戸の人々を救おうと努力する歴史作品である。
日本人のこころのなかを昔と今、今と昔のことを考えるのも、年の暮になればこそ、もっとも分かり易い気になる年末ではある。
お正月 東くめ作詞 瀧廉太郎作曲
1.もういくつねると お正月
お正月には 凧(たこ)あげて
こまをまわして 遊びましょう
はやく来い来い お正月
2.もういくつねると お正月
お正月には まりついて
おいばねついて 遊びましょう
はやく来い来い お正月
―今日のわが愛誦短歌
・いつしかも日がしづみゆきうつせみの
われもおのづからきはまるらしも 斉藤茂吉
―今日のわが駄句
・髭剃りてさて次になに年暮れる


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