暖冬である。寒の内に降る雨を寒の雨と呼ばれていて、江戸時代の俳人芭蕉をして
「面白し雪にやならん冬の雨」と、からかった句を吐かしめていて寒い中を細かく降る雨はなにかしらうら寂しさを覚えさせる。わが街にアーケードが出来て久しく、柳の並木道がそれまであって、
「並木の路に 雨が降る どこの人やら 傘さして 帰るすがたの なつかしや 並木の路に 雨が降る 何処か似ている 人故に 後姿の なつかしや」 と七五七五七五と続いて行く抒情のひびきを愉しんだものだ。そんな昔の風景を想起しながらそぼふる小雨を眺めていたら春近しのぬくもりすら感じさせてくれる。
たまたまに咳ひとつせり新型の肺炎なりやと揶揄されている

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