『御宿かわせみ2 第21回 吉野の女』
放送日:1983.03.30 NHK 水曜ドラマ
演出:松橋 喬 脚本:大西信行 音楽:桑原研郎 美術:石村嘉孝 カメラ:塩谷貞夫
キャスト
おるい:真野響子 嘉助:花沢徳衛 お吉:結城美栄子 お民:日色ともゑ
神林東吾:小野寺昭 畝源三郎:山口 崇 伝次:小鹿番
おしず:栗田陽子 吉野屋十兵衛:稲垣昭三 おまき:川口敦子
源太郎:本田博太郎
博太郎さんが演ずる源太郎というのは、牛込肴町の漆器問屋吉野屋の若旦那です。
大川端のかわせみに、若い女の客がありました。彼女はおしずといい、父である吉野屋十兵衛に会うため吉野から江戸に出てきたのです。彼女がかわせみに投宿するのは十兵衛も承知のはずなのに姿を現さない・・・こちらから吉野屋を訪ねることはできないワケがあるというおしずのために、おるいは、嘉助を十兵衛のもとへやっておしずの到着をしらせようとします。ところが、吉野屋では源太郎が出てきておやじとおふくろ(おまき)は木更津に不幸があって出かけているという。しかし、おしずのことは十兵衛から聞いて承知している、「おしずさん、さぞ心細いでしょう」とかわせみにやってきます。よく気がつくすこぶる感じがいい若旦那です。
おしずというのは、十兵衛が年に一回吉野へ漆器の買い付けに出かけるうち塗り師の娘おさだといい仲になって出来た娘です。しかし、15年前、そのことがおまきにバレテ、十兵衛は吉野へ出かけなくなったのです。
源太郎は、腹違いの妹おしずに、父・十兵衛が店を源太郎に譲ったら吉野でおしずやその母おさだといっしょに暮らすつもりでいることも聞いている、おやじは明日かあさってには帰ってくるなどと、やさしく告げるんですな。その姿は誠実そのもの。・・・昨今の2時間ドラマの

犯人なのか、犯人じゃないのか

と謳われる博太郎さんになじんでるものとしては、さっき暖簾のかげから嘉助を窺ってた暗い表情を見逃さなかったぞ!とかね、思っちゃいますがネ。
かわせみで、腹違いとはいえ兄妹、差し向かいの晩御飯。
おしずが父親に会って話をするのを心待ちにしている様子に、源太郎は、唐突に江戸見物を言い出します。ほら、あやしいゾ、こやつ。浅草とかナントカ言い出す直前、眉のあたりに暗い影がよぎったゾヨ。
次の日、源太郎はおしずを江戸見物に連れ出しに来ます。源太郎は、おるいたちに、八百松で食事をするので十兵衛がかわせみに来たらそちらに来るように伝えてくれといいおいてゆきます。見世物小屋や屋台や香具師。人出の多さに驚くおしずを見て楽しそうに笑ったり、簪を買って髪に挿してやったり、すっかりいいお兄さんぶりの源太郎。
そして、八百松で二人差し向かいの食事。自分で酒を注ぐ源太郎におしずは「お酌します」。父・十兵衛は母の酌でこんな風に酒を飲んでいたかと想像するおしずに、源太郎は家でおまきが十兵衛に酌をしてやるのを見たことがないといいます。おしずはしょげて、仲がよくなかったってことですか、私のせいで・・・「いや、十五年前にケリはついてたんだ」と源太郎。
一方、嘉助は吉野屋のうわさを娘のお民から聞いたといいます。お民の亭主は、吉野屋の者から主人夫婦は湯治に行ったと聞いたのですが、二人揃っていなくなったのはどうもおかしい、だって吉野屋は夫婦仲が悪かったっていう話だから。
それで、八丁堀同心畝源三郎が吉野屋へ出向いて番頭を問い詰めると、ジツハ、吉野屋夫婦は死んでいた!源太郎が犯人?いえいえ。
20年以上も前のテレビドラマだから、結末まで書いてもそう怒られないんじゃないかとも思うけれど、NHK番組公開ライブラリーで見ることが出来るわけだから、ここまでにしておきます。
博太郎さんの若旦那源太郎は、人当たりのやわらかい笑顔、高好感度。その笑顔をほんの一瞬よぎる陰とかもいいけどね。おしずがおとっつあんに会いたい一心で江戸に出てきたと語ると、思わず知らず「会いたい一心で・・・」とつぶやいてしまうってのも、いい感じでした。半泣きの声もよかったな。

0