いよいよ年が押詰まって来るという切迫感を身近に思うのも例年のことである。苦餅という語呂を嫌って末広の八の日に決めていた正月の賃餅を頼んでいた出入の餅屋も廃業してしまい、今年は餅屋が替わってしまった。最後の餅だと廃業の挨拶に来た時に持参して来た餅を冷凍して保存して置いたので、新しい餅屋には鏡餅だけを頼むことになっている。そこで従来は28日になっていたのが、鏡開きにはカビが来るので、二日でも遅らせて三十日に改めることにした。恒例のことが途絶えて一抹の寂しさがあったが、昨今のように世事万端に変貌している御時世を考えると、こだわることの重さからの開放感に一服しているところでもある。
ゆきずりに蕎麦屋の前を通りいて年末挨拶交し合い来る

1296

3