梅雨の空が割れて薄日が洩れているが、高温多湿を直に感じて汗が自然に滲み出てくる。今日は夏至とのこと。われわれが住んでいる北半球では、太陽はもっとも高くかがやいて、一年中で昼間が一番長い日であると言われている。『滑稽雑談』という江戸時代の書物には、
夏至の気、初5日「鹿、角を解く」次5日、蜩(ひぐらし)始めて鳴く」後5日、「半夏生じ、木槿栄ゆ」。そして、猫はその鼻端常に冷やかなり。ただ夏至の一日のみ暖かなりとある。その根拠は定かではないが、わが家の黒と赤の猫二匹は、風呂場の脱衣所が居心地が好いのか、日中の長い時間、安眠をむさぼり続けている。夏至は一年を二十四気に分ける一つなのだが、最も短日である冬至との日中の時間差は約5時間近くもあると言われている。今日の夏至は夜、昼同じ時間になる、「秋分の日」までは、「小暑」「大暑」「立秋」「処暑」「白露」を経て繋がって行くことになるのであるが、この間、酷暑の夏が待っている。
暮れなづむ夏至ビフテキの血を流す松崎鉄之介の句を読みながら、薄暮の夕食の実感が伝わってくる。
サマータイムの導入、節電対策の実行など、福島での原発事故以来、国民生活に臥薪嘗胆を強いる動きが喧(かまびす)しくなっている。要は、原発存続の是非が絡んだ議論になってきた。大阪府知事と関西電力社長との理屈の言い合いがあって「節電の目的」「15%節電要請について」は何とか需給状況の情報開示で合意に達したようだが、脱原発という原子力発電の将来の問題では「この夏を乗り切ったら原発がなかってもいける。たとえ1基でも止めるべきだ」に対し関電は「国のエネルギー政策にかかわる。国民的議論をやり、原子力は将来的にも電力の安定供給の基軸を担っている」との見解の相違点を露呈している。双方、本音と建前、建前と本音の立場が交錯している。
短夜や来ると寝に行くうき勤め節電の議論をするまでもなく古き時代の日本の風景ではある。
―今日のわが愛誦句
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夏の夜は明くれどあかぬまぶたかな 守武
今日のわが駄作詠草
・見えざるは見ざると思え遥かなる
火事鎮火しても片づけられず


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